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国際法務の部屋

SDGsのロゴ使用

前回のブログ(新型コロナウイルス感染症とSDG

で、令和2年5月12日に開催されたトヨタ自動車株式会社の決算説明会におけるトヨタ社長のお話について紹介しました。

豊田社長からは、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に向けて、自身が全身全霊をかけて取り組むこととして、「『誰ひとり取り残さない』という姿勢で国際社会が目指している『SDGs』、『持続可能な開発目標』に本気で取り組むことでもあると考えております。」という話がされました。

町の中でもSDGsのロゴやアイコンを目にする機会が増えてきましたが、ウィズコロナ、アフターコロナの時代においても、引き続き、SDGsに取り組んでいることはその企業の価値判断、投資対象としての判断に際し重大な要素となることから、SDGsへの取り組みはさらに加速することが強く予測されます。

そこで、自分たちの会社がSDGsに取り組んでいることを対外的に示すために、勝手に会社のウェブページにSDGsのロゴを使ってもいいのだろうか、会社の名刺に使ってもいいのだろうか?使用にあたってはどこかから許可をもらう必要があるのか?費用が必要なのか?といったご相談を受けることもあります。

今回は、SDGsのロゴやアイコンを使用するにあたってのルールについて紹介したいと思います。

 

まず、SDGsのロゴやアイコンの検討の前に、「ロゴ使用」一般について触れます。

例えば、自社の信用を上げるために、自社のウェブページにおいて取引企業名とそのロゴを載せる場合、著作権や商標権との関係で問題となり得ます。また、同取引企業との秘密保持契約書の中で、「本取引の存在及び内容その他一切の情報」が「秘密情報」とされている場合等で、当該企業との取引の存在を示すような場合には、取引の存在が明らかとなる「自社のウェブページにおいて取引企業とそのロゴを載せる」ことは契約違反となり得るので注意が必要です。

「ロゴ使用」全般が一般的に制約されるわけではありませんが、ロゴが著作物に該当するのか、その使用方法が商標的利用に当たるのか、といった法的な問題点もあるため、自社のウェブページにおいて取引企業名とそのロゴを載せる場合、取引企業にロゴの使用許可を得るか、弁護士等の法律の専門家に問題がないかを確認した方が安全であると考えます。

なお、企業によっては、「ロゴ使用ガイドライン」を定め、予めそれを公開している企業もあります。

 

それでは、SDGsのロゴ使用についてはどうなっているでしょうか。

SDGsのロゴ使用については、国連がガイドラインを定めています。

ロゴ使用に際して申請や許可が必要なケースは主に2つとされています。

1つ目は、資金調達目的での使用。すなわち、SDGsを支援する活動の費用を賄うための資金の調達を意図する使用を指すとされています。

2つ目は、商業用途での使用。すなわち、SDGsをさらに広めるための営利主体による、または、商業的もしくは販促用商品および/もしくは製品における使用を指すとされています。

このように同ガイドラインでは、SDGsロゴを使用して資金調達をする場合やSDGsロゴを使用した商品を販売する場合という2つの場合には、国連による事前許可とライセンス契約が必要とされています。

しかし、上記以外の使用目的の場合には、使用にあたって基本的に申請も許可も不要とされています。

なお、申請や許可が不要とされる場合であっても、ガイドラインには「やってはいけない」使用方法が定められているため注意が必要です。

例えば、ロゴの色や形を変えることは禁止されています。

また、自社のロゴの横にSDGsのロゴ等を入れる際は細かいルールが定められています。この場合、SDGsロゴ等には「(主体名/私たち)は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています」という文言を添える必要があります。この文言を添えずにSDGsロゴ等と自社のロゴを並べて表示することはできません。

 

当事務所では、今後も広く「SDGs」に関するセミナーを行う予定にしています。規模を問わず、出張セミナー、Webを用いたセミナー等にも対応させて頂きますので、気軽にお問い合わせ下さい。

また、令和2年7月3日(金)13時半~15時、7月10日(金)13時半~15時、7月17日(金)13時半~15時、7月29日(水)13時半~15時の4回にわたり、スタートアップ、中小企業を対象としたウェビナーによる連続セミナーを開催致します。こちらについてもぜひご参加頂けると幸いです。

