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ベンチャー法務の部屋

ベンチャー企業(非上場企業)におけるCOVID-19(新型コロナウイルス)に対応するための株主総会運営について

1 はじめに
COVID-19(新型コロナウイルス)への対応について、現時点で、政府・厚生労働省は、下記の要請等があります。

令和2年2月20日(抜粋)
イベント等の主催者においては、感染拡大の防止という観点から、感染の広がり、会場の状況等を踏まえ、開催の必要性を改めて検討していただくようお願いします。なお、イベント等の開催については、現時点で政府として一律の自粛要請を行うものではありません。
また、開催にあたっては、感染機会を減らすための工夫を講じていただくようお願いいたします。例えば、参加者への手洗いの推奨やアルコール消毒薬の設置、風邪のような症状のある方には参加をしないよう依頼をすることなど、感染拡大の防止に向けた対策の準備をしていただくようお願いいたします。

令和2年2月26日(安倍総理)
政府といたしましては、この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請することといたします。

「新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために」(令和2年3月1日版)(抜粋)
イベントを開催する方々は、風通しの悪い空間や、人が至近距離で会話する環境は、感染リスクが高いことから、その規模の大小にかかわらず、その開催の必要性について検討するとともに、開催する場合には、風通しの悪い空間をなるべく作らないなど、イベントの実施方法を工夫してください。

令和2年3月10日(安倍総理)
政府としては、先般決定された基本方針において、イベントの開催の必要性について主催者等に検討をお願いし、またそれを踏まえて、全国規模のイベントについては中止、延期、規模縮小等の対応を要請したところですが、専門家会議の判断が示されるまでの間、今後概ね10日間程度はこれまでの取組を継続いただくよう御協力をお願い申し上げます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00002.html#26
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601720.pdf

この状況を踏まえて、ベンチャー企業(非上場企業)における株主総会の開催方法について検討します。

2 株主総会の実際の開催方法について

(1) 実際の開催を中止して、書面株主総会による方法

株主総会は、決議事項について議案に対する賛否を書面等で問い、総株主の賛成が得られれば、決議が成立したものとみなすことができます(いわゆる書面株主総会。会社法第319条第1項)。株主への報告の通知も、総株主が同意すれば通知で足ります(同法第320条)。したがって、非上場企業で、株主が少ない場合は、この書面株主総会を利用することができます。

これは、決議を行う方法として書面などによる決議方法によることについて総株主の同意を得ることを要求している物ではなく、議案そのものへの同意が必要で、且つ、それで十分です。要するに、会議体としての株主総会を開かないでよいことになります。

【参考条文】
(株主総会の決議の省略)
第319条
第1項 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
(省略)
第5項 第一項の規定により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなす。

(株主総会への報告の省略)
第320条 取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

(2) 株主総会の延期による方法

法務省は、令和2年2月28日付けで「定時株主総会の開催について」(本稿作成時点では、最新は令和2年3月13日更新版)を公表し、概要として、以下のように述べています。

(i) 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合でも、今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。なお、会社法は、株式会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定していますが(会社法第296条第1項)、事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではありません。

(ii) 定款で定時株主総会の議決権行使のための基準日が定められている場合において、新型コロナウイルス感染症に関連し、当該基準日から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたときは、会社は、新たに議決権行使のための基準日を定め、当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。

(iii) 特定の日を剰余金の配当の基準日とする定款の定めがある場合でも、今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、その特定の日を基準日として剰余金の配当をすることができない状況が生じたときは、定款で定めた剰余金の配当の基準日株主に対する配当はせず、その特定の日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め、当該基準日株主に剰余金の配当をすることもできます。なお、このように、剰余金の配当の基準日を改めて定める場合には(ii)の場合と同様に、当該基準日の2週間前までに公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html

ただ、「定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況」というのは、判断が難しいのが実際であろうと思われます。
特に、書面株主総会や、後述するオンライン参加での株主総会等も考えられますし、延期したとしても、いつ、現在のような状況が終息するか、まだわかりません。そのため、ベンチャー企業では、株主総会の延期は、現実的な選択にはならないのではないでしょうか。

(3) いわゆるハイブリッド型バーチャル株主総会

経済産業省は、2020年2月26日付けで「「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定しました」を公表しています。

ハイブリッド型バーチャル株主総会とは、取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所で株主総会(リアル株主総会)を開催する一方で、リアル株主総会の場に在所しない株主がインターネット等の手段を用いて遠隔地から参加/出席することができる株主総会をいう、とのことです。

株主のバーチャル参加を認めるにあたっては、zoomやgoogle hangout meets 等の動画配信を行う web サイト等にアクセスするためのURL(ID、PW) を招集通知等と同時に通知する方法や、既存の株主専用サイト等を活用する方法などが考えられます。

参加型の場合、インターネット等の手段を用いて参加する株主は、会社法上、株主総会において株主に認められている質問(法 314 条)や動議(法 304 条等)を行うことはできないと考えられます。しかし、株主総会の会議中にインターネット等の手段による参加株主からコメント等を受け付けたり、回答したりすることは、否定されていないと考えられます。

https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200226001/20200226001.html

なお、仮にハイブリッド型バーチャル株主総会を実施したとしても、具体的に既に感染している株主であること等の具体的な感染リスクが懸念される等の例外事由がない限り、実際の来場を拒むことは、基本的にできないと考えられます。(2020年4月6日追記:この点を変更し、「オンライン出席や委任状提出を強く促しつつ、株主の入場を数名程度に制限することと通知して、実際に総会会場にリアルに出席を希望する株主には、一定の期日までに連絡してもらい、制限員数を超える場合は抽選にする」方法は、可能と考えます。詳細は、ベンチャー企業(非上場企業)におけるCOVID-19(新型コロナウイルス)に対応するための株主総会運営について その2をご覧ください。)

