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国際法務の部屋

コーポレートガバナンス・コード及び投資家と企業の対話ガイドラインの改訂とSDGsに関連する記載について

金融庁及び東京証券取引所が事務局をつとめる「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」からの提言を踏まえ、東京証券取引所は、2021年6月11日に、改訂版のコーポレートガバナンス・コードを公表しました。

コーポレートガバナンス・コードの中で、【基本原則2】として

上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。

取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。

 

との原則が定められていたのですが、この基本原則2の【考え方】の中で、SDGsに関する記載として下線部分が修正・追加されています。

 上場会社には、株主以外にも重要なステークホルダーが数多く存在する。これらのステークホルダーには、従業員をはじめとする社内の関係者や、顧客・取引先・債権者等の社外の関係者、更には、地域社会のように会社の存続・活動の基盤をなす主体が含まれる。上場会社は、自らの持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を達成するためには、これらのステークホルダーとの適切な協働が不可欠であることを十分に認識すべきである。

また、「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関数が増加するなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であるとの意識が高まっている。こうした中、我が国企業においては、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくことが重要である。

上場会社が、こうした認識を踏まえて適切な対応を行うことは、社会・経済全体に利益を及ぼすとともに、その結果として、会社自身にも更に利益がもたらされる、という好循環の実現に資するものである。

 

また、金融庁は、「投資家と企業の対話ガイドライン」を2021年6月11日付で改訂しています。

この、「投資家と企業の対話ガイドライン」は、「コーポレートガバナンスを巡る現在の課題を踏まえ、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードが求める持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた機関投資家と企業の対話において、重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたものである。機関投資家と企業との間で、これらの事項について建設的な対話が行われることを通じ、企業が、自社の経営理念に基づき、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現し、ひいては経済全体の成長と国民の安定的な資産形成に寄与することが期待される。本ガイドラインは、両コードの附属文書として位置付けられるもの」とされています。

そして、改訂版の投資家と企業の対話ガイドラインの中で、「経営環境の変化に対応した経営判断」の1-3として、SDGsに関連する下記のような記載が修正・追加されています。

 

ESGやSDGsに対する社会的要請・関心の高まりやデジタルトランスフォーメーションの進展、サイバーセキュリティ対応の必要性、サプライチェーン全体での公正・適正な取引や国際的な経済安全保障を巡る環境変化への対応の必要性等の事業を取り巻く環境の変化が、経営戦略・経営計画等において適切に反映されているか。また、例えば、取締役会の下または経営陣の側に、サステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているか。

この中でも、「サプライチェーン全体での公正・適正な取引」については、このような観点からのサプライチェーンとの間の取引に用いている契約書(英語・中国語も対応可能)の条項のレビューや、弊所のグローバルネットワークを生かした人権デュー・ディリジェンス(人権方針やCSR 調達基準等の策定、人権リスクの特定・調査、人権研修、報告書作成)などの支援をさせていただくことが可能です。

上記のように、コーポレートガバナンス・コードや投資家と企業の対話ガイドラインの改訂にあたってSDGsに関する記載がなされるなど、SDGsがビジネスにおいて共通言語化している現在、企業がSDGsを本業に取り込み、環境・社会的課題の解決に資する製品やサービスを提供できれば、新たなビジネスチャンスにつながる一方、企業がSDGsの達成に反する行動をとった場合のリスクは、顧客からの取引停止や投資・融資の引き上げ、ブランドの毀損、不買運動など広範囲におよび、企業・ブランドの存在意義に直結するといっても過言ではありません。現代社会において、SDGsは企業のコンプライアンスに密接に関連するため、SDGsと法務は切り離せない関係にあります。

弊所では、これまでSDGsの専門家とともに、商工会議所、地方自治体、国内外の金融機関、企業等において、対象となる企業の規模を問わず、SDGsに関するセミナーを数多く行なってきました。この活動を通じて得た知見を基に、SDGsに関連した幅広いサービスを提供していますので、お気軽にお問い合わせください。

以上

文責 河野雄介

2021年06月22日 12:53|カテゴリー:

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SDGs

マネー・ローンダリング③~疑わしい取引について

これまで、マネー・ローンダリングについて、マネー・ローンダリング①(基礎知識)マネー・ローンダリング②(具体例)を過去のブログでご紹介してきましたが、今回は、疑わしい取引について、取り上げます。

疑わしい取引の届出制度は、マネー・ローンダリングを防止するための対策の一つであり、金融機関等の特定事業者(ベンチャーファンドを運営する適格機関投資家等特例業者等も対象となります)から、犯罪収益に係る取引に関する情報を集めて捜査に役立てることを目的とする制度です

犯罪による収益の移転防止に関する法律の第8条1項では、疑わしい取引の届出制度について、

特定事業者(第二条第二項第四十四号から第四十七号までに掲げる特定事業者を除く。)は、特定業務に係る取引について、当該取引において収受した財産が犯罪による収益である疑いがあるかどうか、又は顧客等が当該取引に関し組織的犯罪処罰法第十条の罪若しくは麻薬特例法第六条の罪に当たる行為を行っている疑いがあるかどうかを判断し、これらの疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定めるところにより、政令で定める事項を行政庁に届け出なければならない。

と規定されています。

具体的には、こちらの金融庁のウェブサイトに、疑わしい取引についての届出手続、届出様式及び参考事例(預金取扱い金融機関、保険会社金融商品取引業者、仮想通貨交換業者について、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として特に注意を払うべき取引の類型が例示されています)が記載されており、参考になります。

また、犯罪による収益の移転防止に関する法律の第3条3項では、

国家公安委員会は、毎年、犯罪による収益の移転に係る手口その他の犯罪による収益の移転の状況に関する調査及び分析を行った上で、特定事業者その他の事業者が行う取引の種別ごとに、当該取引による犯罪による収益の移転の危険性の程度その他の当該調査及び分析の結果を記載した犯罪収益移転危険度調査書を作成し、これを公表するものとする。

と規定されており、疑わしい取引として届出が行われた情報について、毎年、この規定に基づいて、犯罪収益移転危険度調査書が作成、公表されており、下記のリンクから確認できます。この犯罪収益移転危険度調査書には、最新のマネー・ローンダリングに関する動向や事例が公表されており、非常に参考になります。

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/nenzihokoku/nenzihokoku.htm

さらに、金融庁が令和3年2月19日に公表した、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインでは、下記のような記載があります。

疑わしい取引の届出は、犯収法に定める法律上の義務であり、同法の「特定事業者」に該当する金融機関等が、同法に則って、届出等の義務を果たすことは当然である。

また、金融機関等にとっても、疑わしい取引の届出の状況等を他の指標等と併せて分析すること等により、自らのマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の強化に有効に活用することができる。

【対応が求められる事項】

① 顧客の属性、取引時の状況その他金融機関等の保有している具体的な情報を総合的に勘案した上で、疑わしい取引の該当性について適切な検討・判断が行われる態勢を整備し、法律に基づく義務を履行するほか、届出の状況等を自らのリスク管理態勢の強化にも必要に応じ活用すること

② 金融機関等の業務内容に応じて、IT システムや、マニュアル等も活用しながら、疑わしい顧客や取引等を的確に検知・監視・分析する態勢を構築すること

③ 疑わしい取引の該当性について、国によるリスク評価の結果のほか、疑わしい取引の参考事例、自らの過去の疑わしい取引の届出事例等も踏まえつつ、外国PEPs該当性、顧客属性、当該顧客が行っている事業、顧客属性・事業に照らした取引金額・回数等の取引態様、取引に係る国・地域その他の事情を考慮すること

④ 既存顧客との継続取引や一見取引等の取引区分に応じて、疑わしい取引の該当性の確認・判断を適切に行うこと

⑤ 疑わしい取引に該当すると判断した場合には、疑わしい取引の届出を直ちに行う態勢を構築すること

⑥ 実際に疑わしい取引の届出を行った取引についてリスク低減措置の実効性を検証し、必要に応じて同種の類型に適用される低減措置を見直すこと

⑦ 疑わしい取引の届出を契機にリスクが高いと判断した顧客について、顧客リスク評価を見直すとともに、当該リスク評価に見合った低減措置を適切に実施すること

以上の情報源等を参考にしながら、疑わしい取引に関する最新情報を入手し、疑わしい取引を適切に検知することができる態勢及び、届出を行う必要がある場合は直ちに届出を行うことができる態勢を継続的に構築していくことが重要となります。