ウェビナー開催案内

(文責:三村雅一)

2020年06月25日 14:01|カテゴリー:

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中国における民法典の公布

中国における民法の状況については、以前、ブログ「中国で新たに施行された「民法総則」のご紹介」で、言及しましたが、民事に関する基本原則を定めた民法総則が、2017年3月15日に可決・成立し、同年10月1日に施行されました。

これにより、民法総則と、それまでに存在していた民法通則、物権法、担保法、不法行為法、婚姻法、及び、相続法等の関係については、必ずしも明確とはいえない状況が続いていました。

 

そのような状況の中、2020年5月28日、中国初の民法典が公布されました(施行日は2021年1月1 日とされています。)。

この民法典は、総則、物権、契約、人格権、婚姻及び家庭、相続、及び不法行為責任の7編からなるもので、複数の法律で定めるのではなく、日本の民法典と同様、民事法に関する内容を1つの法典に統合したものです。また、民法典の施行に伴い、これまでに存在した民法総則等の各法は廃止され、複数の民事関係法が併存することによる相互の関係性の不明確さは排除されることになりました。また、契約編においては、電子契約に関する規定の整備、予約契約の新設、ファクタリング契約の新設など、ビジネスにおいても影響がありそうな内容も多く含まれています。

今後、これらの内容については、適宜、ご紹介させていただく予定です。

 

当事務所では、「中国語(中文)契約書サービス」(https://www.swlaw.jp/axis-china/)として、各種の契約書について、日本語・中国語間の翻訳、中国語で作成された契約書のリーガルチェック、中国語での契約書の作成等のサービスを提供しています。

当該サービスにおいては、新たな民法典に対応することも可能ですので、従来の契約書の修正や、新たな契約の締結等に際し、是非とも、ご利用ください。

 

(文責:藤井宣行)

中国語で売買取引基本契約を締結する際の留意点

これまで、当事務所では、中国企業と締結する売買取引基本契約書を中国語で作成してほしい、取引の相手方から中国語で提案された売買取引基本契約書をレビューしてほしいというご相談を数多くいただいてきました。

 

まず、中国語での契約に限らず、売買取引基本契約を締結するにあたっては、当方が売主であるか、買主であるかにより、重点的に確認すべきポイントが大きく異なります。

 

一例を挙げると、当方が売主である場合は、瑕疵担保責任(契約不適合責任)や品質保証責任について、可能な限り責任を負う期間を短くできないか、損害賠償の範囲をできるだけ限定(例えば損害賠償の範囲を契約に基づく売買代金の合計額に限定するなど)できないかという観点からレビューやドラフトを行います。他方で、当方が買主である場合は、契約不適合責任や品質保証責任について、可能な限り責任を負う期間を長くできないか、損害賠償額に不当に限定されている条項がないかという観点からレビューやドラフトを行います。

 

また、当方が買主である場合は、売主である中国企業に法令順守義務(環境法制、商業賄賂、労働関係法令)や買主として独自に定めている基準(化学物質使用基準など)を遵守させる義務を負わせる規定を設ける必要がないか、必要がある場合はどのような規定が適切か、義務違反があった場合にどのような効果を定めるかという観点で検討を行います。

 

さらに、今回の新型コロナウイルスの世界的な蔓延によってクローズアップされた不可抗力条項についても要注意です。当方が売主である場合は、不可抗力事由をできるだけ多く列挙し、不可抗力事由が生じた場合には、売主としての債務不履行責任が免除される旨を明確に記載するべきです。他方で、当方が買主である場合は、不可抗力事由をできるだけ限定的に規定し、不可抗力事由が生じた場合の効果についても限定的な内容にとどめた方がよいケースもあります。なお、この論点については、新型コロナウィルスと不可抗力について新型コロナウイルスと不可抗力について(2)もご参照ください。

 

これ以外にも、売買代金の支払条件、商品の引渡条件、商品の危険負担や所有権移転時期、保険の負担、商品の検査・受入に関する条項、第三者の権利侵害(特に知的財産権侵害)があった場合を規律する条項、納期遅延があった場合を規律する条項、個別契約についての定め(個別契約と売買取引基本契約の優劣関係、個別契約の成立条件)、輸出入規制などについて、売主の立場、買主の立場から検討を行い、最終的な契約書を完成させます。

