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ベンチャー法務の部屋

第三者委員会

テレビや新聞などの報道で、「第三者委員会」という言葉を耳にすることが増えました。

記憶に新しいところでは、関西電力の役員らが原子力発電所を巡って多額の金品を受け取っていた問題、日大アメフト部におけるタックル問題などで第三者委員会が設置され、調査が行われ、調査報告書が公表されています。

第三者委員会を設置する大きな目的は、企業や官公庁、地方自治体、独立行政法人あるいは大学、病院等の法人組織において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等が発生した場合に、同行為等について調査・検証を行うことで、不祥事によって失墜してしまった社会的信頼を回復し、再発を防止することにあります。

このような目的の実現のためには、なれ合いのおそれのある内部の調査・検証ではなく、企業等から独立した第三者である専門家による、客観性・中立性・専門性が確保された調査・検証を行うことが、より相応しいことから、第三者委員会が設置されることとなります。

第三者委員会は、法令によって設置が義務付けられているものではなく、あくまで企業等が任意に設置しているものです。また、第三者委員会の運営や権限に関しても法令に定めがあるわけではなく、第三者委員会は調査等について強制的な権限を持っているわけでもありません。なお、名称についても、「第三者委員会」という名称ではなく、「調査委員会」、「独立調査委員会」、「特別調査委員会」などと名付けられている場合もあります。

前述のとおり、第三者委員会は、設置された目的を実現するためにも、企業等から独立した立場で、公平・公正な調査、検証をすることが求められているものの、過去に設置された第三者委員会の中には、調査が杜撰であったり、企業等からの独立性が十分に確保されていないなどと批判を受けることもありました。

そのような状況を受け、日本弁護士連合会は、2010年7月に「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を公表しました。(なお、同ガイドラインは2010年12月に改訂されています)。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100715_2.pdf

日弁連ガイドラインには、(i)第三者委員会の活動について、事実調査・認定・評価や調査報告書の開示、再発防止策等の提言に関する指針、(ii)第三者委員会の独立性・中立性についての指針、(iii)企業等の協力についての指針、(iv)公的機関とのコミュニケーションに関する指針、(v)委員等についての指針などが定められています。

日弁連ガイドラインには、拘束力はないものの、現在の第三者委員会のほとんどは、日弁連ガイドラインに準拠したものであるか、少なくとも日弁連ガイドラインを意識したものとなっていると言われており、2018年9月7日に公表されたスルガ銀行株式会社の調査報告書においても、当該第三者委員会は日弁連ガイドラインに準拠して構成されたものであり、その運営・調査の実施・調査報告書の作成等が日弁連ガイドラインに準拠したものである旨記載があります。

次回以降、引き続き、同ガイドラインの内容を少し詳しく説明したいと思います。

(文責:三村雅一)

2020年11月03日 07:12|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

法務局における遺言書の保管等に関する法律

 2018年7月6日、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下「遺言書保管法」といいます。)が成立しました。この法律は、民法の相続法の改正にあわせる形で制定されたもので、簡単に言うと、法務局に自筆証書遺言を預けることができる制度を設けるものです。そして、この遺言書保管法が、2020年7月10日に施行されました。

 この制度の創設には、自筆証書遺言に係る遺言書は、遺言者が作成した後に自宅で保管されることが多いところ、そもそも遺言書が発見されないことがあること、遺言書が紛失するおそれがあること、相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんが行われるおそれがあること、そしてこれらの問題によって相続をめぐる紛争が生じるおそれがあること、という背景がありました。

 この点、公正証書遺言については、遺言書の原本は公証役場で保管されることから遺言書の紛失や相続人による遺言書の廃棄、隠匿、改ざんが行われるおそれはありません。また、遺言者が死亡した後、相続人などの関係人であれば遺言検索システムによってその存否等の照会が可能であることから、遺言書が発見されないというおそれもありません。

 このように、公正証書遺言であれば、上記問題点をクリアできるのですが、公正証書遺言の作成については、財産によっては費用が高額化することや、公証人とのやり取り、原則として公証役場に出向く必要があること、証人2名を準備することといった手間もかかるという難点もあります。(※今回の自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧を文末に記載します。)

 経営者におかれましては、事業承継の問題とも関連し、遺言は一つの大きなテーマとなります。これまでは、上記問題点があったことから公正証書遺言を選択されることが多かったと思いますが、今回の遺言書保管法によって、自筆証書遺言に係る遺言書の上記問題点についてどのような解決が可能となったのかを紹介します。

1 遺言書の保管の申請

・遺言者は、法務局の遺言書保管官に対し、自筆証書による遺言書の保管の申請をすることができます(遺言書保管法第4条第1項)。

・遺言者は、いつでも保管の申請を撤回でき(遺言書保管法第8条第1項)、遺言書の閲覧をすることができます(同法第6条第2項)。

※但し、保管の申請をすることのできる遺言書は、法務省令で定める様式(法務局における遺言書の保管等に関する省令第9条 別記第1号様式)に従って作成した無封のものでなければならない(遺言書保管法第4条第2項)ので、注意が必要です。