また、会社法上、株主総会の招集に際して株主総会の場所を定めなければならないとされている(会社法第298条第1項第1号)ことなどに照らすと、物理的な会場を明確にしないで株主総会の開催すること、すなわち、オンライン上の仮想空間やURLを会場を開催場所とすることは、許されないと考えらえます。

3 議決権の行使

ベンチャー企業(非上場企業)の多くでは、議決権行使は、委任状等で代理権を授与する代理人による議決権行使をする方法が用いられています。
ほかに、書面投票制度(会社法第311条)や、電子投票制度(会社法第312条)も考えられますが、ベンチャー企業(非上場企業)は、株主数が比較的少なく、委任状で賛否を確認することが可能ですので、委任状よりもコストがかかりうる、これらの制度が用いられることは、それほど多くないと思われます。

なお、上記のハイブリッド型バーチャル株主総会でも、その置かれている状況により、インターネット等の手段を用いて審議を傍聴した株主が傍聴後に議決権を行使することを可能にするような選択肢を検討することも考えられます。この点、会社法第298条第1項第4号、同法施行規則第63条3号は、同法施行規則第70条が、「出席しない株主」のための電磁的方法による議決権行使の期限を株主総会の日時以前の時と定めているのは議決権行使結果の集計に係る会社の便宜のためであり、会社の判断で採決に入る時まで事前の議決権行使を受け付けることを会社法が許容していないとは考えにくいとして、同施行規則 63 条 3 号ハにいう「株主総会の日時以前の時」とは株主総会における採決時以前の時と解すこととなり、取締役が事前に電磁的方法による議決権行使の期限を株主総会における採決時と定めた場合には、中継動画等を傍聴した株主が、その様子を確認した上で議決権行使を行うことも可能とする考えは、ありうるものといえます(「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」9頁参照)。ただ、この考え方は、確定した判例や裁判例によるものではない点にご留意ください。

仮に、株主や取締役がオンラインで出席した場合の議決権行使、議事録については、以下のように考えられます(相澤哲、葉玉匡美、郡谷大輔編著「新・会社法 千問の道標」(商事法務)472頁)。

(i) 株主総会の開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されているといえる環境にあるのであれば、個々の株主が、インターネットを使って株主総会に参加し、議決権を行使することは可能である。
(ii) 議決権の行使は、電子投票(298 条 1 項 4 号)ではなく、その株主が招集場所で開催されている株主総会に出席し、その場で議決権を行使したものと評価されることとなる。
(iii) 株主総会議事録には、株主総会の開催場所に存しない株主の出席の方法を記載する必要がある(施行規則 72 条 3 項 1 号)。同号は「株主の所在場所及び出席の方法」等という規定を置いているわけではなく、株主の所在場所は議事録に記載することを要しない。ただし、出席の方法としては、開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている状況を基礎づける事実(ビデオ会議・電話会議システムの使用等)の記載が必要である。

また、オンライン等の手段を用いた「出席」として提供する以上、会社は、株主総会において株主に認められた議決権行使を初めとする諸権利の行使に係るリアル株主総会との違いについて、事前に説明を行うなど、適切な対応を行う必要があります。

加えて、ベンチャー企業では、あまり考えられませんが、具体的に、株主のなりすましや議決権行使の脅迫等の可能性が存在するのであれば、これらの点には、ご留意下さい。

4 取締役・監査役等のオンラインでの出席

取締役・監査役の出席は、総会における決議成立の要件ではなく、また、出席義務を定めた規定もありません。一方で、取締役、会計参与、監査役及び執行役は、原則として、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならないという説明義務があります(会社法第314条)。

したがって、株主総会において、取締役・監査役等が、株主総会の開催場所と当該取締役・監査役等との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されているといえる環境にあり、それぞれの説明義務を果たすことができるのであれば、オンラインでの出席は、認められると考えられます(筆者私見)。

但し、議長は、株主総会の秩序を維持し、議事を整理する権限を有する者であり(会社法第315条第1項)、ベンチャー企業であっても、特段の事情がない限り、株主総会の開催場所に実際にいる必要があると考えます(筆者私見)。

5 規模縮小などの対応策

実際の開催にあたっては、規模縮小への対応策や、総会当日の感染防止策等が必要になります。

具体的には、(a)事前の議決権行使の推奨、(b)オンライン(ハイブリッド型バーチャル)株主総会の実施におけるオンラインでの出席への誘導、(c)お土産の廃止、(d)株主懇親会等のイベントの中止、のほか(e)、関係者のマスク着用や(f)アルコール消毒液の設置、(g)発熱があるや体調が悪い方に来場を控えてもらう、といった一般的な対策及びその告知等が考えられます。

6 実際のバーチャル株主総会実施の動き

上場企業でも、いわゆるバーチャル株主総会が実施されつつあるとのことです。

■■■引用開始■■■
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中企業の間で大勢の株主が参加する株主総会をどう開催するかが課題になっています。感染を防ぐため株主が自宅からインターネットを通じて総会に出席する新たな動きが始まりました。
■■■引用終わり■■■