 

なお、中国企業との契約締結にあたっての、準拠法、言語条項、紛争解決方法等の一般的な留意事項については、中文契約書作成の際の留意点を参考にしてください。

 

また、売買取引基本契約書が完成した後、中国企業の担当者に契約締結権限があるかの確認も重要となります。この点については、中国企業と契約を締結する際の契約締結権限の確認方法をご参照ください。

 

当事務所では、「中国語(中文)契約書サービス」として、売買取引基本契約書を含め、各種の契約書について、日本語・中国語間の翻訳、中国語で作成された契約書のリーガルチェック、中国語での契約書の作成等のサービスを提供していますので、是非とも、ご利用ください。

 

文責 河野雄介

 

 

2020年06月15日 10:21|カテゴリー:

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中国でのOEM生産と商標権侵害

日本企業が中国企業とOEM契約を締結し、中国で生産された製品等を、日本や海外で販売するモデルは、現在でも、よく利用されています。先日、中国の最高裁判所(最高人民法院)において、このモデルに関し、注目すべき裁判例が出されましたので、今回は、同裁判例を簡単に紹介します。

 

事案の概要としては、日本の自動車メーカーが、中国において、自社ブランドの文字とロゴの商標登録をしていたところ、ある中国企業が、当該商標に類似する商標を付した製品を製造し、中国国外に輸出しようとしたというものです。

本件では、商標の類似性等も論点とはなっていますが、注目すべきは、被告が主張した「当該製品の全てがOEM製品であり中国内で流通させず輸出するものであるから中国での商標権侵害とはならない」との主張です。

この点について、最高人民法院((2019)最高法民再138号)は、2019年9月23日、製品の全量がOEM製品として輸出されるとしても、越境EC等によって中国内で流通する可能性があること等を理由として、商標権侵害に該当するとの判断をしました。

 

この裁判例が、今後、すべてのOEM契約に適用されるかについては議論のあるところですが、少なくとも、中国企業にOEMでの生産を依頼するに際し、商標権侵害のリスクマネジメントの必要性について、改めて認識する契機といえるでしょう。なお、商標権侵害のリスクとしては、商標権者からの損害賠償請求等だけでなく、OEM製品をOEM先から輸出する際に、中国の税関で出荷に支障が生じるといったことも想定されます。

日本企業としては、これまでにも増して、自社製品に関連する商標権の登録状況の調査、出願、及び、状況によってはライセンス契約の締結等といった、事前のリスクマネジメントを適切に実施したいところです。

 

なお、当事務所では、「中国語(中文)契約書サービス」として、OEM契約を含め、各種の契約書について、日本語・中国語間の翻訳、中国語で作成された契約書のリーガルチェック、中国語での契約書の作成等のサービスを提供していますので、是非とも、ご利用ください。

 

(文責:藤井宣行)

中国語(中文)契約書サービスのご案内

以前、ブログで、中文契約書作成の際の留意点として、中国語(中文)で契約を締結する際の言語条項、準拠法及び紛争解決方法についてまとめました。

言語条項、準拠法、紛争解決条項等の一般的な条項については、上記ブログで書かせていただいた留意点を基にしたひな形を準備していますが、契約書作成にあたっては、どの案件も固有の背景事情があり、「作り込む」作業が必須であると考えています。

そこで、契約書を作成・レビューさせていただくにあたっては、クライアントのビジネスの内容やどのような取引・商流に基づき契約書を締結しようとしておられるか、商品やサービスの具体的内容、契約相手方の情報(規模、信用状況、これまでの取引等)の背景情報をヒアリング(遠方のクライアントの場合は、Zoom等のウェブ会議も活用しています)させていただくようにしています。

また、当事務所では、これまで、多数の中国語(中文)契約書を作成・レビューしてきた実績がありますし、中国国内における訴訟手続のサポートの経験も豊富です。

このような中国法務の豊富な経験と、上記の方針に基づき丁寧にヒアリングさせていただいた情報を基に、想定しておられる取引にどのようなリスクが内在しているのか、どのような条項にすれば当該リスクを軽減することができるかを常に考えながら、契約書を作り上げていきます。

