ベンチャー法務の部屋

ベンチャー・ファイナンスに関連する用語の整理(その1)

ベンチャー・ファイナンスに関連して、「用語の意味がわからない(ので、こっそり会議中にググりました)」等の意見や感想を耳にすることが少なくありません。

そこで、思いつく範囲で、ひとまず、私に分かる範囲で、ベンチャー・ファイナンスに関連する用語を解説しようと思います。
なお、個人的な印象が入る上に、厳密な定義とは異なるかもしれませんが、そのあたりはご容赦いただければと思います。(誤解などについて、ご指摘いただければ、幸いです。)

ひとまず、順不同です。

 

1.ベンチャー投資
ベンチャー投資とは、ベンチャー企業に対する投資のことです。ベンチャー企業に対する投資において、もっともな重要な点は、「投資」であり、「融資」ではない点にあります。
ベンチャー企業は、借入をする場合(=銀行や政府系金融機関等からの「融」資を受ける場合)もありますが、ベンチャー企業が担保にできる資産を保有しているケースは稀であり、元本の一部と利息を支払いながら経営するには不向きなビジネスモデルであることも少なくありません。
一方、株式を発行して資金を調達すること(=「投資」を受けること)で、返済義務を負わなくて済むため、資産に乏しく、初期に開発が先行するタイプのビジネスモデルのベンチャー企業は、投資家から「投資」を受けることが多いです。

そのため、ベンチャー企業は、ベンチャー・キャピタルや事業会社、個人投資家に、自らに「投資」をしてもらうために、技術力やチームメンバー、事業戦略、事業への情熱、自社が発展することで解決される問題等をアピールして、将来性があり、企業価値が高いことをアピールすることになります。投資家側は、このアピールを受けて、投資に値すると判断した企業に投資します。
 

2.Exit(イグジット・エグジット)
Exitとは、投資資金の回収のことです。ベンチャー企業に投資した投資家は、どのように利益を上げるかについて、 保有している株式を売却することを想定しています。そして、株式の売却の方法は、金融商品取引所への上場(IPO)による場合と、M&Aによる場合があります。

なお、投資家が投資資金を回収する手段として、理論上は、配当が考えられます。しかし、実務では、配当を狙って、ベンチャー企業に投資をする投資家はほぼいません。利益が潤沢に有り、且つ、再投資するよりも配当(投資家に還元)した方がよい企業は、極めて少ないためです。
 

3.IPO(アイ・ピー・オー)
IPOとは、株式が金融商品取引所へ上場することです。Initial Public Offeringの頭文字をとったものです。
 

4.VC(ブイシー・ヴィーシー)
VCとは、ベンチャー・キャピタルのことです。ベンチャー・キャピタルは、ベンチャー企業への投資に特化したファンドであることが多いです。法的には、投資事業有限責任組合です。投資事業有限責任組合に関する法律に基づく組合であり、英語表記では、LPS(Limited Partnershipの略)と表現されることがありますが、実際には「ファンド」と呼ばれていることが多いように思います。

ベンチャー・キャピタルは、ベンチャー・キャピタルを運営する専門の会社によって、運営されていることが多く、その会社をGP(ジー・ピー。無限責任組合員。General Partnerの略)といいます。そして、ベンチャー・キャピタルのファンドに投資している投資家をLP(エル・ピー。有限責任組合員。Limited partnerの略)といいます。

ベンチャー・キャピタルから投資を受けたいベンチャー企業は、このベンチャ・キャピタル側の事情もよく理解しておいた方がよいかもしれません。特に、LPに、どのような投資家がいるのか、金融機関なのか、事業会社なのか、等は、重要なVC選択の要素です。

ベンチャー企業にとっては、VC側の担当者が誰であるのか、面倒をどのくらいみてくれるのか、その裏返しとして、どのくらい干渉してくるのか、という点も、選択に際しては、重要です。
 

5.エンジェル
エンジェルとはベンチャー企業に投資する、又は投資しようとする個人投資家のことです。個人であるため、個人的信頼関係で出資することも少なくなく、ベンチャー企業の成長の初期段階での投資が多いです。ベンチャー企業からの目線でいえば、信頼できる個人であるか、将来紛争にならないか、に加えて、必要以上にシェアを確保しようとしていないか等の観点も重要です。もし個人投資家が、1~200万円等の低額の出資で、貴社の10%以上のシェアをとろうとするのであれば、将来のファイナンスに悪影響を及ぼす可能性があることに、十分に留意する必要があります。
 

今回はここまでとし、次回以降、他の用語にも適宜言及したいと思います。

執筆者
S&W国際法律事務所

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