ここから本文です

ベンチャー法務の部屋

社債には特段の事情がない限り利息制限法第1条の規定は適用されないと判断した事例(令和3年1月26日最高裁判所第三小法廷判決・金融商事判例1620号11頁)

【事案の要旨】
株式会社であるAは、社債の発行として、募集総額、社債の金額、社債の利率、社債の償還方法及び期限、利息の支払方法及び期限等の事項を定めて募集をした。
Yは、この募集に応じて引受けの申込みをした者として、Aに対し、平成24年6月28日及び同年7月24日、各1000万円を支払って社債としての割当てを受けた。
Aは、Yに対し、平成27年9月30日までの間、社債の利息及び償還として金銭を支払った。
Aは、平成28年4月13日、破産手続開始決定を受けた。
そこで、Aの破産管財人であるXが、YはAに対して社債購入名下に、計2000万円を貸し付け、Aから利息制限法所定の上限を超える約定金利で弁済を受けたと主張して、不当利得返還請求権に基づき、同法所定の上限を超える利息相当額等の支払を求めた。

【判決要旨】
利息制限法1条は、「金銭を目的とする消費貸借」における利息の制限について規定しているところ、社債は、会社法の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であり……、社債権者が社債の発行会社に一定の額の金銭を払い込むと償還日に当該会社から一定の額の金銭の償還を受けることができ、利息について定めることもできるなどの点においては、一般の金銭消費貸借における貸金債権と類似する。
しかし、社債は、……社債の成立までの手続は法定されている上、会社が定める募集事項の「払込金額」と「募集社債の金額」とが一致する必要はなく、償還されるべき社債の金額が払込金額を下回る定めをすることも許されると解される……などの点において、社債と一般の金銭消費貸借における貸金債権との間には相違がある。また、社債は、同法のみならず、金融商品取引法2条1項に規定する有価証券として同法の規制に服することにより、その公正な発行等を図るための措置が講じられている。
ところで、……利息制限法は、主として経済的弱者である債務者の窮迫に乗じて不当な高利の貸付けが行われることを防止する趣旨から、利息の契約を制限したものと解される。社債については、発行会社が事業資金を調達するため、必要とする資金の規模やその信用力等を勘案し、自らの経営判断として、募集事項を定め、引受けの申込みをしようとする者を募集することが想定されているのであるから、上記のような同法の趣旨が直ちに当てはまるものではない。今日、様々な商品設計の下に多種多様な社債が発行され、会社の資金調達に重要な役割を果たしていることに鑑みると、このような社債の利息を同法1条によって制限することは、かえって会社法が会社の円滑な資金調達手段として社債制度を設けた趣旨に反することとなる。
もっとも、債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し、社債の発行に仮託して、不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合には、このような社債制度の利用の仕方は会社法の予定しているものではないというべきであり、むしろ、上記で述べたとおりの利息制限法の趣旨が妥当する。
そうすると、上記特段の事情がある場合を除き、社債には利息制限法1条の規定は適用されないと解するのが相当である。

【コメント】
本判決は、原則として、社債の利息に利息制限法1条が適用されないことを判示した初の最高裁判決です。
例外として、「債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し、社債の発行に仮託して、不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情」がある場合には、利息制限法1条の適用があるものと解されます。
どのような場合に、上記の「特段の事情」が認められるかは今後の事例の集積が待たれるところですが、本判決が、原則として社債の利息に利息制限法1条の適用がないことを明らかにしたことの意義は大きく、実務上参考になると思われます。

【参考条文】
利息制限法1条
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

(文責:福本洸太郎)

2021年12月10日 18:58|カテゴリー:判例紹介||コメントはまだありません

仮想通貨の不正流出に伴い仮想通貨の送信が停止されたことにつき登録ユーザーから仮想通貨交換業者に対する債務不履行による損害賠償請求が成り立たないとされた事例(東京地方裁判所判決令和3年6月25日・金融商事判例1625号23頁)

【事案の概要】

Yは、仮想通貨交換業等を目的とする株式会社であり、インターネット上でビットコイン、ネム、イーサリアム、リップル及びライトコイン等の仮想通貨を対象とした販売所及び取引所を運営している。