当事務所では、クライアントの皆様に対して、中国企業と契約を締結するに際し、「誰に何を依頼していいか分からない」「中国との契約に特有のリスクがあると思うが、その内容や対応が分からない」といった状況に対応するため、中国語(中文)契約書サービスを提供しております。

ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

文責 河野雄介

新型コロナウイルス感染症とSDGs

去る5月12日に、トヨタ自動車株式会社の決算説明会が開かれました。

今年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、名古屋からWEB配信で行われたとのことです。同説明会の第2部では、豊田社長から「トヨタとしてコロナ危機にどのように立ち向かっていくのか」ということについて、その想いが語られました。(なお、詳しくは、トヨタイムズを参照下さい。)

その中で、豊田社長は、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に向けて、自身が全身全霊をかけて取り組むこととして、「世界中で、自分以外の誰かの幸せを願い、行動することができるトヨタパーソンを育てること」=「YOUの視点」をもった人材を育てること、であると述べています。

そして、「世界中で、自分以外の誰かの幸せを願い、行動することができるトヨタパーソンを育てること」=「YOUの視点」をもった人材を育てることとは、「『誰ひとり取り残さない』という姿勢で国際社会が目指している『SDGs』、『持続可能な開発目標』に本気で取り組むことでもあると考えております。」としてその話を締めくくっています。

 

日本のみならず世界の経済が新型コロナウイルス感染症で甚大な損害を被り、規模を問わず、多くの企業が苦しんでいます。何よりも自分たちが生き残るための術を模索することに必死で他者のことを考える余裕を失いつつある、そんなときに豊田社長から発せられたこのメッセージに大きく心を動かされました。

SDGsへの取り組みは、余裕のある大企業が行う社会貢献活動の延長線上にあるものというイメージであったかもしれません。しかし、我々が、新型コロナウイルス感染症によって世界中の企業や個人が大きな被害や制限を受けている今を、そして新型コロナウイルス感染症で訪れるであろう厳しい時期を生き抜くための術こそ、豊田社長の言葉にある、「自分以外の誰かの幸せを願い、行動すること」であり、「SDGsに本気で取り組む」ことなのだと思います。

 

私たちの事務所は、昨年、大阪商工会議所で「自社の強みを強化するSDGsの上手な活用法セミナー」というタイトルでSDGsに関するセミナーを行なってきました。また、このブログでもSDGsをテーマに、SDGsと企業活動について紹介してきました(SDGsと企業活動SDGsと企業活動

そして、これからのウィズコロナ、アフターコロナの時代においてもますます大切となる「SDGs」の考え方について、今後も広くセミナーを行う予定にしています。規模を問わず、出張セミナー等にも対応させて頂きますので、気軽にお問い合わせ下さい。

(文責:三村雅一)

2020年05月19日 14:13|カテゴリー:

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内定取消しについて

新型コロナウイルスの感染拡大による行動自粛等によって、実体経済に非常に大きな影響を及ぼし始めています。当事務所でも、この事象に関連するご相談も増えつつあります。

 

企業活動においては、景気の先行きが不透明であることから、内定者に対する内定取消しの動きも出ているようです。政府としては、このような動きに対し、内定取消しの防止等について、いくつかの要請を行っています(2020年3月13日付け日本経済新聞電子版「内定取り消し防止、最大限の努力を 政府要請」)。

 

 

本ブログでは、内定取消しの法的側面について、日本法と中国法の観点から、簡単に整理をしたいと思います。

 

 

日本においては、内定の法的性格について、「始期付解約権留保付労働契約」であると考える見解が一般的です(電電公社近畿電通局事件:最高裁第二小法廷昭和55年5月30日判決等)。

すなわち、内定通知によって、内定通知で予定されている日に労働契約は成立するものとし、かつ、採用内定取消事由が生じた場合等には、同契約を解約できるというものです。

採用内定取消事由については、内定通知書に記載しておけば自由に解約できるわけではなく、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できる事由が必要であると考えられています。

したがって、「新型コロナウイルスの感染拡大によって景気の先行きが不透明であるから」といった抽象的な理由のみで内定取消しを行った場合には、当該内定取消し(=解約権の行使)が違法と評価される可能性が高いと考えられます。

 

 