■■■引用開始■■■
新型コロナウイルスの感染拡大で大勢の人が集まるイベントの自粛が広がる中、ソフトウエア開発を手がける「富士ソフト」は13日、ネットも活用してバーチャル株主総会を開きました。

東京・千代田区の会場のほか、ネットからも出席できるようにし、株主はアプリを操作して総会の議案の賛否を表明していました。
■■■引用終わり■■■

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200314/k10012330981000.html

(文責 森 理俊)

2020年03月17日 15:42|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません

民事裁判のIT化の現在地

2019年9月17日、大阪弁護士会館で開催されたセミナー・パネルディスカッション「民事裁判のIT化・フェーズ1における手続」に、パネリストとして登壇させて頂きました。

ここで、2019年9月現在の裁判のIT化の状況を確認しておきたいと思います。

2020年2月頃から、東京地裁や大阪地裁等の特定庁の一部にて、「現行法下で可能な手続によりウェブ会議、テレビ会議の利用拡大」(フェーズ1)が始まります。具体的には、何が変わり、何が変わらないのでしょうか。

 

1 フェーズ1から可能となること(変わること)
(1) 弁論準備や書面による準備手続において、Microsoft Teamsを使って、ライブでのウェブ会議で争点整理ができるようになります。
(2) 弁論準備や書面による準備手続において、Microsoft Teamsを使って、事前に、書面や書証をアップロード出来るようになります(後述するとおり、提出扱いにはならないことに留意が必要です。)。
(3) 争点整理段階で、近場の裁判所でも(書面による準備手続におけるオンライン協議が積極的に活用され)裁判所に出頭しなくてもよくなります(もちろん出頭することはできます。また、弁論期日には出頭する必要があります。)。

また、争点整理においては、裁判所によって、ノン・コミットメント・ルールをかなり意識した上で、争点整理が進められることになると予想されます。具体的には、争点整理段階で、後日撤回する可能性を留保した暫定的発言を許容して、裁判所や相手方当事者は、そのような暫定的発言を主張として扱わないことを原則としつつ、コミットメントを確保すべき場面においては、当事者に確認した上で、協議の結果を調書化(民事訴訟法第176条第3項、民事訴訟規則第91条第2項)して訴訟上の信義則を活用することや、節目で口頭弁論又は弁論準備手続の期日を設けて陳述等を行うことが考えられています。

なお、誤解をさけるために念のために申し上げると、フェーズ1は現行法を前提に行うものですので、弁論準備手続においては、いわゆる遠隔地要件を例示している民事訴訟法第170条第3項、書面による準備手続においては同法第175条が適用されることに変わりはありません。これまでは、遠隔地要件の例示を比較的厳格に適用し、「その他相当と認めるとき」とは、遠隔地要件に準ずる場合と解釈する裁判体が多かったと思われます。しかし、フェーズ1のウェブ会議には、相当程度の臨場性と利便性があるため、電話会議の場合とは「相当と認めるとき」に該当するか否かの判断が異なり得ることを前提に、個々の裁判体が、代理人弁護士の事務所が裁判所の近くにある場合でも、「相当と認めるとき」に該当すると判断される場面が増えるであろうという予測により、上記の(3)をお伝えしております。

また、当初は、双方に訴訟代理人がついている事件からスタートするものと思われ、本人訴訟では、本人の意向のほかに、本人確認、場所の適切さの確認、秘密録音・録画の防止、弁護士ではない第三者の関与の防止などお懸念点があるため、当面の間は、IT化の対象外になるものと予想されます。

さらに、ウェブ会議を望まない代理人に、裁判所が当該代理人にウェブ会議を強制することはないとされています。

 

2 フェーズ1ではできないこと(従前と変わらない、代表的なもの)
・ オンラインでの訴えの提起
・ オンラインでの準備書面や証拠の提出(今後、フェーズ2以降を待たずして一部実現される可能性があります。)
・ オンラインによる期日の調整や進行協議
・ 訴訟記録のクラウド管理
・ オンラインでの判決入手

フェーズ1では、民事訴訟法も民事訴訟規則も変わりませんので、Microsoft Teams経由でのアップロードでは書面の提出は完了しないことになります。少なくともファクシミリにより裁判所に提出するとともに相手方にも直送する必要があることは、従前と変わりません。

なお、この点、フェーズ2をまたずして、提出用のシステムを準備し、民事訴訟規則を改正して、オンライン提出を実現する方向での動きがあるようです。これは、Microsoft Teamsでのアップロードでは、当事者から裁判所への提出に際して、相手方当事者からの変更や削除(故意過失を問わず)が防止できないということも背景事情にあるものの、一方で、アップロードとファクシミリ提出の2度の提出が迂遠であるためであると思われます(Microsoft Teamsはチーム内で共同で編集することに主眼のあるソフトウェアであり、当事者から裁判所への提出を確定的なものとするには不向きであると思われます。また、PDFでの提出であっても、改ざんや加工は可能であり、ファクシミリや直送と同程度以上の堅牢な提出方法をシステムによって実現したいというのが最高裁の方針であると思われます。)。

 

3 フェーズ1のオンライン争点整理に向けたハード面の準備
(1) 推奨スペックを満たしたPCを準備する。
(2) MicrosoftTeamsをダウンロードし、アカウントを作成する。
(3) スピーカーやマイクのテストをする。

Microsoft Teamsの使い方は、最高裁判所事務総局民事局及び日本弁護士連合会事務局から、『Microsoft Teams利用マニュアル』が作成されておりますので、弁護士の方におかれては、日弁連のHPから、これを入手して参考にしていただくのがよさそうです。

