ベンチャー法務の部屋

ベンチャー企業のCFOとは

2010.12.08

昨日から、Infinity Ventures Summit 2010 Fall Kyoto というイベントに出席させていただき、貴重な話をたくさん聞かせていただきました。

昨日は、数多くの面白く、且つ勉強になる話をお聞きすることができました。その中で、CFOについてのセッションがありましたので、少しお話させていただきたいと思います。

7日のセッションの中に、「ビックベンチャーを目指せ! – CFOトーク」というテーマで、田中敦史さん(イー・モバイル株式会社 常務執行役員兼CFO)、青柳直樹さん(グリー株式会社 取締役執行役員CFO 事業開発本部長)、Jay Chang さん(KongZhong Chief Financial Officer)、小泉文明さん(株式会社ミクシィ 取締役兼経営管理本部長 CFO)の皆様がスピーカーとしてご登壇され、モデレーターとして、岩瀬大輔さん(ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長)が議事を進行されたセッションがありました。

基本的な問題意識として、「日本のベンチャーは「コーポレート・ファイナンス」っぽいワザを活用することで成長を加速させることが上手にできていないのではないか?」というKey Questionが提示されていました。

スピーカーの皆様は、いずれも投資銀行出身の方々であり、幅広いファイナンス関連の人脈と極めて高い能力をお持ちの方々です。必ずしも一朝一夕にまねできることばかりではないですが、非常に参考になる話が数多くありましたので、まとめてみたいと思います。

・まず、CFOの一番重要な仕事は、CEOとのコミュニケーションである。
・CEOがビジョンを軸に良い絵(成長ストーリー)を書いていくのに対し、CFOは、エクセルのスプレッド・シートに落とし込み、投資家等に説明できるようにし、CEOをサポートするのが役割。
・CFOは、お金を調達し、そのお金によって人を採用し、その人が新たなモノやサービスを生み出すことで、収益を得るというサイクルを回す役割。
・(ビック・ベンチャーを目指すのであれば、(そうでなくても?))どんな会社でも金融っぽい人は必要。金融機関出身の人は、(意外と)スタート・アップやベンチャー企業等の 事業会社のCFOになりたいと思っている人は少なくない。ただ、普通の人材紹介会社等を経由しているのでは、見つからないだろう。
・日本で資金調達は厳しいと言われるが、そうはいっても良いビジネス・プランと良いチームには、お金はつく。
・IPOを考えているのであれば、CFOが証券会社側の(セクションごとの)論理を理解し、交渉することが重要。
・ファイナンスに際しては、二の手、三の手を用意してこそCFO。
・年上の社長と年下のCFOという組み合わせは結構あり。但し、CFOがきちんと意見できることが条件。
・ファイナンスするにも順序がある。まず、どこを攻めるかという視点。その後は、人脈等をフル活用して広げていく。
・国内の投資家しかしらないので、小規模なファイナンスになってしまっているベンチャー企業は少なくないのではないか。投資家へのアプローチを知らないことによって、ファイナンスが小規模になってしまっているケースはもったいない。
・新株発行(エクイティ・ファイナンス)と借入(デット・ファイナンス)は根本的に出資者の要求事項が違うので、それに応じた見せ方、契約が必要となる。 新株発行(エクイティ・ファイナンス)では、高い成長ストーリー、借入(デット・ファイナンス)では、つぶれないことが重要なので、ベンチャー企業的には、借入(デット・ファイナンス)の方が難しいことも少なくない。
・CFOは、CEOのやろうとしていることに、ブレーキをかけてはならない。リスクをとらないことがリスクとなることもあるため、CEOのやろうとすることを後押し し、間違えたのであれば元の道に戻って来れるようにするのがCFOの役割ではないか。ある意味、リスクテイクしている方がコントロールできる。

私は、この中で、「CFOの一番重要な仕事は、CEOとのコミュニケーション」という話と、「 CFOは、CEOのやろうとしていることに、ブレーキをかけてはならない。」という点が印象的でした。後者については誤解を招きやすい表現かもしれないので、念のために申し上げますと、決して暴走する(資金的な、キャッシュフロー的な裏付けのない目標に向かう)CEOに対して、ストップをかけてはならないということではないと思います。CEOがとろうとするリスクを、横から冷静に判断して、CEOに適切なリスクをとらせるということです。

このスピーカーの中で、イー・モバイル株式会社は、これまでに6100億円も調達している会社であり(詳細については、「挑戦する経営―千本倖生の起業哲学」
をご参照ください。)、文字通り桁違いの調達金額です。ただ、他の会社も非常に時機に適したファイナンスを敢行されており、それが上手く事業に結びついているように思います。

執筆者
S&W国際法律事務所

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