中国においては、私の知る限り、日本のように、内定を「始期付解約権留保付労働契約」として捉える考え方が一般的に採用されていません。

以下は私見ですが、中国法実務では、内定について、労働契約はいまだ締結されていない状態であると評価される可能性が高いと考えます。この場合でも、契約締結に近い状態にはありますから、内定取消しには、契約締結上の過失として、契約法42条が適用されると考えます。

すなわち、同条によれば、①契約締結を手段として、悪質な協議を行った場合、②契約の締結に関連する重要事実を故意に隠し、または虚偽の情報を提供した場合、または、③その他の信義誠実の原則に違反する場合には、会社が損害賠償義務を負うことになります。

仮に、「新型コロナウイルスの感染拡大によって景気の先行きが不透明であるから」といった理由で内定取消しをする場合でも、信義誠実の原則に違反すると評価されないよう、丁寧に協議を重ね、できれば内定者の同意を取得して書面化するといった対応が望まれます。

 

(文責:藤井宣行)

2020年03月19日 12:48|カテゴリー:

中国法務

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内定取消、コロナ

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強制労働・児童就労の禁止について

SDGsの目標8では、「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する」が目標8として掲げられ、同目標のターゲットの8.7では「強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終わらせるための迅速で効果的措置の実施、最も劣悪な形態の児童就労の禁止・撲滅を保障する。2025年までに少年兵の徴募や利用を含むあらゆる形態の児童就労を撲滅する。」とされています。

 

では、ここでいう、「強制労働」や「児童就労」は具体的にどのように定義されるのでしょうか。

 

まず、「強制労働」とは、処罰や脅威による従業員の意思に反した労働を意味します。そして、「処罰」とは、監禁、暴力による威嚇やその行使、労働者が職場の外に自由に出ることに制限を加えること等を意味します。また、「脅威」の具体例としては、家族に危害を加える旨の脅迫、不法就労を当局に告発する旨の脅迫、労働者を職場に留める目的で行われる賃金不払などがあげられます。

 

次に、「児童就労」は、就業最低年齢を下回る年齢の児童によって行われる労働を意味します。

 

ここで、「就業最低年齢」については、「就業の最低年齢に関する条約第138号」で、最低年齢は原則15歳とされています。ただし、軽労働については、一定の条件の下に13歳以上15歳未満の就労が認められ、危険有害業務については18歳未満の就労が禁止されています。また、開発途上国のための例外として、就業最低年齢は当面14歳、軽労働は12歳以上14歳未満の就労が認められるとされています。

さらに、「最悪の形態の児童労働に関する条約第182号」では、18歳未満の児童による①人身売買、徴兵を含む強制労働、債務労働などの奴隷労働、②売春、ポルノ製造、わいせつな演技に使用、斡旋、提供、③薬物の生産・取引など不正な活動に使用、斡旋、提供、④児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働が「最悪の形態の児童労働」として定められ、これの禁止と撤廃を確保するために、即時の効果的な措置を求めるとされています。

 

近時、SDGsの普及に伴い、取引基本契約等の中で、「乙は、本件契約書に基づく債務の履行に関連する場合であるか否かを問わず、強制労働、児童労働、外国人労働者の不法就労を行わないとともに、賃金・労働時間を含む従業員の雇用条件については、事業活動を行う各国各地域の法令に準拠するものとする。」などの条項が盛り込まれるケースも見られます。

 

さらに、「乙は、自社、関連会社及び乙の事業、製品またはサービスに関連するサプライヤー、請負業者及びコンサルタント(以下「乙取引先」という)というに対して、本契約書別紙に定める各要求事項を履行させるように努めなければならない」という、いわゆるフローダウン(Flow-Down)条項が盛り込まれるケースもあります。

 

上記条項違反が取引基本契約の解除事由に当たりうるような場合は、重大な影響が出てしまいます。

 

そうすると、海外のサプライチェーンから原材料や製品の供給を受けているような場合は、当該サプライヤーの工場等において上記の定義にあてはまるような強制労働や就業最低年齢を下回る年齢の児童による児童就労が行われていないかをモニタリングしておく必要があります。

 

文責 河野雄介

以上

2020年03月18日 18:11|カテゴリー:

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インドネシア法務③

前回のブログで、ジョコウィ大統領が海外からの投資促進のために法律を改正すると発言してきたこと、そのためにオムニバス法案を国会に提出し、今国会審議の最優先法案にすると発表したことを紹介しました。