当事務所では、AML/CFT(Anti-Money Laundering/Counter Financing of Terrorism)(マネー・ローンダリング防止/テロ資金供与防止)のための規程整備、態勢整備に関するアドバイス、セミナーも行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

以上

文責 河野雄介

2021年05月20日 05:46|カテゴリー:

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ウイグル族の強制労働問題とSDGs

先日、「ユニクロ」を展開する株式会社ファーストリテイリング、「無印良品」を展開する株式会社良品計画の決算発表会見において、新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡り「新疆綿」に対する考えを問う質問が相次ぎました。

 

また、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は昨年、日本企業14社を含む大手グローバル企業83社の中国国内のサプライヤー工場で、ウイグル族が監視下に置かれ、移動や信仰などの自由を奪われた状態で強制労働させられていることを示す調査報告書を発表しました。

 

この14社に含まれるのは、日立製作所、ソニー、TDK、東芝、京セラ、三菱電機、ミツミ電機、シャープ、任天堂、ジャパンディスプレイ、パナソニック、良品計画、ファーストリテイリング、しまむらでした。

 

日本ウイグル協会と国際人権団体ヒューマンライツ・ナウによると、これら14社に対し、質問状を送る形で見解および対応策について調査を行ったとのことです。その結果、日立製作所、ソニー、TDK、東芝、京セラ、良品計画の6社は、サプライヤー工場に対して第三者監査を実施したと回答しており、京セラは「取引停止の可能性も含め検討している」と回答、三菱電機、ミツミ電機、シャープは指摘されたサプライヤーとの取引はないと否定するに留まり、パナソニックについては無回答だったとのことです。

 

以前からSDGsと企業活動というタイトルでブログをお届けしてきましたが、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる。ウイグル族の強制労働問題は、そういった時代が訪れるようになったことを示す一つの事例です。

 

今回のようなサプライチェーン上の人権侵害がもたらすリスクは、その対応によっては、投資の引き揚げや取引停止、ブランドの毀損、不買運動など広範囲におよび、企業・ブランドの存在意義に直結する問題といっても過言ではありません。

 

このSDGsの時代におけるコーポレートガバナンスとして、企業には、「ビジネスと人権に関する指導原則」で求められている、サプライチェーン上で発生する人権に関する負の影響・リスクを特定・評価し、予防や軽減、救済を行うプロセスである「人権デューデリジェンス」の実施が求められています。(ビジネスと人権に関する指導原則、人権デューデリジェンスについて過去記事参照

現在、EUでは、バリューチェーンにおける人権と環境に対するデューデリジェンスの義務化が進んでいます。また、日本でも2020年10月、政府がビジネスと人権に関する国別行動計画を発表し、その中で、人権を尊重する企業の責任を促すための国の取り組みとして、指導原則に基づく人権デューデリジェンスの実施を促しています。

 

さらに、2021年4月6日に公表された「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」においても、重要な経営課題として「サステナビリティをめぐる課題」が挙げられ、その中で、気候変動などの地球環境問題とともに人権の尊重が明記されました。

 

これからの企業経営においては、社会・環境への要請の更なる高まり、企業のグローバル展開に伴って生じる、海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への対応など、内外の激しい変化の中で革新的な対応が求められるようになっていくことは既に述べてきたとおりです。

 

その対応指針として、SDGsは大きな意味を持つことから、企業に携わる方々、そして企業法務に携わる我々弁護士も、SDGsの内容をしっかりと理解しておかなければなりません。当事務所においては、SDGsの側面からのコーポレートガバナンスに関するアドバイスも行わせて頂きます。お気軽にご連絡下さい。

 

(文責:三村雅一)

