ここから本文です

ベンチャー法務の部屋

ジョブ型雇用

昨今、各種の報道等で、ジョブ型雇用という言葉を、目や耳にする機会が多いかと思います。

ジョブ型雇用とは、どのような雇用形態を指すのでしょうか。

記事等の内容からは、統一された定義は存在しないように思います。

厚生労働省の規制改革会議が公表した「ジョブ型正社員の雇用ルール整備に関する意見」(平成25年12月5日付け)では、ジョブ型正社員について、「職務、勤務地、労働時間いずれかが限定される正社員」と定義しています。

また、日本経済新聞電子版朝刊(2020年9月2日付け)では、「職務を明確にした上で最適な人材を配置する欧米などで一般的な雇用形態。終身雇用を前提に会社の一員となった社員が様々な職責を負う日本の「メンバーシップ型」雇用と対比される概念。労働時間ではなく、職務に対する成果や目標の達成度合いで賃金が決まる。欧米ではその職務がなくなったり、能力が不足したりした場合、雇用契約を解除されるケースが多い。」と記載されています。

このジョブ型雇用を導入する目的は、専門性に特化したプロフェッショナルな労働力の確保、子育てや介護等の関係から転勤を望まない正社員としての労働力の確保等であると考えられます。

昨今、ジョブ型雇用について、コロナ対策で、リモートワーク・テレワークが増加し、定着してきたことから、アフターコロナでは、ジョブ型雇用が増える(または増やすべき)といった内容が多いように思います。

たしかに、リモートワーク・テレワークのみを行う従業員について、「勤務地や勤務方法が限定された正社員」との観点から、ジョブ型雇用であると評価することも可能であるとは思います。しかしながら、本来、ジョブ型雇用は、多様な働き方に関する制度であり、必ずしもリモートワーク・テレワークとは関係がない制度です(現に、上記の規制改革会議の意見書は平成25年に作成されています。)。

個人的には、現在のジョブ型雇用に関する議論は、どちらかというと、ジョブ=職務を限定し、その職務と従業員との関係性を重視するものが多いように感じています。一般に、ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成して、従事すべき業務を明確にすることが予定されています。

そうだとすると、そのジョブディスクリプションに記載された業務が会社から無くなった場合、どのような対応をすべきなのでしょうか。上記の日経電子版の記事では、「欧米ではその職務がなくなったり、能力が不足したりした場合、雇用契約を解除されるケースが多い。」と紹介されています。

しかしながら、現在の日本の労働法では、会社が、正社員について雇用契約を解除(=解雇)した場合に、解雇の有効性を維持できることは多くありません。

会社と従業員ではなく、職務と従業員の結びつきを重視することを、ジョブ型雇用とするのであれば、会社内にその職務が存在しなくなった場合等に、会社と従業員との関係を、どのような設計にするのかについての十分な議論が重要です。具体的には、期間の定めのある雇用契約を活用したり、ジョブディスクリプションの記載方法に工夫する等の方策が考えられます。

ジョブ型雇用等の新たな制度を導入し、多様な労働力の確保をすることや、労働力の有効活用をすることは、本来、労使双方にとって有益であるはずです。社会全体にとっても、適切に、ジョブ型雇用が導入され、活用されることは、有益であり、個人的にも良いことであると考えています。他方、導入に際しては、当然ながら、現行の法制度に抵触してはなりませんし、現行の就業規則等の社内規定の修正が必要となることもありますので、慎重な検討が必要です。

当事務所では、ジョブ型雇用の導入に関するご相談はもちろん、労務面の法令適合性の確認(労務デュー・ディリジェンス)等のサービスも提供しておりますので、関心がおありの方は、お問い合わせください。

(文責:藤井宣行)

2020年09月23日 13:44

カテゴリー:ベンチャー・ビジネス, 企業法務||コメントはまだありません

2020年10月
« 9月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

カテゴリー

最新の記事

アーカイブ