ベンチャー法務の部屋

ベンチャー企業の栄光と挫折を知ること

2010.10.19

以前、「営業黒字化と社長の心理」と題するエントリーで、NHK教育の「仕事学のすすめ」という番組を紹介させていただきました。先週木曜日、この番組で、DeNA社の南場智子社長特集の第2回が放映されていました。

テーマは、リクルーティングでした。”エンジニア”が同社のビジネスにとってはエンジンそのものであることを強く自覚していらっしゃる南場社長は、人が本当に重要であることを理解しておられ、リクルーティングや、入社後も優秀な人材を引き付けておくことを非常に重要視されていました。

その中で、南場社長が当時大手システム・ベンダー企業にいた茂岩さん(現、同社システム統括本部IT基盤部部長)という方を口説くシーンが印象的でした。というのも、当時社員数名の会社に勧誘するために、耳障りの良いことばかり伝えるのではなく、酸いも甘いも全てを伝えて、それらを理解してから来てもらうという姿勢だったからです。

このリクルーティングの際に、南場社長が茂岩さんに対して、”ベンチャーの世界っていうのはこんな世界なんだよ”ということを伝えるために渡した本が板倉雄一郎さんの『社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由』でした。

この本は、知る人ぞ知るベストセラーです。日本で、ここ数年でおよそ「成功したベンチャー企業の社長」と呼ばれている方のほぼ全てが読んでいるのではないでしょうか。

日本には、成功したベンチャー企業の社長の本は、沢山売っています。古くは、松下幸之助さんを始め、新しいところでは、孫さんや三木谷さんも、出しています。外国の社長の本も少なくありません。しかし、失敗した社長がその失敗を冷静に振り返ってその顛末を記している本は、なかなか見つけることができません。そもそも、成功して失敗するためには、有る程度成功しなければなりませんが、それに到達する人は少ない上、自らの失敗と向き合って、それを執筆して、出版すると言う作業は、並みの精神力ではできないからだと思います。その意味で、この本は非常に貴重な本です。まさに、ベンチャーの世界の栄光と挫折が記されている本であり、だからこそ南場社長もリクルーティングの際に、使われたのだと思います。

エントリー「営業黒字化と社長の心理」でもお伝えしたように、『社長失格』を読んで、「○○という判断がいけなかったんだ」という批判をするのは、それほど難しいことではありません。確かに、この本には、社長としてやってはいけなかったことが多く登場します。ただ、この本への感想が批判だけではもったいないように思います。もし自分が同じ状況に置かれた場合、どのような判断をするかといった視点や、社長としてやってはいけないことは何かと考えることは、起業を志す方や現在中小・ベンチャー企業の社長をされている方には大変有益ではないでしょうか。

ちなみに、著者の板倉さん自身が、失敗を踏まえて、後輩の起業家にむけて、「やるべきではないこと」をメッセージとして残しています。『失敗から学べ!「社長失格」の復活学』です。こちらも、有益な本です。

P.S.  『社長失格』は、近々iPhoneやiPadにて、電子書籍として購読可能となる予定ということですので、そちらでご購読いただいてもよいかもしれません。

執筆者
S&W国際法律事務所

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