2021年04月23日 07:00|カテゴリー:

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SDGs、ESG、弁護士、法律

マネー・ローンダリング②

マネー・ローンダリングとは、一般的には、違法な起源を偽装する目的で犯罪収益を仮装・隠匿することを言います。

これまで公表され、耳目を集めたマネー・ローンダリング事案としては、①山口組系暴力団五菱会の幹部が「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」に違反して受領した犯罪収益をスイス連邦チューリッヒ州所在の金融機関に送金して隠匿したのに対し、同州が当該資産を没収したことを受け、両政府間で協議した結果、当該没収資産のうち、約50%に当たる2,897万9,738.88スイス・フラン(約29億円)をスイス連邦政府が日本国政府に譲与したいわゆる五菱会事件(平成20年4月22日 外務省報道発表より引用)、②日本の投資会社「ワールドオーシャンファーム」がフィリピンのマニラ近郊で営んでいるブラックタイガー養殖事業(東京ドーム300~450個分の広さ)や不動産事業などを投資対象とする匿名組合に出資して投資すると1年で倍になる(10日毎に5.556%、1年間で36回で合計100%の配当)との宣伝文句で多数の消費者から投資を募り、匿名組合員が他の投資家を紹介すると3~19%の紹介料を得られる仕組み(マルチ商法的要素)であり、口コミで被害が拡大した事案で、マネーローンダリング(米国の金融機関を経るなど)された資金が、米司法省により没収された事案(消費者庁ウェブページより引用)、③米国のトランプ元大統領の2016年の大統領選の際に、選挙対策委員長を務めていたPaul Manafort氏が、ウクライナ政権から受け取った巨額の顧問料をオフショア口座を経由した、不動産等購入の手法により資金洗浄していた事案等があります。

このように、マネー・ローンダリング事犯については、様々な類型がありますが、国家公安委員会がまとめた犯罪収益移転危険度調査書(令和2年)概要版では、我が国におけるマネー・ローンダリング事犯について、主体と前提犯罪に分けた詳細な分析がなされいます。

マネー・ローンダリング事犯の主体については、暴力団、特殊詐欺の犯行グループ、来日外国人犯罪グループが挙げられており、それぞれについて調査・分析が加えられています。

また、前提犯罪としては、窃盗、詐欺、電子計算機使用詐欺、出資法・貸金業法違反、常習とばく・賭博場開帳等図利、風営適正化法・売春防止法違反、薬物事犯が挙げられておりそれぞれについて犯行形態や手口が紹介されています。

我が国における、マネー・ローンダリング対策に関する法制度としては、一定範囲の事業者に顧客管理その他の防止措置の義務付けを課す、犯罪収益移転防止法や外為法、マネー・ローンダリングを犯罪として犯罪収益を収奪するための組織的犯罪処罰法や麻薬特例法等がありますが詳細な内容については、おってブログで取り上げたいと思います。

文責 河野雄介

2021年03月29日 13:17|カテゴリー:

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マネー・ローンダリング①

先日、河野弁護士と共に、『金融商品取引業者が押さえておくべきマネロン対策』と題する企業内セミナーを担当させて頂きました。

今後、河野弁護士と共にマネー・ローンダリングに関する情報をブログで提供していこうと考えています。

まず、今回は、マネー・ローンダリングに関する基礎的な知識について紹介します。

 

1 マネー・ローンダリングとは?

マネー・ローンダリング(money laundering)とは、違法な行為による収益の出所を隠すことであると言われています。具体的には、表に出せないようなお金を偽名で開設した金融機関の口座に隠匿したり、複数の預貯金口座に次々と移動させたり、不動産を購入したり、様々な方法によってその出所を分からなくするための行為を指します。

このマネー・ローンダリング(money laundering)という言葉は、アメリカのギャングであったアル・カポネがコインランドリーをマネー・ローンダリングに利用したことに由来すると言われています。すなわち、犯罪によって稼ぎ出した膨大なお金を合法的な収入に見せかける方法として、アル・カポネは、現金払いで商売をするコインランドリーをいくつも買って、汚れた金をきれいな金に紛れ込ませ、賭博や密売ではなくアメリカ一般市民のシャツや靴下を洗濯することで富を築いたのだと言ってのけたとのことです。

