ベンチャー法務の部屋

下請代金支払遅延等防止法

日本政府は、新型コロナウイルスに関連する各種の財政政策を行っていますが、過日、約300兆円ともいわれる巨額の財源の一部として、消費税率の引き上げが議論されているとの記事を目にしました。消費税率の引き上げに関しては、平成26年(2014年)4月に5%から8%、令和元年(2019年)10月に8%から10%に引き上げられました。

これに関し、中小企業及び事業者等が、消費税率の引き上げに伴う負担を大企業等に転嫁できない事態が生じることを防ぐため、平成25年(2013年)10月1日付けで消費税転嫁対策特別措置法が施行されました。同法では、大規模小売事業者等による転嫁拒否等の禁止等が規定されていました。そして、同法は、令和3年(2021年)3月31日限りで、その効力を失うこととされてます(同法附則第2条第1項)。
では、同法の失効に伴い、同法で禁止されていた大規模小売事業者等による転嫁拒否等は、適法になるのでしょうか。

この点に関し、公正取引委員会は、令和3年1月7日、「消費税転嫁対策特別措置法の失効後における消費税の転嫁拒否等の行為に係る独占禁止法及び下請法の考え方に関するQ&A」を公表しました。
https://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/tenka-shikko-QandA.html

同Q&Aでは、「同法の失効後においても,取引上優越した地位にある事業者が,その地位を利用して,取引の相手方に対して消費税の転嫁拒否等の行為を行う場合は,優越的地位の濫用として私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)上の問題となり得る。また,資本金の額及び取引の内容から,下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号。以下「下請法」という。)の対象となる場合において,発注者である親事業者が,取引先である下請事業者に対して消費税の転嫁拒否等の行為を行うことは,下請法上の問題となり得る。
 このため,消費税転嫁対策特別措置法の失効後においては,消費税の転嫁拒否等の行為に係る独占禁止法違反行為及び下請法違反行為に対し,厳正に対処することとしている。」とされており、注意が必要です。

なお、下請法については、業務上、ご相談等を受ける機会が多くありますが、下請法の適用の有無について、資本金の額で判断することは多くのご担当者がご存知であるものの、限定された契約類型についてのみ下請法が適用されることについては、意外に知られていないことがあります(一般に、純粋な売買契約には下請法の適用がない等)。
当事務所では、下請法に関する社内セミナーの実施や、社内で活用していただくための下請法チェックリストの作成、提供等も行っていますので、ご興味をお持ちの方は、是非とも、お声がけください。

執筆者
藤井 宣行
マネージング・パートナー/弁護士

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