なお、現時点でのPC推奨スペックは、CPU:2GHz-、メモリ:4GB~、HDD,SSD:空き容量3GB~、Windows7 Servicepack1~とのことです。他に、モニタ(1204✕768以上の解像度)、カメラ(ノートPC付属のものでよい)、インターネット回線(光回線、有線LAN推奨)、閉鎖された空間(法律事務所の会議室など)が必要となります。

さらに、代理人は、ファイルをアップロードする際には、ファイルのプロパティや変更履歴(写真であれば、exif情報なども)に、不要な情報や不利益な情報が残っていないか、これまで以上に慎重に確認した方がよいでしょう。

 

4 最後に

民事裁判のIT化の現在地としては、以上が主な内容です。他にもいろいろと疑問等も生じてくるとは思います。ここに書き切れなかったことも少なくありませんが、お許し頂ければ幸いです。

 

今回のエントリーの内容は、時間を経て、また、フェーズ1が実施されることで、実務での運用もより合理的なものに変容すると思われます。後から、実務における変化を確認する意味でも、現時点での状況を記させていただきました。

フェーズ2は、「新法に基づく弁論・争点整理等の運用」とされており、2022年(平成34年)度頃からの開始を目標としています。その頃には、様々な知見が蓄積され、段階的により良いITツールの活用が進められているのではないかと信じています。

 

(文責:森 理俊)

2019年09月26日 10:04|カテゴリー:法務関連ニュース||コメントはまだありません

『大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き』(経済産業省)

今月(2019年5月)、経済産業省にて『大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き』が策定されました。

 

1 『大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き』の策定

昨今、大学発ベンチャーに関連して、大学が保有している知的財産をベンチャー企業に移転する場合等の対価として、新株予約権を取得する例がかなり増えてきたように思います。

先日(2019年5月)、経済産業省は、『大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き』を策定しました。

私は、これまで実際に国立大学法人の知財移転や新株予約権取得に関与して、助言などを行っており、これまでの関連する動きと併せて概観したいと思います。

 

2 これまでの文部科学省通知などの状況

これまで、文部科学省から、以下の通知において、例えば下記の指摘がありました。

 国立大学法人等は、法第22条第1項各号又は法第29条第1項各号に規定される業務と離れて、収益を目的とした別の業務を行うことはできないが、同項各号の範囲内の業務を行う中で、受益者に対し費用の負担を求め、結果として、収益を伴うことまでは否定されていない。
その対価として現金に代えて株式等を受け入れざるを得ないような場合には、株式等を取得することは法的に可能と解されること。
ただし、国立大学法人等においてその取得を慎重に判断した上で実施するものであることに留意すること。また、この取扱いは、当該対価を現金により支払うことが困難な大学発ベンチャー企業等を対象として想定しているものであり、株式公開企業等の現金による支払が可能な企業について、現金に代えて株式等を取得することは法の趣旨に照らし妥当な取扱いとは解されないこと。

(想定される対価の例)
・国立大学法人等の教育研究活動に支障のない範囲内において、一時的に、国立大学法人等の施設を使用させる対価
・国立大学法人等の教育研究活動の成果を活用し、技術相談業務、技術顧問業務、法律相談業務等、技術的な支援を行い、得る対価など

(文部科学省高等教育局長等 29文科高第410号 平成29年8月1日「国立大学法人及び大学共同利用機関法人が株式及び新株予約権を取得する場合の取扱いについて(通知)」)
注釈:「法」とは国立大学法人法を意味する。太字は筆者による。

また、内閣府及び文部科学省から、以下の通知において、下記の指摘がありました。

法第 34 条の 4 及び第 34 条の 5 は、研究開発法人及び国立大学法人等が支援に伴い株式等を取得することができる場合を、法人発ベンチャーの資力その他の事情を勘案し、特に必要な場合としている。すなわち、支援を行う研究開発法人又は国立大学法人等の研究成果を活用した事業の有望性が高い法人発ベンチャーであって、当該研究開発法人及び国立大学法人等による支援に対し、現金による支払を免除又は軽減することが当該ベンチャーの経営の加速のために特に必要と考えられる場合が対象となる。

法人発ベンチャーから株式等を提供したい旨の意向が示された場合、研究開発法人及び国立大学法人等は、株式等の 価値を公正かつ客観的に評価できるよう、必要に応じて、株式等の取扱いに係る経験等を有する外部専門家の意見を活用しつつ、法人発ベンチャーとの合意の上で取得する株数等を決定する必要がある。

(内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当) 文部科学省 科学技術・学術政策局 平成31年1月17日「研究開発法人及び国立大学法人等による成果活用事業者に対する支援に伴う 株式又は新株予約権の取得及び保有に係るガイドライン」)
注釈:「法」とは科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律を意味する。太字は筆者による。

以上を踏まえると、従前から、取得時や保有時に以下の留意事項が考えられていました。

【大学側の取得時の留意点】
・ 新株予約権の取得については、ライセンスの相当性、新株予約権取得の相当性(事業の継続性や回収可能性など)に留意する
・ 新株予約権自体の相当性(数や内容の合理性など)に留意する
・ 実務上、ライセンス等の対価及び新株予約権1個あたりの価値を算出し、ライセンス等の対価を新株予約権1個あたりの価値で割って、個数を算出することが理想である。ただし、現実には、ある程度の仮定を前提とした上での計算をもとに、外部専門家の意見を活用しつつ、法人発ベンチャーとの合意の上で取得する株数等を決定する。