マネー・ローンダリング(money laundering)の「launder(ラウンダー)」とは、日本語で「洗濯する」という意味です。したがって、マネー・ローンダリングは、「資金洗浄」と訳されます。

アル・カポネの時代と比べ、マネロンの規模と複雑さは格段に増していると言われています。2018年の国連の推計によれば、1年間に資金洗浄される犯罪収益は1兆6千億ドルから4兆ドルで、全世界GDPの2~5%にのぼるとのことです。

この度、我々がマネロンセミナーを開催させて頂いた企業は、不動産事業に関連する企業でした。この点、不動産とマネロンの関係について、国際通貨基金(IMF)の法律局長による、「悪弊を一掃する」というタイトルの記事では、次のように紹介されていました

「ある意味では、高級物件は現代のギャングにとってのコインランドリーだ。米国当局が昨年(2017年)発行した公告によれば、ニューヨーク市などいくつかの大都市圏における高額で現金決済の不動産購入の3割以上が、既に疑わしい取引への関与が疑われている人物によるものだった。オーストラリア、オーストリア、カナダをはじめとする各国の政府は、自国の不動産市場が不正資金の投資や洗浄に使われる可能性があると結論づけている。」

このように、不動産とマネロンは非常に密接な関係にあると言えます。

 

2 マネー・ローンダリングはどのように行われるのか?

マネロンに用いられる手法は様々であり、時代によって変化しますが、そのプロセスについては3つの段階に分解できると考えられています。

①プレイスメント(預入)

第1段階は、犯罪によって得られたお金を金融システムに取り込む、あるいは合法的な商取引の流れに取り込む段階への資金の取り込む段階です。

例えば、犯罪収益(現金)を銀行口座に預け入れる方法、現金を多く取り扱う業種(カジノ、小売業者等)において、合法的な事業による売上金の中に犯罪収益を混入させる方法などが考えられます。

②レイヤリング(分別)

第2段階は、金融システムに取り込まれた犯罪資金の出所を分からなくするための処理です。例えば、複雑な送金取引を繰り返して資金の追跡を困難にする方法や、国際的な送金取引(マネロン規制の緩い国等)を利用したり、実体のない法人名義の口座を経由させる方法などによって資金の流れを不透明なものにします。

③インテグレーション(統合)

第3段階は、出所を隠ぺいした犯罪資金を、合法的なビジネスによる収益等であるように偽装するなどして、表の経済に統合させる処理です。

このフェーズは、「正当化」と「投資」の2つのフェーズから構成されると言われています。「正当化」とは、正当な事業資金への組み入れ(例:金融機関からのローンを不必要に借り入れて、資金の原資は金融機関からの借入金であるように偽装する方法)のことを言います。「投資」とは、手元に残った洗浄済み犯罪収益を大手を振って利用する段階のことを言います。

先ほどの不動産取引が出てくるのは、この第3段階となります。不動産取引がマネロンの手法として利用されるのは、不動産は一般的に価格が安定し、将来の値上がりが期待できる点、1回の取引で大量の資金を移動できる点が主な理由となっているようです。このような理由から、不動産取引はマネロンの方法として用いられるリスクが高い取引であると言われています。

 

次回以降、マネロンに対する規制の内容について説明します。

 

当事務所では、AML/CFT(Anti-Money Laundering/Counter Financing of Terrorism)(マネー・ローンダリング防止/テロ資金供与防止)のための規程整備、態勢整備に関するアドバイス、セミナーも行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

 

(文責:三村雅一)

2021年03月12日 13:23|カテゴリー:

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マネロン

シンガポール調停条約と日本での仲裁法等改正(調停合意への執行力付与)