今回は、2020年2月12日に、インドネシア政府が国会に提出した雇用創出オムニバス法案について紹介します。

今回取り上げる雇用創出オムニバス法案は、海外からの投資促進を目的としたものであり、11分野の法改正が含まれると言われています。

その中でも企業の事業活動に大きく関係するいくつかの点について改正の概要を紹介します。

 

①中小零細企業法の改定

インドネシアの投資法は、投資活動に対して全ての事業分野が開かれているという原則を定める一方で、一定の閉鎖された事業分野、条件付きで開かれている事業分野を定めています。

条件付きで開かれている事業分野のリストとして、「中小零細企業・協同組合のために留保され又はこれらとのパートナーシップが条件とされている事業分野」のリストが設けられています。

この、「中小零細企業・協同組合」とは、現行の2008年法律第20号に定められた要件、すなわち「純資産100億ルピア(約7,900万円)以下、もしくは年商500億ルピア以下」という要件を満たす個人又は法人をいうとされています。

この法律が、中小規模の外国企業がインドネシアに進出できない大きな要因となっていました。

今回の法案では、中小零細企業の定義を定める条文を撤廃し、代わりに、純資産、年商、投資額、雇用者数によって、事業分野ごとの定義を下位法令で定めるとしています。

これにより、中小企業の要件金額が緩められる可能性があり、外国企業が進出しやすくなると期待されています。

 

②投資活動の基本法の改正

投資活動の基本法である法律2007年第25号も、一部改正される見通しであると言われています。

前述のとおり、現在インドネシアでは、条件付きで開放されている事業分野のリスト(ネガティブリスト)がありますが、500超の事業分野については、内資との合弁が条件とされています。

今回の法案では、ネガティブリストに関する記載を条文から削除しており、代わりに、詳細を大統領規程において定めるとしています。

経済調整府などの説明によると、従来のネガティブリストを改め、政府が投資を優先する分野を打ち出したプライオリティリストを導入する見通しであると言われています。

同調整府によると、優先分野に含まれるものは、ハイテク産業、大規模投資、デジタル産業、労働集約型産業となっています。

なお、ネガティブリストを廃止するのかどうかは、未確定です。

 

③新興企業が外国人の技術者らを雇用する際の規制を緩和する方針

今回の法案では、「スタートアップ」として分類された新興企業は外国人を雇用する際、政府当局の承認は不要とする、とされています。

現行の制度では外国の大使館などを除けば、外国人を雇う予定の企業は外国人雇用計画書(RPTKA)(人数や職務、勤務地、従業員教育などの計画)を当局に提出し、承認を得なければならないとされています。

今回の労働法の改正案の中には、外国のスタートアップについては、外国人雇用計画書(RPTKA)なしでもインドネシアにおいて、外国人が働くことができるといった条文が盛り込まれています。

昨年私がジャカルタに研修に行った際も、フィンテック関連のベンチャー企業が多く誕生しているという話を耳にしましたが、そういったデジタル技術を駆使した企業が多く誕生しているインドネシアでは国内の技術者を巡る激しい争奪戦が行われているようです。

もっともインドネシア国内の技術者の数は決して多くないため、新興企業が外国人の技術者を雇いやすくなることで同企業の発展は加速し、さらにインドネシア国内の技術者が外国人の優秀な技術者から技術を吸収し、さらなる人材育成が可能となると考えられます。

インドネシアには現在、配車サービス大手のゴジェックやインターネット通販大手のトコペディアなど企業価値が10億ドル(約1100億円)を超える「ユニコーン」企業が5社あるなど、東南アジアにおいてユニコーン企業の数は最多です。

そういった土壌があるインドネシアにおいて、外国人雇用に関する規制が緩和され、優秀な人材を確保しやすくなることはとても大きな意味を持つと考えます。

 

④投資の手続について

インフラ開発などの際、中央・地方の両政府の複数の省庁で許認可を得る必要があった投資の手続きを中央に一本化するとされています。

2014年に誕生したジョコウィ政権は、投資を促進するために、投資に関する手続の簡素化に努めてきましたが、今回の法改正で、最短数時間で基本的な投資手続きを完了できるようにするとされています。

 