【大学側の保有後の留意点】
・ 特段の事情がない限り、換金可能な状態になり次第可能な限り速やかに売却することが求められる。
・ 自益権(利益配当請求権や残余財産分配請求権)の行使はよいが、議決権の行使など経営参加権等のいわゆる共益権の行使は、原則として認められない。例外あり。

 

3 経済産業省作成の『大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き』について

経済産業省は、『大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き』において、基本的な考え方として、以下のとおり、述べています。

「現金による支払を免除又は軽減することが当該ベンチャーの経営の加速のために特に必要と考えられる場合」である基準については、ベンチャー企業の成り立ちや将来的な事業計画、また大学との関わりは多様であり、株式・新株予約権の取得の妥当性を画一的な基準で判断することは困難です。そのため、株式・新株予約権の取得可否の判断は、対象とする企業がその時点で保有しているキャッシュの多寡だけではなく、ライセンスに伴って現金による支払を免除又は軽減することがその企業の事業計画を勘案すると必要かどうか、また、企業側が希望しているかどうかという視点で検討することが適切であると言えます(p.19)。

また、考慮するための要素として、「新株予約権取得の判断を行うための事業計画を確認し、現金を回収できることが一定程度見込まれること」「新株予約権を取得するタイミングとして、シード期が一般的であるが、例外もあり各ケースに合わせた対応をすること」「事業内容と大学ミッ ションとの関連性を整理するとともに、事業内容の公正性などを確認すること」等が挙げられています(p.20)。

 

4 今後の動き

今回の『大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き』の策定は、これまでの議論状況を整理し、一覧性を高めたものといえます。実務上の留意点も、これまでと比して、変化したというものではなく、わかりやすく整理されたといえます。

これまでも、日本の大学が知的財産権のライセンスに伴って大学発ベンチャーから新株予約権を取得する場合はありましたが、これが加速するものと思われます。

当事務所では、これまで、国立大学法人を中心に、大学発ベンチャーから新株予約権を取得するに際して、「ライセンス契約書」及び「新株予約権割当契約書」の作成をサポートしたり、新株予約権を取得することの相当性の要件の確認などの業務を提供したりしてきました。

これからも大学発ベンチャーが、このような仕組みを使って、ますます加速することを強く期待しています。

文責:森 理俊

裁判手続等のIT化とODR

いま、日本の裁判手続は急速にIT化に向けた動きが進んでいます。
これまでの、そして今の日本の訴訟手続は、紙とファックスが中心です。

日本のIT化の現状に即して考えても、紙とファックスは、不合理な側面が否めず、同時にセキュリティの観点からも脆弱であると言わざるを得ません。

弁護士がmicrosoft word等のソフトで電子的に作成した書面を、一度プリントアウトして、紙面に押印し、その後、ファックス送信して、それをさらに裁判所でプリントアウトしたものをファイリングするという、どう考えても不効率なことを今も続けているのが民事裁判の現実です。その後、裁判所が、判決を書くのに電子データがほしいといって、データの入ったCD等を裁判所に届けさせるというのは、どう考えても愚かしいとしか思えません。
また、ファックスは、数字10桁程度の送信先の指定方法で、暗号化もパスワードによる保護もされていない状態で、電子情報を送信するという前時代的な方法です。このようなセキュアではない方法は、裁判に関する秘匿すべき要請の高い情報のやり取りとして適切かというと、かなり疑問な面があります。また、送信されたデータにはパスワードが付されていませんので、誤送信すると、その時点で取り返しがつきません。

以上の理由がどれだけ意識されているのかはわかりませんが、日本でも、ようやく「世界的に見て日本の裁判手続のIT化は遅れている。紛争解決インフラの国際的競争力強化、裁判に関わる事務負担の合理化、費用対効果の総合的観点からも推進すべき」という問題意識から、3つのeが推進されることになりました。

この流れに関する情報は、首相官邸のウェブページにあり、上記の問題意識は、『裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ-「3つのe」の実現に向けて』に記されています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/index.html

『裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ-「3つのe」の実現に向けて』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/pdf/report.pdf

3つのeとは、e提出:e-Filing、e法廷:e-Court、e事件管理:e-Case Managementです。これらの詳細について詳しく知りたい方は、上記の「取りまとめ」をご確認下さい。

このうち、まず最初に、現行法で可能な範囲で、具体的には、書面による準備手続を活用して、テレビ会議システム(具体的には、Skype等)を利用して、争点整理の充実化を図ることが検討されています。

日本弁護士連合会は、この「取りまとめ」の内容に対し、どのような意見を形成すべきか、検討するために、関連委員会及び単位会に対して、意見照会がなされました。大阪弁護士会でも、短期間で意見を取りまとめて、提出しました(私も、関わらせていただいています。)。勿論、大阪弁護士会内部でも、結論が形成できていない論点も多くあり、両論併記で残っている部分があります。

個人的には、e-Courtよりも、先にe-Filingやe-Case Managementを推進してほしいところであり、とはいえe-Case Managementは開発業務に相当時間とコストを要すると思われる為、e-Filingから進めてほしいと考えています。また、もしe-Courtを進めるのであれば、まず、無駄な期日や作業、移動時間を減らすために、柔軟に手続を選択して、両当事者が裁判所に来なくても、論点整理できそうな場合は、どんどん書面による準備手続等を活用する等して、論点整理を進めてほしいと思います。あと、保全手続や保全異議審の一部など、代理人と裁判所で話が進むような手続も、ウェブ会議を積極的に活用してほしいと思います。
一方、証人尋問は、入院患者が証人になるような場合は例外的に活用できるようにするのは肯定するとしても、原則として法廷で行うということは、裁判の公開の原則にも適っていますので、e-Courtに最もなじみにくい場面だと考えます。

