国際法務の部屋

クロスボーダー契約と印紙税

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企業等が、一定の契約書等(以下、印紙税の課税対象となる文書のことを「課税文書」といいます。)を作成した場合、印紙税が課税されます。印紙税は、課税文書が各種の経済取引の表現であり、担税力が間接的に表れているとして、印紙税法により課税されています。

印紙税法の課税物件(課税対象)は、各種文書の作成です。具体的には、印紙税法第2条において、「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書」に印紙税が課税されることが規定されています。例えば、当該別表の7では、いわゆる基本契約書に関し、「継続的取引の基本となる契約書(契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が三月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く。)」について、1通につき4000円が課税される旨が規定されています。

以上のことについては、ご存知の方も多いかと思います。

印紙税法は、別表の複数の項目に該当するように思える場合の対応や、作成した契約書が別表3の「請負に関する契約書」に該当するか等、実務上、担当者の方が悩むポイントが意外に多くあります。

海外の企業との契約に際しても、興味深い論点があります。例えば、「日本の企業が先に契約書に記名・押印した後、原本を海外企業に郵送して、先方の押印やサインをもらう場合」、日本の印紙税法によって課税対象となるのでしょうか。

この点について、国税庁の質疑応答事例集では、文書の作成時点について、「契約書のように当事者の意思の合致を証明する目的で作成する課税文書は、その意思の合致を証明する時」になると解釈したうえで、「契約書は、双方署名押印等する方式の文書ですから、貴社が課税事項を記載し、これに署名押印した段階では、契約当事者の意思の合致を証明することにはならず、その契約当事者の残りのA社が署名等するときに課税文書が作成されたことになり、その作成場所は法施行地外ですから、結局、この契約書には印紙税法の適用はないことになります。」としています。

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/06/02.htm

また、同サイトでは、「いつ、どこで作成されたものであるかを明らかにしておかなければ、印紙税の納付されていない契約書について後日いろいろトラブルが発生することが予想されます。したがって、契約書上に作成場所を記載するとか、契約書上作成場所が記載されていなければその事実を付記しておく等の措置が必要になります。」とも指摘しています。

この指摘のとおり、当該契約書が課税対象ではないことを主張・立証するためには、契約書上に、作成場所を記載するといった対応をしておくことが望ましいでしょう。

なお、中国でも、中華人民共和国印紙税暫定条例という、日本の印紙税法に相当する法令があります。同条例でも、日本の印紙税法と同様、売買契約書等の課税対象となる文書が詳細に列挙されています。また、契約書の完成場所が中国の場合に、中国の印紙税が課税されるとされており、この点についても、日本の印紙税法の考え方と類似しています。

中国をはじめ、海外企業と文書を用いて契約を締結する場合には、税務上のコンプライアンスの観点から、どの国の印紙税法の課税対象となるのかについても留意が必要です。

執筆者
藤井 宣行
マネージング・パートナー/弁護士

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