2020年9月12日「国際的な調停による和解合意に関する国際連合条約」(シンガポール調停条約)が発効しました。日本は、まだ批准していません。

この条約は、調停の結果として当事者が締結した和解合意に対して、判決や仲裁判断と同様に執行力を与えるものです。当事者が調停による和解合意で定めた義務を任意に履行しない場合に、強制執行を求めるためには、従来であれば改めて訴訟等を提起する必要がありましたが、今後、同条約の締結国においては、訴訟等を提起することなく、当該和解合意に基づき強制執行を行うことができるようになりました。

これに関連して、日本でも調停合意への執行力付与へ向けて、法務省の法制審議会仲裁法部会で、議論がなされています。

法制審議会仲裁法制部会第5回会議(令和3年2月12日開催)では、
仲裁法等の改正に関する中間試案のたたき台(1) 暫定保全措置関連【PDF】、及び
仲裁法等の改正に関する中間試案のたたき台(2) 調停による和解合意関連【PDF】
が提示されました。(1)は仲裁に関連するものであり、(2)は調停に関するものです。シンガポール調停条約と関連するものは(2)になります。

この中間試案のたたき台(2)では、日本で調停による和解合意に対する執行力の付与の範囲として、主として以下の3つの案が提示されています。
甲案 国際事案に限定
乙1案 国際・国内問わず適用
乙2案 国際事案+ADR認証機関によるなど一定の限定された国内事案

また、以下のような一定の紛争類型については、適用除外とする旨の規定も提案されています。
(1)消費者と事業者の契約に関する民事紛争
(2)個別労働関係紛争
(3)人事に関する紛争その他家庭に関する紛争

日本には、京都に「京都国際調停センター」があり、大阪と東京に「日本国際紛争解決センター」があります。

費用等の観点から 国際仲裁の利用を逡巡する場面であっても、国際調停であれば、活用できることもあるため、今後の国際紛争の選択肢として、「調停」が脚光を浴びる土壌が整いつつあります。

もし、国際紛争に巻き込まれそうになっている方は、是非、国際調停の活用を検討いただければと思います。また、活用に際して、相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。

販売店契約書(Distributorship Agreement)作成上の留意点

販売店契約書(Distributorship Agreement)を作成する場合には、まず下記の表にまとめたように、代理店契約(Agency Agreement)との違いをおさえたうえで、想定している取引がどちらに該当するのかを明確にしておく必要があります。

 

そして、具体的に、販売店契約書(Distributorship Agreement)を作成していく際には、下記に留意しながら、具体的な条項をドラフトしていきます。

  • 自社がサプライヤーなのか、販売店なのかで、注意すべき点が大きく異なる
  • 対象製品の特定(品番など)
  • 独占権の有無
  • テリトリーの設定(明確に)
  • 最低購入義務(最低購入量の定義に注意。個別売買契約成立分か、引渡がされた分か)
  • 最低購入義務を果たせなかった場合の効果
  • 商標やラベルについての取り決め(サプライヤーは、テリトリーにおいて商標登録しているかに留意する必要あり)
  • 製造物責任や保険についての取り決め
  • 販売店によるマーケティング活動やアフターサービス提供の定めを置くか
  • 販売店に、対象製品と市場において競合する可能性のある商品の取り扱いを禁止する規定を置くか

上記の点に留意せずに、取引の実情にあわないままに既存のひな形を契約書として用いてしまうと、想定外のリスクが発生する可能性があります。

弊所では、日本語、英語、中国語にかかわらず、多数の契約書を作成・レビューしてきた経験があります。販売店契約書(Distributorship Agreement)その他の契約書の作成やレビューについてのご質問やご依頼がおありでしたら、こちらまでご連絡ください。

文責 河野雄介

2021年01月21日 10:28|カテゴリー:

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不動産投資とESG投資、SDGs

先日、不動産関係のある企業様において、弊所の河野弁護士とともに、「不動産投資とESG、SDGs」について講演しました。

 

先日の河野弁護士のブログでも紹介したとおり、令和2年10月16日、関係府省庁連絡会議において、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画が発表されました。日本政府は、この計画の策定を、SDGsの実現に向けた取り組みの一つとして位置づけた上で、同計画の第3章「政府から企業への期待表明」において、

 

政府からは企業に対し、その規模、業種等にかかわらず、

 