2 遺言書の保管・情報の管理

・遺言書保管官は、遺言書を遺言書保管書(法務局)において保管する(遺言書保管法第6条第1項)とともに、その画像情報を記録するなどして遺言書に係る情報を管理します(同法第7条)。

3 遺言者の死亡後の手続(遺言書情報証明書の請求等)

・遺言者の死亡後には、相続人等は、遺言書情報証明書の交付請求(遺言書保管法第9条第1項)、遺言書の閲覧をすることができます(同法第9条第2項)。

・その際、遺言書保管官は、他の相続人等に遺言書を保管している旨を通知します(同法第9条第5項)。

※なお、遺言書情報証明書の交付等の請求権者については、遺言書保管法第9条第1項に列挙されています。さらに、列挙された者に類するものとして、遺言書保管法第9条第1項第2号チの政令に定める者については、法務局における遺言書の保管等に関する政令第7条に、遺言書保管法第9条第1項第3号トの政令に定める者については、法務局における遺言書の保管等に関する政令第8条に規定されています。

4 遺言書の検認手続の不要

・遺言書保管書に保管されている遺言書については、家庭裁判所における検認(民法第1004条第1項)が不要です(遺言書保管法第11条)。

 このように、今回の遺言書保管法では、自筆証書遺言に係る遺言書の上記問題点について一定の解決策が設けられていることが分かります。

 もっとも、同制度は、自筆証書遺言書の内容の正確性や、遺言者の遺言能力まで担保するものではありません。

 自筆証書遺言を預かる遺言書保管書(法務局)では、遺言の内容について確認をすることはなく、相談に応じることもありません。あくまで、本人確認(遺言書保管法第5条)や、遺言書の方式について外形的な確認(書式、日付及び氏名の自署、押印の有無等)を行うにとどまります。

 したがって、相続開始後の紛争の防止という目的を達成するためには、今回の遺言書保管法に基づく制度が開始された後も、遺言の作成を検討される方におかれましては、一度専門家にご相談されることをおすすめ致します。

(自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧)

申請・請求の種別 申請・請求者 手数料
遺言書の保管の申請 遺言者  一件につき,3900円
遺言書の閲覧の請求(モニター) 遺言者 
 関係相続人等
 一回につき,1400円
遺言書の閲覧の請求(原本) 遺言者
 関係相続人等
 一回につき,1700円
遺言書情報証明書の交付請求 関係相続人等  一通につき,1400円
遺言書保管事実証明書の交付請求 関係相続人等  一通につき,800円
申請書等・撤回書等の閲覧の請求 遺言者
 関係相続人等
 一の申請に関する申請
 書等又は一の撤回に関
 する撤回書等につき,
 1700円

(法務省HPより http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00010.html

(文責:三村雅一)

2020年07月17日 19:39|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

公益通報者保護法の改正について

令和2年6月8日、公益通報者保護法の一部を改正する法律が成立し、同月12日に公布されました。この法律は、公布の日から2年以内に施行されます。
本改正により、企業においては、内部通報制度の構築や、すでに構築済みの内部通報制度のアップデートが必要となる可能性がありますので、法及び改正の概要について、以下で解説します。

1.公益通報者保護法の概要
(1)適用例
ある会社の従業員であるAは、偶然、自社の商品が、食品衛生法の定める基準を満たさないまま販売されていることを知りました。Aは慌てて、勤務先が社内に設けている通報窓口に、その内容を伝えたのですが、直後、会社から解雇処分を言い渡されてしまいました。
このような場面において、Aの解雇処分は無効であることを定めるのが、公益通報者保護法です。すなわち、この法律は、「公益通報」を行った労働者が、公益通報を行ったことを理由とした解雇等の「不利益な取扱い」を受けることを禁止しています。

(2)公益通報とは
公益通報とは、①労働者が、②労務提供先の不正行為を、③不正の目的でなく、④一定の通報先に通報することをいいます。
このうち、④通報先としては、勤務先や社内ヘルプラインのほか、一定の行政機関、報道機関、労働組合等が想定されています(なお、通報事実の根拠資料の有無等により、通報可能な範囲は異なります。)。

(3)不利益な取扱いとは
労働者が、(2)記載の公益通報をした場合、公益通報をしたことを理由とする解雇は無効です。また、降格や減給、退職の強要等、解雇以外の不利益な取扱いをすることも禁止されています。