いずれにせよ、裁判手続等のIT化の流れはここ数年に大きく加速することが予想されます。要注目です。

加えて、IT化が進められそうなのは、裁判手続だけではありません。ADR(Alternative Dispute Resolution)と呼ばれる裁判外の紛争解決手続も、オンライン化の流れにあります。

今年の9月21日に、ODR(Online Dispute Resolution)に関するシンポジウムが東京で開催されました。
http://www.law.hit-u.ac.jp/content/images/bl/symposium/180921onlinedisputeresolution.pdf

一橋大学法学研究科 渡邊真由先生のプレゼン資料(2018/07/27, 日本ADR協会)は、こちらです。
https://japan-adr.or.jp/sympo2018docs/7.pdf

世の中には、少額のオンラインでのCtoCのトラブル(ネット・オークションでのトラブル)や、リアルでも数万円から数十万円前後の金銭等のトラブル(賃金不払い、貸金未返済など)は少なくありませんが、裁判所が充分な紛争解決手段を提供できているとはいえず、弁護士を始めとするプロフェッショナルも、費用対効果が良くないこと等を理由に積極的に取り組んできませんでした。

米国では、eBayやPayPal等の民間企業が、人間の関与をほとんどなくして、システムだけで解決できるような紛争解決システムを提供し、高い割合で活用されているようであり、日本でも、今後、発展が期待され、同時に、押し進められるべき分野であるように感じます。

こちらもここ数年で急速に進化する可能性があり、目が離せません。

(文責:森理俊)

2018年10月01日 10:50|カテゴリー:法務関連ニュース||コメントはまだありません

金融商品取引法の緊急差止命令


最新の判例時報平成23年4月21日号(No.2104)130頁以下に、金融商品取引法192条1項に基づき、金融商品取引法違反行為の差止めが命じられた事例(東京地裁平成22年11月26日決定)が掲載されています。

この事例は、「抜かずの宝刀」が抜かれたとして、話題になりました。

金融商品取引法192条1項とは、次のようなものです。

金融商品取引法
(裁判所の禁止又は停止命令)
第百九十二条  裁判所は、緊急の必要があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣の申立てにより、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行い、又は行おうとする者に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができる。
2  裁判所は、前項の規定により発した命令を取り消し、又は変更することができる。
3  前二項の事件は、被申立人の住所地の地方裁判所の管轄とする。
4  第一項及び第二項の裁判については、非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)の定めるところによる。

この条文を読むと、金融商品取引法違反や同法に基づく命令違反の行為は、全て対象となるように読めます。政府が緊急性があり、且つ必要性及び相当性があると判断すれば、いつでも申し立てることができ、さらには、審理も短期間で行われることが想定されていると考えられますので、運用には非常に慎重で謙抑的であったと考えられます。

本件は、同法の緊急差止命令が発令された初めての事例ということで、注目を集めました。
本件では、「一種免許なく、募集又は私募の取扱い」→「財務局からの照会」→「金商法違反に該当する行為をしていたことを認める旨の回答」→「警告書」→「当該行為を中止する旨の回答」→「金商法違反の勧誘行為の継続」という流れの結果、緊急差止命令の申立てにいたったようです。

緊急差止命令の相手方となるケースは、非常に稀と考えますので、その意味では、本件は、例外的な事件と言えるかもしれません。
しかし、本件は、どのような事例が「募集又は私募の取扱い」に該当するかの参考事例とも言えます。

本件では、相手方は、ある会社の株式等の取得の申込みの勧誘行為を行うことを引き受けて、一般投資家に対し勧誘・斡旋をし、実際に制約した場合には、発行会社から手数料として出資金の払込価額の3分の1の支払いを受ける旨合意した上で、一般投資家に同社の株式等の取得の斡旋・勧誘を行ったようです。その結果、一般投資家延べ112名が、同社に対して直接又は相手方を経由して、合計9885万円の出資金の払込みを行ったようです。また、この発行会社以外にも、少なくとも4社の株式についても勧誘行為を繰り返していたようです。

この事案は、「私募」どころか「募集」に該当している可能性が十分あり、発行会社の方も問題となりそうな事案です。また、「私募の取扱い」を業として行うことは、第一種金融商品取引業の免許が必要です。なお、「業として」の判断については、裁判所の決定では、「反復継続して」とありますので、営利性より、反復継続性が重要な要素となっているようです。

株式や新株予約権を発行して、資金を集めようとする会社は、「募集」に該当しないかの検討を十分にしていただきたいですし、自社の株主となるように勧誘する行為を、証券会社ではない第三者に依頼すると、その第三者は、「募集又は私募の取扱い」に該当する可能性があるということを、よく理解していただきたいです。「募集」と「私募」の要件及び効果の違い、「募集又は私募の取扱い」の該当性は、実行前に、弁護士に相談することをお勧めします。

2011年04月27日 06:30|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません

お知らせ「Startup Engine 2011」の開催

大変、ご無沙汰しております。諸事情により、更新が滞っておりました。

今日は、5月20日に開催予定の「Startup Engine 2011」というイベントについてのお知らせです。

来る5月20日の午後1時から、大阪中之島の国際会議場にて、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただきます。