①「人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること」

②「サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うこと」

③「日本企業が効果的な苦情処理の仕組みを通じて、問題解決を図ること」

 

を期待する、と表明しています。

 

この①の内容については、先日の河野弁護士のブログで紹介したところであり、②③の参考になる取り組みについては、私の過去のブログにおいて紹介させて頂きました。

 

なお、③の苦情処理・問題解決制度については、これを強化することによって、

・企業不祥事及びレピュテーション上の損害と経済的不利益の発生・拡大の防止

・責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンス、CSR調達、指導原則で言及されている人権デュー・ディリジェンスの効果的な実施

・取引先・投資家を含むステークホルダーからの信頼の確保と経済的利益(ESG投資を含む)の獲得

といったメリットが認められる他方で、企業がステークホルダーからの苦情申立てや問題提起に対し十分に対応できず、その結果、企業価値が毀損する不祥事が生じた場合、取締役が善管注意義務違反を問われることにもなりかねないというリスクがあると言われています。

 

不動産投資とESG投資、SDGsについて、令和元年7月3日に、国土交通省「ESG不動産投資のあり方検討会」が中間とりまとめを発表しました。

同とりまとめにおいては、【ESG投資、SDGsにおける不動産の重要性】について、「我が国において、2600兆円を超えるとされる不動産は、国民生活や経済成長を支える不可欠かつ重要な基盤であり、環境や社会に関する問題解決に貢献できるポテンシャルも大きい。そのため、不動産の開発・運用・投資において、ESG投資やSDGsの考え方を踏まえることは重要である。」と述べられています。

その上で、【不動産へのESG投資の基本的な考え方】として、我が国の不動産市場・不動産投資市場が、世界的に拡がるESG投資に対応するためには、リスク・リターンの二軸のみを踏まえた投資ではなく、社会的なインパクトという第三軸目も意識した投資が実践される必要がある。そして、それにより、不動産投資が不動産取引の短期的な価値上昇期待のみに基づくものではなく、ESGの組み込みにより、資産が中長期的に生み出す価値を踏まえて行われるようになることが望ましい、との内容が記されています。

 

今回のセミナーでは同とりまとめの内容を紹介した上で、同業他社の具体的取り組みを参考にしながら、SDGsの17のゴールについて自社で取り組むことのできる内容についてグループに分かれでディスカッションをして頂きました。

皆様に基本的な知識を知って頂くにとどまらず、自社で具体的にどのような取り組みができるのかについて考えて頂くことで、より自分の問題として考えて頂く機会を持って頂けたと考えております。

 

当S&W国際法律事務所では、SDGsの基本的な知識から、それぞれの業種に合わせた具体的な取り組み、自社における取組の検討などについて社内セミナーも担当させて頂いておりますので、気軽にお問い合わせ下さい。

 

(文責:三村雅一)

2020年11月16日 15:14|カテゴリー:

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、不動産、ESG投資SDGs、弁護士、法律

人権デュー・ディリジェンスについて

先日、神戸市、ひょうご・神戸国際ビジネススクエア(神戸市海外ビジネスセンター、ひょうご海外ビジネスセンター、ジェトロ神戸)及び弊所が主催する、SDGsビジネスセミナーで、弊所の三村弁護士とともに、「企業にとって必要なSDGsと法務と取り組み事例の紹介」について講演致しました。

このセミナーでも取り上げさせていただいたのですが、企業にとって、人権デュー・ディリジェンス(人権への影響を特定し、予防し、軽減し、そしてどのように対処するかについて説明するために、人権への悪影響の評価、調査結果への対処、対応の追跡調査、対処方法に関する情報発信を実施すること)の重要性が高まってきています。

というのも、令和2年10月16日、関係府省庁連絡会議において、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画が策定され、外務省の報道発表ウェブページには、行動計画が策定された経緯について、下記のような説明がなされています。

「近年、企業による人権尊重の必要性について国際的な関心が高まっています。国連人権理事会では「ビジネスと人権に関する指導原則」が支持され、各国に国別行動計画の策定が促されており、また、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に当たっては、人権の保護・促進が重要な要素と位置付けられています。本行動計画は、こうした背景の下、関係府省庁が協力し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえた上で、策定されたものです。」