2.今回の改正の概要
(1)事業者がとるべき措置
従業員数が300人以上の事業者に対し、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等(窓口設定等)が義務付けられました。また、これに違反する事業者に対しては、公表を含む行政措置が導入されています。
従業員数が300人以下の中小事業者については、必要な体制の整備等は努力義務とされますが、実効性確保のための行政措置は、中小事業者も対象とされています。
加えて、公益通報対応業務従事者に対し、通報者を特定する情報の守秘義務が規定されました。同義務違反は、30万円以下の罰金となります。

(2)保護対象の拡大
通報者として、労働者に加え、退職後1年以内の退職者、及び役員が追加されました。
また、通報対象事実に過料の理由とされる事実が追加されたほか、事業者が公益通報によって損害を受けたことを理由とする通報者の損害賠償責任が免除されました。

(3)行政機関・報道機関等への通報条件の緩和
現行法では、行政機関へ通報を行うためには、通報対象事実の相当の根拠が必要とされていたり、報道機関等へ通報を行うためには、個人の生命または身体に危害が発生していること等が必要とされていたりしましたが、本改正により、これらの要件が一部緩和されました。

3.コメント
以上見てきたとおり、本改正は、公益通報により企業不祥事が明るみに出ることが、国民生活の安心・安全を守り、また企業の自浄作用を促進するとして、労働者が公益通報を行いやすくすることを主な目的として行われました。
企業にとっては、本改正を踏まえて、内部通報制度の構築が必須となる可能性があります。すなわち、一部の事業者については体制整備等が義務付けられたことに加え、外部への通報のハードルが下げられたため、充実した内部通報制度の整備や社内への周知がなければ、不祥事が容易に外部へ告発されてしまう事態も想定されます。通報者の匿名性の確保についても、事前の検討が必要です。
また、すでに内部通報制度を整備している企業であっても、本改正を踏まえ、関係規程等を再度見直す必要があります。

当事務所においては、内部通報対応業務、内部通報に関する諸規定の作成や見直しについて取り扱っています。内部通報制度の構築についてご検討の場合は、https://www.swlaw.jp/contact/ にお問い合わせください。

(文責:和田眞悠子)

2020年07月13日 12:47|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

民法改正に伴う個人保証の保護の拡充(1)

2020年4月1日から改正民法が施行されています。
この改正民法の施行に向けて契約書のレビューのご依頼を頂くことが多くありました。
今回は、改正民法における、個人保証の保護の拡充について紹介します。

改正民法においては、保証人が個人である全ての根保証契約について、極度額の定
めを設けない場合には、当該保証契約の効力が生じないとされました。(民法第465条
の2第2項)
これは、保証人となる時点では,現実にどれだけの債務が発生するのかがはっきりし
ないなど、どれだけの金額の債務を保証するのかが分からないケースにおいて、保証
人の予測可能性を確保し、保証人が予想外の責任を負うといったトラブルを防止する
ことを目的とした改正です。
民法第465条の2第1項では、同項の対象となる保証契約について、「一定の範囲に属
する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」であって、「保証人が法人でないも
の」と定められています。この点、後者については、文言から明確ですが、前者につい
てはどのような契約が該当するのでしょうか。
法務省のパンフレットによると
、「(1)子どもがアパートを賃借する際に、その賃料などを大家との間で親がまとめて
保証するケース、(2)会社の社長が、会社の取引先との間で、その会社が取引先に
対して負担する全ての債務をまとめて保証するケース、(3)親を介護施設に入居させる
際に、その入居費用や施設内での事故による賠償金などを介護施設との間で子ども
がまとめて保証するケース」という3つのケースが例として紹介されています。
これに照らすと、賃貸借契約や継続的な取引契約など非常に多くのケースが民法第
465条の2の対象となり、「極度額の定めを設けない場合には、当該保証契約の効力が
生じない」こととなるため注意が必要です。
ちなみに、国土交通省の公表している賃貸住宅標準契約書における連帯保証人の条
項は以下のように修正されています。

——————————————————————————–

「(連帯保証人)
第 17 条 連帯保証人は、借主と連帯して、本契約から生じる借主の債務を負担するも
のとする。本契約が更新された場合においても、同様とする。
2.前項の連帯保証人の負担は、頭書及び記名押印欄に記載する極度額を限度とす
る。
3.連帯保証人が負担する債務の元本は、借主又は連帯保証人が死亡したときに、確
定するものとする。
4.借主は、連帯保証人に対して、本契約に先立ち、下記の事項について正確な情報
を提供し、連帯保証人は同情報の提供を受けたことを確認する。
(1)借主の財産及び収支の状況
(2)主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

(3)主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その
旨及びその内容
5.連帯保証人の請求があったときは、貸主は、連帯保証人に対し、遅滞なく、賃料及
び共益費等の支払状況や滞 納金の額、損害賠償の額等、借主の全ての債務の額等
に関する情報を提供しなければならない。」