Xらは、Yとの間で、仮想通貨の売買の場を提供するサービス、これに関して利用者として登録がされた者(以下「登録ユーザー」という。)の金銭又は仮想通貨の管理をするサービス、その他関連サービスに関する利用契約(以下「本件契約」という。)を締結し、Yにおいて、それぞれ取引口座(以下「ユーザー口座」という。)を開設した者である。

Yは、ユーザー口座において、登録ユーザーが保有する仮想通貨や取引に利用するための金銭を管理している。Yは、登録ユーザーの要求により、Y所定の方法に従い、ユーザー口座からの金銭の払戻し又は仮想通貨の送信に応じる(以下、同払戻しに関するサービスを「出金サービス」といい、同送信に関するサービスを「送信サービス」という。)。

Yは、平成30年1月26日午前零時2分頃から、外部の第三者からの不正アクセスによって、登録ユーザーから預かったネムのうち5億2630万0010ネムを外部に不正送信され、流出させた(以下、この出来事を「本件流出」という。)。

Yは、同日午後4時33分頃、全ての取扱仮想通貨及び日本円の出金サービスの一時停止を告知し、同日午後5時23分頃、ビットコイン以外の売買サービスの一時停止を告知した(以下、これらの一時停止措置を「本件停止措置」という。)。

X1は、Yに対し、平成30年1月26日午後6時51分100リップルを、同日午後6時57分に1イーサリアムを、同日午後8時18分に100リップルを送信請求した。X4は、同日、Yに対し、44.91イーサリアムを送信請求したが、同月28日にキャンセルされた。X6は、同月27日、Yに対し、3イーサリアム、2.2959ライトコインを送信請求したが、同年3月12日にキャンセルされた。

Yは、平成30年2月13日、日本円の出金サービスを、平成30年3月12日、イーサリアム及びリップル等の送金サービスを、同年6月7日、ネムの出金サービス及び売却サービスを再開した。

本件は、Xらが、Yとの間で本件契約を締結し、Yにおいて、Xらの仮想通貨を送信及び売却する義務を負っていたのに、全ての取扱仮想通貨の送信等を停止したため、Xら全員につき送信停止中のネム以外の仮想通貨の価格下落により、それぞれ損害を被った旨主張して、Yに対し、債務不履行に基づき、損害賠償金等の支払を求める事案である。Xらの請求はいずれも棄却され、控訴も棄却された。

【判決要旨】(ネム以外の仮想通貨に関する損害について判示した部分のみ抜粋)

裁判所は、「Xらは、本件流出により各仮想通貨が値下がりするのは必定であり、損失を回避するために保有する仮想通貨を売却して損切を行うことが確実であったから、本件停止措置後送信再開するまでの各仮想通貨の値下がり額が遅延賠償として損害額となる旨主張する。しかしながら、(中略)、仮想通貨の価値は日々刻々と変動し、多種多様な要因によりその価値が影響を受ける可能性があること、平成30年1月26日時点の基準価格よりも本件停止措置後の基準価格の方が高い時点があることからすれば、一取引所である被告における本件流出により、世界的に流通している各仮想通貨が値下がりするのが必定であったとはいえず、また、Xらが損失を回避するために保有する各仮想通貨を売却して損切を行うことが確実

であったということもできないし、これを被告が予見し得たということもできない。」と判断し、Xらの主張を認めなかった。

【コメント】

本判決は、本件停止措置後送信再開するまでの各仮想通貨の値下がり額が遅延賠償として損害額となるとのXらの主張を認めなかった点で、重要であると考えます。

裁判所は、「仮想通貨の価値は日々刻々と変動し、多種多様な要因によりその価値が影響を受ける可能性があること、平成30年1月26日時点の基準価格よりも本件停止措置後の基準価格の方が高い時点があること」を理由として、Xらの主張する損害が、民法第416条第1項の「通常生ずべき損害」及び同条第2項の「特別の事情によって生じた損害」にも当たらないと判断したものであると考えます。

仮想通貨に関する訴訟では、本判決のように、仮想通貨のボラティリティの高さを前提とした判断がなされることについても、留意する必要があると考えます。

【参照条文】

民法第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

(文責:長沢一輝)

2021年12月10日 10:49|カテゴリー:判例紹介, 未分類||コメントはまだありません
1
2022年5月
« 4月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

カテゴリー

最新の記事

アーカイブ