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ベンチャー法務の部屋

令和2年改正資金決済法の概要

1. はじめに

近年、キャッシュレス決済は私たちの生活に深く浸透しています。また、昨年来のコロナ禍において、他者との接触機会を減少させることができるというキャッシュレス決済の利点が、改めて着目されているようにも感じます。

このような風潮の中で、「キャッシュレス時代に対応した、利便性が高く安心・安全な決済サービスに対するニーズ」への対応を謳って、資金決済法が改正されました。改正法は、令和3年5月1日からすでに施行されています。以下では、改正の概要について、簡単にご説明します。

2. 資金移動業の規制の見直し

(1) 旧法下の規制

改正前の資金決済法(以下「旧法」と言います。)は、内閣総理大臣の登録を受けた資金移動業者について、1回あたり100万円以下の為替取引に限って、業として営むことができるものとしていました。

為替取引とは、法令上定義されないものの、一般的に、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して、資金を移動することをいうと解されています。いわゆるキャッシュレス決済は、現金を物理的に移動することなく、例えば商品の買主から売主に対して商品代金を移動させる取引ですから、為替取引に当たると解されます。

したがって、キャッシュレス決済サービスを提供するためには、サービスの規模にかかわらず一律に、資金決済法に基づく登録を受け、履行保証金の供託義務等を履行する必要がありました。また、1回あたり100万円を超える為替取引については、サービスの対象とすることができませんでした(ただし、銀行法に基づく為替取引を除きます。)。

(2) 改正の概要

改正後の資金決済法(以下「改正法」といいます。)は、新たに、以下のとおり、第一種資金移動業、第二種資金移動業、及び第三種資金移動業との類型を設けました。

(a) 第一種資金移動業:送金上限額の規制が撤廃されました。これにより、1回あたり100万円を超える高額送金についても、幅広い事業者による取扱いが可能となりました。

(b) 第二種資金移動業:基本的に、旧法に基づく資金移動業の枠組みを維持するものです。1回あたりの送金上限額は、従来どおり、100万円です。

(c) 第三種資金移動業:1回あたりの送金上限額は5万円と少額ですが、利用者資金の保全のための規制が緩和されました。これにより、少額サービスへの参入コストは、大きく軽減されるものと考えられます。

以上のとおり、資金移動業の類型化により、対象となる為替取引の範囲が拡張されるとともに、送金額やリスクに応じた過不足のない規制が適用されることとなり、柔軟な事業設計が可能となりました。

(3) コメント

今回の改正により、少額決済サービスについては、参入障壁が下がり、新規参入が積極化するものと期待されています。具体的な規制内容等については、お気軽にお問い合わせください。

3. 収納代行における利用者保護

(1) 収納代行とは

収納代行の典型例としては、コンビニエンスストアにおいて水道料金を支払う場合の取引が挙げられます。収納代行においては、(a) 商品等の提供者(例として、水道局)が、収納代行業者(例として、コンビニエンスストア)に対して代金等の回収を委託し、(b) 商品等の利用者が収納代行業者に対して代金等を支払うと、(c) 収納代行業者から商品等の提供者に対して支払が行われることによって、取引が完結します。

旧法では、収納代行に関する規制は設けられておらず、収納代行は資金移動業に該当しないと解されてきました。しかしながら、収納代行と称しつつ、実質的には送金サービスを提供するものについては、利用者保護のため、規制の必要性が認められます。

(2) 改正の概要

改正法では、新たに、収納代行であって、回収された資金の受取人が個人(ただし、事業者を除きます。)であるものについては、原則として、為替取引に該当することが明記されました。これにより、受取人が個人である収納代行サービスを営むためには、前記2に従って、資金移動業者として必要な登録等を受けることが必要となります。

上記の改正は、いわゆる「割り勘アプリ」を資金決済法による規制対象に含めることを主な目的として行われました。割り勘アプリは、例えば宴会において幹事が参加者の飲食代金をまとめて支払った場合に、幹事から他の参加者に対する飲食代金の回収を委託される収納代行サービスであると称されてきました。しかしながら、サービスの内容は、実質的には、他の参加者から幹事に対する送金にほかなりませんから、今回の改正により、新たに、資金決済法による規制の対象とされました。

ただし、上記の規定によれば、個人利用者保護のためのエスクローサービス(例えば、フリマアプリにおいて、購入した商品が交付されるまで、商品代金を出品者に支払わず、運営者の元にとどめておくこと)も為替取引に該当することとなります。エスクローサービスは、当事者間のトラブル防止機能を有することから、原則として為替取引からは除外されています。

(3) コメント

今回の改正に伴い、従前の収納代行サービスについては、サービス設計及び利用規約等の見直しが必要となる可能性があります。

(文責:和田眞悠子)

2021年12月13日 13:00

カテゴリー:企業法務

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