関西では、ベンチャーや起業に関連したイベントが少なくなりつつあるという話を聞き、全くの手弁当で、友人知人に声をかけて、志に賛同してくださる方々と立ち上げたイベントです。

今こそ、関西が頑張るべき時であるという声は少なくありません。関西は、古代から江戸時代や近代にかけて、起業や金融という意味では、最先端の地でした。今も、高い技術や志を持つ方が大勢いらっしゃいます。また、商人の地、大阪だけではなく、伝統と新しい価値が融合する地、京都、先端技術の拠点を持つ古都奈良、新しい文化とバイオベンチャー等のシードも多い神戸等、素晴らしい土地が近接しているという地の利があります。一方で、ここ数年、「最近の関西・大阪は元気がない」という言葉を聞くことも少なくありませんでした。

そこで、微力ながらも、関西でも、起業家精神とそれを支えるネットワークを構築するため、そして、その土壌を耕し続けるため、志を同じくする人と一緒に、関西、そして日本が、新しい産業のエンジンとなることを祈念して、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただく運びとなりました。

新進気鋭の素晴らしいスピーカーに、お話をいただけることになっております。
僭越ながら、私も最後にお話をさせていただく機会を設けさせていただいています。

【日 時】 2011年5月20日(金)13:00〜17:30
【会 場】 大阪国際会議場
【後援・協力】 [後援]大阪証券取引所 [協力]株式会社 幕末
【セッション】
Session 1 ライフネット生命の挑戦

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長 岩瀬 大輔 様

Session 2 マイノリティのすすめ

日本マイクロソフト株式会社 コミュニケーションズ・セクター

クラウド・ソリューション営業部 統括部長 今井 早苗 様

Session 3 等身大の経営者が語るBuyout

株式会社オークファン 代表取締役 武永 修一 様
ジンガジャパン株式会社 ジェネラル・マネージャー 山田 進太郎 様
株式会社美人時計 専務取締役 早 剛史 様
株式会社アトランティス 代表取締役社長 CEO 木村 新司 様

Session 4 目指せ!Good to Great~起業を支えるプロフェッショナルの立場から~

アントレプレナーファクトリー 代表取締役嶋内秀之
武田公認会計士事務所 公認会計士武田雄治
山本・森・松尾法律事務所 弁護士森理俊

【参加費】 一般席:3,000円(税込)  学生席:1,000円(税込)
※学生席には限りがございます。
【ウェブページ】http://startup-engine.com/
【懇親会】 夜6時から、開催予定(参加費5000円)

お申し込みは、こちらからお願いいたします。

なお、夜6時からの懇親会には、スピーカーの方の中からも参加していただける予定です。

起業について関心のある方、企業内部で新しいことに挑戦する方、ベンチャー企業への就職や転職を考えたことのある方、ベンチャー・キャピタル等の投資家の方、証券会社等の金融機関で上場やバイアウトを担当されている方、中小企業・ベンチャー企業のサポートをしているプロフェッショナルの方など、多くの方のご参加をお待ちしています。

不可抗力について(震災に伴う法律上の問題)

今回は、大地震や津波により、契約上の義務を果たせなかった場合、責任を負うのか、という問題について、検討します。

契約上、不可抗力条項がある場合は、その規定に従うことになります。不可抗力条項が規定されている大抵の場合は、免責事由となっているはずです。

問題は、特約で不可抗力条項が定められていなかった場合です。

典型的なケースとしては、工場が津波により被害を受けたので、納品できなくなったというケースです(特に、契約書の取り交わしはなく、発注書と請書のみのやりとりだったという場合です。)。

このような場合でも、不可抗力であるとして、遅滞や履行できないこと(履行不能)については責任を負わないのが原則です(理論上、不特定物の提供義務を負っている場合は、市場で同種同等の物を調達し得る限り、捜索して提供する義務が発生しますが、他の保有者が発見できない場合や調達価額が不相当に高額な場合は、免責されるか、事情変更の原則の適用が検討され得る事案といえる可能性があります。)。

但し、このような原則の例外として、金銭債務(お金を支払う義務)があります。金銭債務の履行については、不可抗力は抗弁となりません(民法第419条第3項)。

民法
(金銭債務の特則)
第419条
1  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

不可抗力により履行不能となった場合に、反対給付(典型的には売買契約における金銭の支払義務)が残るかという問題は、次に検討すべき課題となります。この問題を、危険負担といいます。危険負担については、後日、検討する予定です。

2011年03月24日 06:30|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません

民事訴訟法上の真実擬制が認められた事例

2011年3月1日号の金融・商事判例No.1360の17頁には、貸金業者から取引履歴が破棄されているため開示されない場合において債務者の主張する当該期間の取引について民事訴訟法第224条第2項及び第3項に定める真実擬制が認められるか否かが争われた裁判例が掲載されています。


貸金業者からお金を借りた個人が、取引履歴により立証しようとした主張について、真実と認めることができるかを検討するに、「民事訴訟法224条3項は、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができると規定しているのであって、相当の合理性があると認めることのできる主張であればともかく、いかなる主張であっても真実と認めなければならないものではない。」とした上で、当該案件については、原告の主張する推計値をもって一つのあり得る合理的な推測といえるのであって、相応の合理性を認めることができる・・・当裁判所は、原判決別紙1記載のとおりの取引が存在したものと真実擬制を認めるものである。
(平成22年12月15日東京高等裁判所第11民事部判決)


