ベンチャー法務の部屋

近代化の歴史とIT技術

2011.01.13

昨晩、ある方から、ある記事を紹介していただきました。この記事が非常に興味深かったので、お伝えさせていただきます。

何が一番近代的か?
 いまの生活をさして近代的生活という。考えてみると、近代化とは、スピード化と不精化である。からだを動かさずに早くすませることを追求してきたのが、近代化の歴史といえよう。
 この伝でいけば、○○などまさに近代化の権化みたいなものである。動かずに、しかも即刻に、こちらの意志を遠くの人に伝えられる。
 社会近代化がこれからますます進められるとすれば、○○はそれにもまして要求されるにちがいない。


さて、○○には、何が入るでしょうか。












答えは、「電話」です。実は、この記事、昭和40年(1965年)のサンデー毎日のコラム記事です。いまから46年前の記事なのです。いまでは、「携帯電話」や「インターネット」を入れても、いささか時代遅れのような感じがします。

この記事に続く内容も、非常に興味深いです。

7年後には5人に1本
(中略)
 そこで公社は、新しい年を迎えて、”近代化”の覚悟を、さらに強めている。
 40年度中では、約100万台の電話が増設される。41年度はさらに大巾に増やす予定だ。
 こうして、47年度には加入電話をいまの約3倍、2100万にまで拡張して、5人に1本ぐらいの割合にし、またダイヤル即時網も完成させて、”申込めばすぐひける電話、全国どこへでもすぐつながる電話”を実現しようと計画している。

楽しい計画もいっぱい!
 そのほか、さらに、機動性を盛った計画もたくさんある。
 たとえば、走る自動車から自由に電話がかけられる自動車電話もその1つ。また、加入電話から、通行中の人を呼び出すことのできるポケットベル・サービスも近い将来のこと。007のボンド君に代わって、”うちの父ちゃんの番号は816(やどろく)”などということも起こりうる。


わずか46年前の雑誌のコラムですが、いろいろと時代を感じるものがあります。

まず、「公社」は、いまでは存在しません。ここでいう「公社」とは、電電公社(日本電信電話公社)を意味します。後に、80年代に民営化されて、今のNTT(日本電信電話株式会社)になりました。民営化する前ではありますが、社会インフラ整備への投資の他に、新しい技術やサービスの開発といった今でいうベンチャー精神に溢れる新規事業へのチャレンジが旺盛であったことが伺えます。

次に、昭和40年には、加入電話が約700万台あったものの、全世帯に普及していたわけではなかったこともわかります。同じ昭和40年の白黒テレビの普及率が90%であったのと比べると、電話の普及は、テレビの普及より遅かったようです。個人的には、非常に意外でした。また、この記事から、既に日本の人口が1億人程度であったこともわかります(総務省の資料によると、昭和40年の日本の総人口は、9920万人です。)。おそらく「5人に1本」というのは、1家庭に1つの電話回線という意味があったのだろうと推測します。

さらに、この5年後の1970年には大阪で万博があり、携帯電話やテレビ電話が披露されていたことを思うと、高度成長期の勢いということも感じます。いまのIT環境の原型は、既にこの時代にあったと言えるかもしれません。

ちなみに、最後の「やどろく」とは、「宿六」と書くようでして、「宿の碌でなし(ろくでなし)」の略で、『宿』は妻が夫のことを他人に言う際に使う俗称であり(現代だと『あの人』『うちの人』など)、つまり、宿六とは仕事をしない甲斐性なしの夫など、ろくでなしな夫を妻が他人に罵る際に使う言葉である、とのことです(日本俗語辞書より)。

この記事と同じ号の内容には、吉永小百合が成人式を迎え、田中角栄が自民党幹事長で、長嶋茂雄が2400万円で球界年俸ナンバーワンで、ダライ・ラマが残酷極まりないチベットの専制君主から流浪の民になったといった趣旨の記事があったとのことです。時代が変われば、尺度が変わり、物の見方が変わるものですね。

執筆者
S&W国際法律事務所

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