⑤人件費負担の軽減

現在は、最低賃金が毎年約8%上昇し、経済界から不満が出ており、これが海外からの直接投資の足かせになっていると言われていました。

そこで、最低賃金の伸び率を抑えること、退職時に退職金に加算される功労金も引き下げる、とされています。

 

外資企業からは、インドネシアの投資環境への不満が高まっていましたが、ジョコウィ大統領による大掛かりな法改正に向けた取り組みが評価され、ジョコ政権の継続が決まった2019年4月以降、海外企業からの大型投資が表明されています。

前回のブログでは、2020年1月に、ソフトバンクグループが、インドネシアの首都移転計画に最大400億ドルを投資することを提言したとの報道があったことを紹介しました。

それ以外にも、例えば、トヨタは2019年6月、部品各社を含むグループ全体でインドネシアに約2100億円を投じる計画を表明しました。

韓国現代自動車も15億5千万ドルで電気自動車に対応する新工場の建設を計画しています。

シンガポールに本社を置くグラブも20億ドルを投じる方針を打ち出しました。

 

このように、インドネシアは海外からの投資促進のために積極的な姿勢を明らかにしています。

今後も引き続き情報をアップデートしたいと思います。

 

(文責:三村雅一)

新型コロナウイルスと不可抗力について(2)

私の前回のブログで、2月17日のジェトロ大阪でのセミナーについてご案内していましたが、私と共同のスピーカーが中国から来日する中国人弁護士であったこともあり、残念ながら、開催が延期となりました。延期後の日時が決まりましたら、改めて、ご案内させていただきます。

 

 

さて、先日、当事務所のマネージングパートナーである河野弁護士が、ブログ「新型コロナウイルスと不可抗力について」において、新型コロナウイルスの流行に起因して、契約上の債務を履行できないケースについて、日本法の観点から説明をしてくれています。

 

 

今回のブログでは、中国法の観点から、若干の説明をしたいと思います。

 

 

1.契約書に、不可抗力免責に関する条項がある場合

この場合は、日本法を準拠法とする場合と同様、契約文言の規定に、「疫病」等の文言が明記されているか、明記されていないとしても「その他の不可抗力」といった文言の有無を確認することになります。

 

そのうえで、今回の状況が、規定されている文言に該当するか、あてはめの作業をすることになります。その内容については、下記2を参考にしてください。

 

 

2.契約書が存在しない、または、契約書に不可抗力免責に関する条項がない場合

準拠法が中国法であれば、契約による修正がないことから、中国法の一般原則が適用されることになります。

中国法では、「不可抗力」について、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性が客観的に存在することを要求しています(通則153条、民法総則180条2項、契約法117条等)。

 

新型コロナウイルスの発生や流行自体については、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性が客観的に存在すると考えられます。

 

しかしながら、各企業が直面している契約上の債務の履行に関する障害については、その具体的な状況(ビジネスモデル、実際に利用する運送の状況等)は様々であると考えられますので、ケースバイケースで、個別の検討を要するでしょう。

 

2002年にSARSが流行した際、最高人民法院は、SARS の流行について不可抗力に該当するとの判断をしたものの、不可抗力に該当する事由について、災害拡大防止のための行政措置を直接の原因とする場合等、一定の場合に限定しましたので、当該事由該当性を、個別に判断する必要がありました。

 

なお、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)が、新型コロナウイルスについて、不可抗力にあたる事実が発生したとする証明書を発行しています。CCPITは、あくまで1つの機関であり、不可抗力該当性を判断するのは、最終的には裁判所(人民法院)ですから、当該証明書は、不可抗力該当性を肯定する方向の重要な証明手段の1つであるという位置付けになると考えます。

 

また、そもそも、不可抗力免責は契約の拘束力から例外的に解放する制度ですから、その適用は、本来的に謙抑的になる性質を有するものです。

 

したがって、新型コロナウイルスに起因して、契約上の債務の履行に障害が生じている場合、まずは、協議により解決を図ることが最優先でしょう。そのうえで、自社の状況が、不可抗力に該当するかについて、契約書等の存在を確認しつつ、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性の観点から、冷静に、自社に関する状況を分析することが肝要であると考えます。

 

(文責:藤井宣行)

2020年02月26日 09:23|カテゴリー:

中国法務

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コロナ,不可抗力,免責

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