——————————————————————————–

なお、極度額の定め方については、今後の事例の集積を待つ必要がありますが、保
証人の予測可能性を確保するという改正の趣旨に照らせば、出来る限り特定すること
が望ましいと考えられます。
また、極度額の相場について、国道交通省から、「極度額に関する参考資料」が公表
されていますのでご参照ください。

改正民法の施行後である2020年4月1日以降に締結される賃貸借契約において保証
の定めを設ける場合には、当然極度額の定めを置かなければ保証契約の効力は生じ
ませんが、既に締結している賃貸借契約における連帯保証の条項は改正民法施行後
も有効なのか、同契約が更新される場合にはどうなのか、といった問題は残ります。こ
れらの点については、次回以降検討したいと思います。

当事務所では、契約書のレビューをスポットでご依頼頂くことも可能です。
ご遠慮なくお問い合わせ下さい。


(文責:三村雅一)

2020年05月18日 09:35|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

緊急事態宣言と休業手当

新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言が出されたことに伴い、企業では、さまざまな対応をされていることと思います。従業員に関しては、テレワークの導入及び拡大や(当事務所でも、全面的にテレワークを導入しています。)、それにとどまらず、従業員の解雇や自宅待機等に踏み切るケースも散見されます。

従業員を自宅待機とした場合に、休業手当を支払う必要があるのでしょうか。

労働基準法第26条では、次のように定められています。

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」

したがって、自宅待機とする場合についても、「使用者の責に帰すべき事由」か否か、すなわち、自宅待機とする理由・原因によって、休業手当の支払義務の有無が異なることになります。

では、緊急事態宣言が出され、休業を要請された事業を運営する会社や、休業要請の対象ではないものの事業を自粛している会社において、従業員を自宅待機させた場合には、休業手当の支払義務はあるのでしょうか。

この点について、弁護士の方が書かれているネット記事等を見ていると、あくまで自粛であることを理由に、使用者側の帰責事由であるとして休業手当の支払義務があるとする考え方、安全に勤務させることができない状況にあること等を理由として使用者側の帰責事由ではなく休業手当の支払義務がないとする考え方など、さまざまな意見があるようです。

ちなみに、厚労省のウエブサイトでは、「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。」と記載されています(他にも説明がありますので、ご興味があれば、一読されることをお勧めします。)。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-4

日本は、三権分立で司法権が独立していますので、最終的には、裁判所の判断を待つことになりますが、企業の状況(テレワークに適した業態か、テレワーク採用の努力をどの程度行ったか等)に応じた、ケースバイケースの判断にならざるを得ないと考えられます。当事務所においても、クライアントからのご相談に対し、個別の状況に応じたアドバイスをさせていただいています。

いずれにせよ、雇用調整助成金の活用や、従業員との十分な対話等を通じ、少しでも、各企業が現在の困難な状況を乗り越えて、成長を続けられることを祈念しています。

(文責:藤井宣行)

2020年04月23日 17:08|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に伴う大阪・神戸での裁判期日について

令和2年4月7日、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が発出されました。

これに伴い、現時点(令和2年4月8日現在の情報)で、大阪、神戸の裁判所における期日(口頭弁論期日、弁論準備手続期日、和解期日、調停期日、審判期日及び調査期日等)について、下記の取り扱いが発表されております。当職のもとにも、順次、4裁判所から期日取り消しの連絡が入っています。

大阪、神戸以外の関西圏の裁判所については現時点では期日取消し等の発表はなされていないようですが、今後どのような期日運用となっていくのかについても注視していく必要があります。

【大阪地方裁判所】
大阪高等・地方裁判所、大阪地方裁判所堺支部、大阪地方裁判所岸和田支部及び大阪地方裁判所管内の全ての簡易裁判所において、令和2年4月8日から5月6日までの間に指定されている民事訴訟事件及び人事訴訟事件の期日は全て取り消されました。

【大阪家庭裁判所】
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、政府から大阪府を対象地域とする緊急事態宣言が出されたことを受けて、本日(4月8日)から5月1日までの間、大阪家庭裁判所(支部を含む。)の家事事件(人事訴訟事件を含む。)の期日を原則として取り消すこととしましたので、お知らせします。
なお、期日を取り消した事件については、裁判所から順次通知させていただいているところです。
また、即日審判及び家事手続案内(夜間を含む。)についても、同期間中これを中止します。

【神戸地方裁判所及び神戸家庭裁判所】

4月9日(木)から5月1日(金)までの間、神戸地方裁判所及び神戸家庭裁判所(支部・簡裁・出張所を含む。)において指定されている期日等については、緊急性のあるものを除き、取り消しました。

文責 河野雄介

2020年04月09日 17:58|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

義援金と課税関係

今年の7月18日、京都アニメーションで放火事件が発生しました。その背景等については、今でも、いくつもの報道がされています。本ブログでは、この件に関する税金の問題を、少し検討してみたいと思います。

