ベンチャー法務の部屋

平成22年新司法試験の結果分析

2010.09.11

先の9月9日(木)に、新司法試験の合格発表がありました。

新司法試験の発表も今年で5年目です。今年は、「「4人に1人」の狭き門」(読売新聞)「合格率、最悪の25% 4回連続で低下 合格者数、目標遠く」(毎日新聞)等の合格率が25.41%であり、そもそもの約束(2010年に3000人という閣議決定)を大幅に下回ったという点、「今回、3回目の不合格となった806人が受験資格を失った」(日経新聞)等3回までしか受けられないといういわゆる三振制の是非が話題となりました。ちなみに、既修者の合格率は、37.02%、未修者の合格率は、17.30%でした。

合格者の皆様は、本当におめでとうございます。プロフェッショナルである法律家は、毎日勉強です。これからもずっと勉強です。一緒に、頑張りましょう。

さて、私自身は、個人的な趣味で結果を毎年分析しているので、今年も行いました。折角、このブログをつくりましたので、このブログに掲載したいと思います。

【経年変化】

■ 受験者数は、年々増えている。ただ、増え幅は、減少している。
新司法試験が始まった平成18年は、当然のことながら受験者数自体が少なく、年を経るごとに、受験者数は増加してきました。三振制と5年まで受験可能ということを考えると、あと数年で、受験者数の増加は落ち着くと思われます。

~受験者数の推移~
平成18年 2091
平成19年 4607
平成20年 6261
平成21年 7392
平成22年 8163

■ 合格者数は、この3年間、2000人強で固定されている。

~最終合格者数の推移~
平成18年 1009
平成19年 1851
平成20年 2065
平成21年 2043
平成22年 2074

■ 合格率は年々下がっているが、下げ幅は縮まってきている。
合格率は、平成18年新司法試験の48.25%から落ちてきていますが、年ごとの下落幅は、年々小さくなってきています。受験者数が落ち着くとともに、合格率は下げ止まるでしょう(年2000人程度というラインが変わらない限り)。

~合格率の推移~
平成18年 48.25%
平成19年 40.18%
平成20年 32.98%
平成21年 27.64%
平成22年 25.41%

■ その他
他の傾向としては、全体における未修者の占める割合は、受験者数、合格者数ともに、増えてきています。未修者合格率は、どうしても既修者合格率より低いため、未修者不合格者の方が翌年に回る可能性が高いということが影響しているものとみられます。なお、未修者は、他大学法学部卒業生ということも多く、おそらくは、この
「他大学法学部卒業生」の「未修者コース生」に占める割合が増えているのではないかと推測します。

【今年の大学院別結果】
私は、母数が多い方が有利になるため合格者数を重視せず、合格率で分析しています。今年の大きな特徴としては、慶應義塾大法科大学院の躍進があげられるでしょう。最終合格率で、これまで1位を維持してきた一橋大法科大学院が2位になり、昨年5位だった慶應義塾大法科大学院が1位になりました。一橋大法科大学院は、論文合格率は今年も1位ですが、短答合格率が例年より低かったです。国立大学ロースクール(京都大学法科大学院等)が短答式に弱い傾向は、今年も見られます。実務で必要なのは、論文で試される論理構成力等は勿論ですが、短答で試される基本的な知識も必要です。法律相談で即答しなければならない場面を頭に思い浮かべて、短答の勉強も頑張りましょう(私も択一試験が苦手でしたので、えらそうなことはいえないですが・・・)。

~合格率の大学院別順位~

短答論文最終
1位学習院大法科大学院一橋大法科大学院慶應義塾大法科大学院
2位千葉大法科大学院慶應義塾大法科大学院一橋大法科大学院
3位慶應義塾大法科大学院京都大法科大学院東京大法科大学院
4位北海道大法科大学院東京大法科大学院京都大法科大学院
5位東京大法科大学院中央大法科大学院千葉大法科大学院
6位中央大法科大学院北海道大法科大学院北海道大法科大学院
7位京都大法科大学院千葉大法科大学院中央大法科大学院
8位一橋大法科大学院大阪大法科大学院大阪大法科大学院
9位東北大法科大学院名古屋大法科大学院東北大法科大学院
10位神戸大法科大学院早稲田大法科大学院名古屋大法科大学院

最終合格率のみを見ると、どうしても既修者の割合が高い大学が有利になってしまいます。たとえば、早稲田大学はほとんどの受験者が未修者ですので(未修合格者数では2位の大阪大法科大学院・慶應義塾大法科大学院の44人の3倍近い125人)、最終合格率は低めに出てしまいます。しかし、未修者の合格率を見ても慶應義塾大法科大学院は、1位ですので、今年は躍進したと言って間違いないと思います。

最終合格率既修合格率未修合格率
1位慶應義塾大法科大学院一橋大法科大学院慶應義塾大法科大学院
2位一橋大法科大学院京都大法科大学院千葉大法科大学院
3位東京大法科大学院東京大法科大学院北海道大法科大学院
4位京都大法科大学院慶應義塾大法科大学院東北大法科大学院
5位千葉大法科大学院名古屋大法科大学院大阪大法科大学院
6位北海道大法科大学院大阪大法科大学院早稲田大法科大学院
7位中央大法科大学院中央大法科大学院愛知大法科大学院
8位大阪大法科大学院山梨学院大法科大学院名古屋大法科大学院
9位東北大法科大学院北海道大法科大学院金沢大法科大学院
10位名古屋大法科大学院千葉大法科大学院東京大法科大学院

注: 既修合格率の算出において、合格者が1桁の法科大学院は排除しています。

未修合格者数
1位早稲田大法科大学院125
2位大阪大法科大学院44
3位慶應義塾大法科大学院44
4位東京大法科大学院40
5位中央大法科大学院34
6位名古屋大法科大学院34
7位明治大法科大学院34
8位北海道大法科大学院23
9位九州大法科大学院18
10位東北大法科大学院18
11位金沢大法科大学院16
12位京都大法科大学院16


今年の結果を見る限り、未修者にとっては、千葉大法科大学院や北海道大法科大学院、大阪大法科大学院等は、お薦めかもしれません。既修者は、1位から8位までが合格率50%以上です。1位の一橋大でさえ、66%は超えていません。上位校の既修者でも半分以上受かるが3分の2は受からない試験になったと言えます。

受験者のみならず、多くの法科大学院関係者も結果についての様々な感想があるかと思います。この結果を踏まえて、さらによい教育を提供しようと努力されていることもあると思います。ただ、やはり全体を見ていて思うのは、流石に法科大学院の数が多すぎるのではないかということです。受験者数が100人を超えているのに、合格者数が1桁の法科大学院の数は、決して少なくありません。これは関係者皆にとって、望ましい状態ではないように思います。問題の所在も多岐にわたり、解決も一筋縄ではいかないことは十分に承知しております。しかも、私は、この問題の解決に携わっているわけでもなく、偉そうにものを言える立場でもないです。ただ、法曹の世界の一員としては、法科大学院の存在が社会にとって有意義であると認知してもらい、且つ法科大学院の生徒が納得のいくような状態になること切実に願っています。

執筆者
S&W国際法律事務所

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