この真実擬制が適用されたケースがどの程度あるのか、調査できていませんが、応用範囲は広いものと考えます。

もちろん、この規定に頼って、訴訟を進めるのはリスクがあると考えますが、証拠収集上の困難がある事件については、頭の片隅においておくべき規定ではないでしょうか。

参考
民事訴訟法
(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
第224条
第1項  当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
第2項  当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
第3項  前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

2011年03月10日 06:30|カテゴリー:法務関連ニュース||コメントはまだありません

法制審議会「会社法制部会」への企業側からの意見

昨年(平成22年)の会社法制部会の審議事項について、先月(2月)28日に、経済同友会から意見が出されていますので、紹介します。

法制審議会「会社法制部会」への意見

会社法制部会の内容については、こちらをご覧下さい。第4回から第6回あたりまでが、今回の経済同友会の意見の対象となっているトピックが議題となっています。

過去の関連記事は、「会社法改正の動向と株価算定事件についてのメモ」「昨今の会社法制に関する話題」等ですので、こちらも参考にしてください。

 企業経営者の立場で望むのは、経済関連の法制が結果として個々の企業が活性化、国際競争力を向上させ、ひいては日本経済全体の成長に貢献することである。過度な規制で、結果的に企業活動が萎縮するようなことがあってはならない。

 こうした観点からすると、現在、法制審議会「会社法制部会」(以下「部会」)で検討されている項目は、本当に今現在、法改正まですべき切迫した事情(いわゆる立法事実)があるのか、疑問に感じるものが多い。もし今回の会社法見直しの発端に、「会社法で規制緩和が行き過ぎ、企業の規律が失われ、不祥事や違法・脱法行為が増えた」といった認識があるのであれば、それは企業実務の実感とは明らかに異なるものである。金融商品取引法(以下「金商法」)や証券取引所規則はじめ、会社法以外で新たなルールが次々と設けられ、全体としては、企業に対する規律はむしろ増えているように感じる。ごく一部の違法・脱法行為者の事例を一般化して規制を強化しても、確信犯的に法の間隙を縫ってくる者を完全に防 ぐことは不可能であるし、また規制強化の結果、非常に煩雑な手続きを企業全体に課すことになれば、適正なガバナンスを構築し、法令を遵守している大多数の企業の負担増となり、むしろ、日本経済が全体として国際競争力を失う可能性が大である。

 また、部会では、諸外国にある制度を導入しようという志向も強いように見受けられる。しかしながら、一方で各国の会社法制は、その他の経済関連法制や税制、司法制度、更には雇用慣行、会社帰属意識その他の社会・文化的背景の下で設計され、機能しているものでもある。もちろん、経済のグローバル化が進む中、国際的ルールとの不整合により、日本企業が国際競争上不利となる事態は避けなければならないが、法律の一部分だけを単独で日本に移入しても、必ずしも意図通りに機能する保証はなく、それどころか弊害さえ招きかねない点もまた認識すべきである。

(公益社団法人経済同友会 平成22年2月28日「法制審議会「会社法制部会」への意見」1頁より)

経済同友会は、規制の対象となる会社の集団ですので、規制強化に反対という立場を採ることは容易に想像できますが、それを差し引いたとしても、真剣に耳を傾けるべき意見が少なくないように思います。特に、「特に株式市場で広く投資家から資金を集める上場企業では、社外取締役を少なくとも1名導入すべきであるし、さらには複数名導入することが望ましい。但し、社外取締役を、上場大企業から中小企業・個人企業までカバーする「会社法」で強制すべきかどうかは別次元の問題である。」(2頁)といった意見や、「何より、日本の産業構造転換と国際競争力強化、資本市場のダイナミズム向上の為には、特に大企業はスピンオフ(企業発ベンチャー)を推進し、国もこうした流れを支援すべきものである。だが、 日本では、従業員の会社への帰属意識の強さもあり、一挙に 100%全て外に出す訳にいかないことも多く、 まず 51%とか60%保有で上場し、投資家の信頼を得つつ、徐々に独立色を高めて、やがて完全分離することが現実的である。こうした流れのステップとして、親子上場は不可欠な選択肢である。」(6頁)といった意見は、現場の声として有用と考えます。

このような現場の意見を踏まえつつ、より議論が充実したものとなることを願っております。

2011年03月03日 06:30|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません

先月の裁判例(2011年1月の裁判例)

先月(1月)26日に、東京地裁民事第8部において、株主総会決議不存在確認等請求事件で、決議不存在を認める判決がありました(商事法務No.1924 60頁)。

主な内容は、以下のとおりです。
(1)適法な議長不信任・議長交代の動議がないままに、議長を交代した後の取締役解任決議は、議長でない者によって採決が行われたことになり、不存在である。
(2)(1)の株主総会決議を追認する株主総会決議についても、適切ではない代表取締役によって招集手続きが行われた点には瑕疵があるものの、株主が1人であるところ、その1人株主が出席してなされたと考えられるため存在する。
(3)(2)の株主総会により追認決議が行われたとしても、(1)の株主総会が有効になるものではなく、その間の((1)で解任された取締役の)報酬請求権は、認める。
(4)(2)の株主総会の解任に正当な理由が無いとして、会社法339条2項に基づき損害賠償請求権を認める。

株主総会の決議不存在が認められるケースは、それほど多くありませんので、ご紹介します。

2011年02月28日 16:00|カテゴリー:企業法務, 法務関連ニュース||コメントはまだありません
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