 

2019年9月6日付の京都新聞電子版では、事件の被害者及び遺族に対し、世間から寄付された金銭について、義援金制度を設けることによって、「・・・受け取った義援金は非課税となるため、集まった善意のお金は全て被害者と遺族の手元に届く。」、「寄付した側は、個人なら2千円以上の寄付で所得税や住民税の控除を受けられ、法人も寄付額全額が損金に算入可能となる。」と記載されていました。

https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20190906000054

これは、どのような法的根拠に基づくのでしょうか。

 

 

今回、新たに設けられた義援金制度を検討する前提として、当該制度がない場合には、どのようになるのでしょうか。

 

まず、寄付をした側について検討します。

今回のケースであれば、一般の寄付金として、当該法人の事業年度において資本金等に応じて設定される損金算入限度額を超過した部分は損金に算入することができません(法人税法37条1項等)。

個人が寄付をした場合には、本件のようなケースでは必要経費等として収入金額等から控除することができません。

 

次に、寄付を受けた被害者及び遺族については、義援金制度(以下「本件制度」といいます。)創設後の課税関係とまとめて後述します。

 

 

では、本件制度では、どのようにして、税法上の優遇措置を実現しているのでしょうか。

 

寄付をした法人についてみると、法人税法37条3項に、国または地方公共団体に対する寄付金については、損金に算入することができる旨の規定があり、この規定を活用するようです。すなわち、寄付をした企業(以下「寄付企業」といいます。)から、株式会社京都アニメーション(以下「京アニ」といいます。)という法人に対する金銭の提供ではなく、寄付企業から京都府に対する金銭の提供というスキームを採用しています。本件制度開始前に、すでに、京アニの口座に送金されたものについては、一定の手続をすることで(詳しくは京アニのウェブサイトを参照ください。http://www.kyotoanimation.co.jp/information/?id=3096)、単に京アニが一時的に預かっていたものであり、経済実態としては当該預り口座内の金銭は京アニには帰属していないという考え方だと思われます。

 

寄付をした個人についてみると、所得税法78条1項に、個人が特定寄附金(国または地方公共団体に対する寄附金(同法78条2項))を支出した場合で、当該支出が2000円を超える場合には、当該超過金額を総所得金額等から控除する旨の規定があり、この規定を活用することになります。

こちらも、すでに京アニ口座に送金されているものについては、法人が寄附金を支出した場合と同様、京アニへの寄付ではなく、京アニの預り口座を活用した京都府への金銭の提供というスキームを採用していることがポイントです。京アニへの金銭の提供になってしまうと、寄付された金銭が京アニの益金に算入され法人税の課税対象となりますし、寄付した側も、上記のような制度を活用できなくなるからです。

 

 

では、寄付を受けた被害者及び遺族については、いかがでしょうか。

所得税法9条1項では、非課税所得について多くの事項を規定しますが、その中に、「・・・その他の政令で定めるもの・・・」との規定があり、これを受けた所得税法施行令30条3号では、「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金」を非課税としています。

京アニ等が公表している内容を見ると、本件では、これに該当するとして、被害者及び遺族が受け取られた金銭が非課税所得になると考えられているようです。この点、本件において寄附された金銭が「見舞金」に該当することについては、異論の余地がなさそうです。もっとも、見舞金であったとしても、非課税所得となるためには、「相当の」見舞金であることが必要となります。本件では、京都府において、「その全額について被害の程度等に応じた公平かつ適正な金額による配分を行うための義援金配分委員会を設置する」とのことです。

https://www.pref.kyoto.jp/chiiki/news/higaisyagienkin.html)、

京都府が、当該委員会を設置し、当該委員会で「被害の程度等に応じた公平かつ適正な金額による配分」を決定することから、「見舞金」の相当性を担保されるとの考えに基づくものであると考えられます。

 

ただ、全ての犯罪被害者に対して、「相当の」見舞金とするような措置が採られているわけではないようです。今回の事件が凄惨で痛ましい事件であったことは間違いありませんが、報道されていない、又は被害人数がより少ない事件でも、優遇措置が得られる方がより公平であり、被害者支援にも資するように思います。

 

いずれにせよ、広く社会から行われる善意としての寄付が、犯罪被害者の方及び遺族の方に対し、関係者の誰もが意図しない税負担の生じることなく届く本件制度が円滑に運用されることを祈念します。

(文責:藤井宣行)

2019年09月17日 09:08|カテゴリー:その他||コメントはまだありません

古物営業の許可について(3)