「本行動計画においては、「ビジネスと人権」に関して、今後政府が取り組む各種施策が記載されているほか、企業に対し、企業活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報共有を行うこと、人権デュー・ディリジェンスの導入促進への期待が表明されています。」

そして、「ビジネスと人権」に関する行動計画の第3章にも、「政府は、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国際的に認められた人権及び『ILO宣言』に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し、『指導原則』その他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること、また、サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うことを期待する」との記載があります。

また、2020年10月23日付の日経新聞でも、人権デュー・ディリジェンスの重要性について、上記の「ビジネスと人権に関する指導原則」の策定にも携わった、ハーバード大学ケネディ・スクールのジョン・ラギー教授への下記のようなインタビュー記事が掲載されており、その中で、ラギー教授は、

最も重要なのが指導原則で定めた人権デューデリジェンス(DD)だ。世界では人権DDの活用や義務化が進んでいる。日本も取り残されないよう義務化すべきだ」

「多国籍企業の多くは持続可能な供給網(サプライチェーン)の構築を目指し、公正な生活賃金を支払える仕組み作りをしている。アジアでも日本企業が拠点を置いているミャンマーやタイは強制労働の問題があり、人権DDの必要性は高い

とコメントしています。

このような流れを見ると、海外(とくにASEAN諸国)でビジネスをしている日本企業については、具体的に人権デュー・ディリジェンスに取り組む必要性が加速していくと考えられます。

弊所では、ASEAN諸国に拠点を持つケルビンチアパートナーシップと緊密に連携しておりますので、ASEAN諸国における人権デュー・ディリジェンスをサポートさせていただくことが可能です。また、ビジネスと人権の観点や贈収賄防止の観点から海外のサプライチェーンと締結する契約(取引基本契約書等)において盛り込むべき契約条項ついても研究を重ねており、対応させていただくことが可能です。

ぜひ、お気兼ねなくお問い合わせください。

文責 河野雄介

2020年11月16日 12:28|カテゴリー:

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中小企業に対する支払保障条例

中国の国務院は、2020年7月15日、「中小企業への代金支払保障条例」を公布しました(2020年9月1日から施行されています。)。

本条例は、「公的機関、公的事業法人及び大企業の中小企業への代金支払を促進、中小企業の合法的権益を保護し、経営環境を最適化する」(第1条)ことを目的としています。公的機関、公的事業法人及び大企業(以下「大企業等」といいます。)から中小企業に対する支払いについての規制を設けるという意味で、日本における下請代金支払遅延等防止法(下請法)と類似しています。

 

本条例第3条では、中小企業の定義について、国務院が承認した中小企業区分基準に基づくとされており、大企業は中小企業以外の企業をいうと規定されています。当該中小企業区分基準では、業種別に、売上、従業員数、及び、総資産等を基準に決定されることになります。例えば、卸売業では、従業員数が200人より少ないか、もしくは、売上が4億人民元より少なければ中小企業に分類されます。

 

本条例では、大企業等が中小企業と取引するに際し、原則として商品、工事、またはサービスを提供した後30日以内の支払義務や、中小企業への代金支払が遅延した場合の遅延利息(約定がなければ1日あたり0.05%)の支払義務を規定しています。

他方、中小企業においても、大企業等と契約を締結する際に、自らが中小企業に属することを積極的に告知することを義務付けています。

 

本条例は、違反した場合のサンクションに関する規定が必ずしも明確ではありません。また、施行されて間もないこともあり、実務における運用状況が不透明であることから、今後の実務の状況を注視する必要があります。

 

日本においては、下請法に関する社内マニュアルの整備といった対応を既にされている企業も多いと思います。本条例は、実務に与える影響が小さくないと考えられますので、中国にグループ会社が存在する企業においては、本条例の理解と対応指針の策定が必須であるといえます。

 

(文責:藤井宣行)

2020年10月29日 09:37|カテゴリー:

中国法務

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