前回前々回と、古物営業法の趣旨や概要、リサイクルショップ、フリーマーケット、バザー、メルカリ等のフリマアプリと古物営業法の関係について紹介してきました。

今回は、平成30年4月25日に公布された古物営業法の概要について紹介します。

第1 はじめに

前回のブログでも紹介したように、古物営業の態様は変化し、内閣規制改革ホットラインには、都道府県単位での許可の見直し(古物営業法第3条第1項、第2項)、営業の制限についての緩和(古物営業法第14条第1項)について要望が寄せられました。

それを受け、警察庁は古物営業の在り方に関する有識者会議を開催し、平成29年12月21日に古物営業の在り方に関する報告書をまとめました。

こういった背景の下、平成30年3月6日に古物営業法の改正案が閣議決定され、同年4月25日には「古物営業法の一部を改正する法律」(以下「新法」といいます。改正前の古物営業法を「旧法」といいます。)が公布されました。

第2 新法の概要

1 都道府県ごとの許可制度について

(1) 旧法下における制度の概要

旧法下の制度では、古物営業を行うためには、都道府県単位での許可を受ける必要があるとされていました(旧法第3条第1項、同第2項)。

(2) 不都合性
前述のとおり、全国展開を図る古物商にとっては、都道府県ごとに許可が必要となることから、時間と費用がかかるという問題がありました。

(3) 新法
新法においては、主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の許可を受ければ、その他の都道府県に営業所等を設ける場合には届け出で足りることとされました(新法第3項第1項)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から2年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条)。

2 営業の制限について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、古物商は、営業所又は取引の相手方の住所等以外の場所で、買受け等のために古物商以外の者から古物を受け取ることができないとされていました(旧法第14条第1項)。
これは、営業所又は取引の相手方の住所等以外の場所において古物の取引をする場合、法に定める各種義務(帳簿記載義務や本人確認義務)の確実な履行が期待できないために設けられた規定です。

(2) 不都合性
百貨店や集合住宅のエントラス等でのスペースを活用したイベント会場での受け取りができないため、古物商にとってはビジネスチャンスが狭まっており、また消費者にとっても古物を売却できる場所の選択肢が狭まっているという問題がありました。

(3) 新法
事前に公安委員会に日時・場所の届出をすれば、仮設店舗においても古物を受け取ることができることとされました(新法第14条第1項但書)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から6ヶ月を超えない範囲内とされました(新法附則第1条但書)。

3 簡易取消し制度について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、所在不明である古物商の許可を取り消すためには、3ヶ月以上所在不明であることを都道府県公安委員会が立証した上で、聴聞を実施する必要がありました。

(2) 不都合性
現在、約77万件の許可件数がある中で所在不明である古物商や、既に廃業しているにもかかわらず返納されていない許可がある一方で、許可を取り消す手続に時間がかかりすぎるという問題がありました。

(3) 新法
古物商等の所在を確知できないなどの場合に、公安委員会が公告を行い、30日を経過しても申し出がない場合には、許可を取り消すことができることとされました(新法第5条第2項、同条第3項)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から2年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条)。

4 暴力団排除について

(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、禁固以上の刑や一部の財産犯の罰金刑に係る前科を有すること等を欠格事由として規定し、該当する者は許可を取得できないとされていましたが、暴力団員は欠格事由として明記されていませんでした。

(2) 不都合性
盗品売買の防止という法目的からは、暴力団排除は当然であるにもかかわらず、暴力団排除が法に明記されていなかったという問題がありました。

(3) 新法
暴力団員やその関係者、窃盗罪で罰金刑を受けた者を排除するため、許可の欠格事由として、「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」(新法第4条第3号)、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの」(新法第4条第4号)が定められました。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から6ヶ月年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条但書)。

(文責:三村雅一)

2018年07月13日 13:46|カテゴリー:その他|タグ: , コメントはまだありません

古物営業の許可について(2)

前回のブログでは、古物営業法が、盗品売買の防止等を図ることを目的とした法律であり、古物営業法はこの目的を達成するために、古物営業を許可制として、種々の規制を加えていることについてお伝えしました。さらに、古物営業法に定められた「古物」とは?「古物営業」とは?ということについても紹介しました。

 

今回は、リサイクルショップ、フリーマーケット、バザー、メルカリ等のフリマアプリと古物営業法の関係について紹介します。

 

第1 リサイクルショップと古物営業法

まず、一般的なリサイクルショップは、買い取った古物を販売するという形態をとるため、「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業」(古物営業法第2条第2項第1号)の「古物営業」に該当することになり、古物営業法の適用を受けることになります。

 

もっとも、無償、または引取り料を徴収して引き取った古物を修理、再生等して販売する形態のリサイクルショップの場合には、(古物の買取りを行わず)「古物を売却することのみを行うもの」(古物営業法第2条第2項第1号)に該当することから、古物営業には当たらず、古物営業法の適用を受けません。

 

第2 フリーマーケット・バザーと古物営業法

バザーやフリーマーケットについては、前回の記事でも解説したとおり、その取引されている古物の価額や、開催の頻度、古物の買受の代価の多寡やその収益の使用目的等を総合的に判断し、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる場合には、古物営業に該当するとされています。(平成7年9月11日警察庁丁生企発104号「古物営業関係法令の解釈基準等について」4頁参照。)

 

もっとも、一体どの程度の取引を行えば、「営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる」のかが問題となります。

 

この点については、平成18年1月31日付経済産業省「特定商取引法の通達の改正について」で、インターネットオークションにおいて、特定商取引法の「販売業者」に該当すると考えられる場合として紹介されている内容が参考になると考えられます。

 

対象となるカテゴリー、商品によって基準は異なりますが、「全てのカテゴリー・商品」について、例えば、以下の場合には特別の事情がある場合を除き、営利の意思を持って反復継続して取引を行う者として販売業者に該当すると考えられるとされています。

①過去1ヶ月に200点以上又は一時点において100点以上の商品を新規出品している場合、②落札額の合計が過去1ヶ月に100万円以上である場合、③落札額の合計が過去1年間に1,000万円以上である場合。

 

なお、平成28年9月14日付のニュースで、「嵐」のコンサートチケットを転売したとして、25歳の女性が古物営業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕されるという事件が起こりました。チケット転売がなぜ古物営業法違反になるのか、この疑問は、正に上で述べてきた内容が回答となります。すなわち、この女性は、2015年11月から12月の間に、3名に対しコンサートチケット5枚を計4回、インターネットの転売サイトで売っていました。それだけではなく、女性はチケット交換サイトでコンサートチケットを入手した後、転売サイトに出品して高値で販売するという手口で、2014年10月から2018年4月までの間に168名に対してチケット299枚を販売し、約1000万円の売り上げを得た疑いがあり、これが、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められたものと考えられます。

 

このように、チケットの転売であっても、その具体的態様に照らし、「古物営業」として、古物営業法の規制の対象となることがあります。

 

 

第3 フリマアプリ、フリマサイトと古物営業法

インターネット上のフリーマーケットアプリやフリーマーケットサイトは、インターネット上において、個人間で直接に物を売買する場を提供するものであり、また、その方法が競りによるものではないため、インターネット上のフリーマーケットアプリやフリーマーケットサイトの運営業者は古物営業法に規定された古物競りあっせん業者には該当せず、法規制の対象外となっています。

 

もっとも、フリマアプリ等で出品をする場合には、第2で紹介した「インターネットオークションにおいて、特定商取引法の「販売業者」に該当すると考えられる場合」を参考にする必要があり、「営利目的で反復継続して古物の取引を行っている」と認められた場合には、古物営業法の許可が必要となることにご注意ください。

 

この点、古物営業法規制の対象外となっているとはいえ、現在のメルカリ等のフリマアプリにおいては、「盗品売買の防止」等の観点から、利用者には厳格な本人確認を要求するなど、古物営業法の趣旨を踏まえた自主ルールを作成し取り組みを強化しています。

 

なお、個人間の売買を目的としたメルカリではなく、中古品の買取と再販売を想定している「メルカリNOW」については、「古物営業」(古物営業法第2条第2項第1号)に該当することから、古物営業の許可が取得されています。

 

このように、その取引が「古物営業」(古物営業法第2条第2項)に該当するか否かの判断は容易でないため、弁護士等の専門家への相談をおすすめします。

 

次回が古物営業法に関する最終回となります。次回は、「古物営業の在り方に関する有識者会議」ではどのようなことが議論され、古物営業法がどのような方向に向かおうとしているのかについても紹介する予定です。

 

(文責:三村雅一)

2018年06月15日 10:11|カテゴリー:その他|タグ: , コメントはまだありません

古物営業の許可について(1)

第1 はじめに

 

平成29年12月21日、警察庁の有識者会議は、古物営業の在り方に関する報告書をまとめました。

 

同会議では、時代の流れに合わせた古物営業の形態の変化等に伴い、現在のニーズに即した古物営業の在り方について検討が行われました。

 

ところで、皆さんは、「時代の流れに合わせた古物営業の形態の変化」という言葉にピンとくるでしょうか。「古物営業って質屋さんのことじゃないの?質屋さんって減ってるのでは?」という方も多いのではないでしょうか。

 

ところが、「現在のニーズに即した古物営業の在り方」という言葉にもあるように、「古物営業」は現代社会においても我々の生活の一部になっています。たとえば、メルカリ、ヤフオクといったインターネットの発達、古本市場、ブックオフ、コメ兵といった店舗の全国展開によって、我々は容易に中古品を売却し、購入することができるようになりました。このように、時代の流れに合わせた古物営業の形態の変化等に伴い、古物営業法は避けては通れない法律となっています。

 

そこで、今回は、「古物営業法」とはどのような法律なのか、ということについて紹介し、次回以降、メルカリやヤフオク、リサイクルショップやフリーマーケットと古物営業法の関係、そして、「古物営業の在り方に関する有識者会議」ではどのようなことが議論され、古物営業法がどのような方向に向かおうとしているのかについても紹介したいと思います。

 

 

第2 古物営業法とは

 

1 趣旨

 

そもそも、古物営業法とはどういう目的で定められた法律なのでしょうか。

 

この点について、古物営業法は第1条でその目的について、「盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。」と定めています。

 

すなわち、古物商が盗品等の処分先として利用されることが多いことから、盗品売買の防止等を図ろう、というのが古物営業法の目的です。古物営業法はこの目的を達成するために、古物営業を許可制として、種々の規制を加えています。

 

したがって、これから古物営業法に関わる問題を考えていくにあたっては、この古物営業法の目的を念頭においておく必要があります。

 

 

2 どういう時に許可がいるの?

 

それでは、古物営業法は、どのような場合に許可を要すると定めているのでしょうか。

 

(1)「古物営業」とは

 

古物営業法は、第2条第2項において、次の3つの営業を、「古物営業」と定めています。

 

①古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業(例:リサイクルショップ)

 

②古物市場(古物商間の古物の売買又は交換のための市場)を経営する営業(例:古物商のみが参加できる古物売買・交換の場)

 

③古物の売買をしようとする者のあっせんを競りの方法(政令で定める電子情報処理組織を使用する競りの方法その他の政令で定めるものに限る。)により行う営業(例:インターネットオークション(古物営業法施行令第3条)(古物営業研究会著 2訂版「わかりやすい古物営業の実務」14頁、3頁参照)。

 

なお、①については、次の2つの営業形態については規制対象から除外されています。

 

ア (古物の買取りを行わず)古物を売却することのみを行うもの

 

イ 自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの

 

これらが①から除外された理由は、盗品等の混入のおそれが低いためです。

 

アの例としては、無償、または引取り料を徴収して引き取った古物を修理、再生等して販売する形態のリサイクルショップが挙げられます。もっとも、古物の買取を行っている場合には、古物営業に該当することになります。また、いわゆるバザーやフリーマーケットについては、その取引されている古物の価額や、開催の頻度、古物の買受の代価の多寡やその収益の使用目的等を総合的に判断し、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる場合には、古物営業に該当するとされています。(平成7年9月11日警察庁丁生企発104号「古物営業関係法令の解釈基準等について」4頁参照。)

 

イの例としては、AがBに売却した物品をAがBから第三者を介在させずに買い戻すといった行為だけを行うものが挙げられます。

 

(2)「古物」とは?

 

それでは、「古物営業」で取引の対象となる「古物」とは何をいうのでしょうか。

 

古物営業法は、第2条第1項において、

 

① 一度使用された物品

 

② 使用されない物品で使用のために取引されたもの

 

③ これらの物品に「幾分の手入れ」をしたもの

 

を、「古物」と定めています。

 

まず、古物営業法第2条第1項にいう「使用」とは、物品をその本来の用法に従って使用することをいい、衣類についての「使用」は着用、自動車についての「使用」は運行の用に供することをいいます。

 

次に、古物営業法第2条第1項にいう「使用のために取引されたもの」(上記②)とは、自己が使用し、又は他人に使用させる目的で購入されたものをいいます。したがって、小売店等から一度でも一般消費者の手に渡った物品は、それが未だ使用されていない物品であっても「古物」に該当します。例えば、消費者が贈答目的で購入した商品券や食器セットは、「使用のために取引されたもの」に該当するとされています。(平成7年9月11日警察庁丁生企発104号「古物営業関係法令の解釈基準等について」2頁参照。)

 

また、「幾分の手入れ」(上記③)とは、物品の本来の性質、用途に変化を及ぼさない形で修理等を行うことをいい、例えば、絵画については表面を修補すること、刀については研ぎ直すことをいうとされています。(同上)

 

なお、「物品」には、鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手等は含まれますが、船舶、航空機、工作機械等の大型機械類は含まれません。

 

(3)まとめ

 

したがって、(2)に挙げた「古物」を対象とした、(1)の「古物営業」を営もうとする場合には、都道府県公安委員会の許可を受けなければならない(古物営業法第3条1項、2項)ことになります。

 

 

上記の知識を前提として、次回は、メルカリやヤフオク、リサイクルショップやフリーマーケットと古物営業法の関係、そして、「古物営業の在り方に関する有識者会議」ではどのようなことが議論され、古物営業法がどのような方向に向かおうとしているのかについて紹介したいと思います。

 

(文責:三村雅一)

 

2018年05月21日 18:20|カテゴリー:その他, 企業法務|タグ: , コメントはまだありません