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国際法務の部屋

ビジネスと人権に関する取組事例集について

外務省は、令和3年9月に、「ビジネスと人権」に関する取組事例集(以下「取組事例集」といいます)を発表しました。

 

外務省のウェブページによると、この取組事例集は、我が国では、「ビジネスと人権に関する指導原則」や人権デュー・ディリジェンス等が広く企業に十分認識されているところまでは至っていないと考えられることから、人権デュー・ディリジェンスについて、より具体的なイメージを提供するとともに、我が国における人権デュー・ディリジェンスの導入促進の一助とするために作成されています。

取組事例は、大きく、

(1)人権方針の策定

(2)人権デュー・ディリジェンスの実施

(3)救済メカニズムの構築

の観点から、各企業の取組事例をまとめて紹介しており、非常に参考になります。

 

具体的には、

(1)人権方針の策定については、「ビジネスと人権に関する指導原則」で人権方針の策定に際して要求される、①企業の経営トップが承認していること、②社内外から専門的な助言を得ていること、③従業員、取引先及び、製品やサービス等に直接関与する関係者に対する人権配慮への期待を明記すること、④一般公開され、全ての従業員や、取引先、出資者、その他関係者に向けて周知されていること、⑤企業全体の事業方針や手続に反映されていることの各ポイントについて、具体例をポイントを絞ってまとめてくれており、中小企業を含めて、今後人権方針の策定をする際に、参考になりそうです。

 

(2)人権デュー・ディリジェンスの実施の際に必要な下記①から④の視点に対応する形で、下記のような取り組み例が紹介されており、人権デュー・ディリジェンスを行う際の参考になります。

①人権への悪影響の評価

→第三者・外部専門家や、国際基準、国際NGOが提供している情報等を活用して人権リスク評価を行い、人権リスクが顕在化しやすい分野や国・地域、重点課題等を特定し、その上で、それらの分野や課題について重点的に監査等を実施することで、課題を更に特定

 

②調査結果への対処

→問題が発現した場合に措置を実施したり、取引先に対して改善を求める

 

③対応の追跡調査

→定期的なモニタリング

 

④対処方法に関する情報発信を実施すること

→取組を、各社ウェブサイトへの公表や、各種報告書の発行等を通じて、情報公開

 

(3)救済メカニズムの構築については、社内ホットライン、社外ホットライン、取引先向けホットライン、第三者による苦情受付窓口の整備、多言語対応窓口の設置などの取組事例が紹介されています。

 

また、取組事例では、大企業による取組事例を中心として紹介しているものの、「国連の指導原則は、その規模や業種にかかわらず、あらゆる企業に人権の尊重を求めています」として、中小企業の取組事例も紹介されています。

 

このように外務省が公表した、ビジネスと人権に関する各企業の取組事例からもわかるように、今後、企業の規模を問わず、ビジネスと人権に関して継続的な取組を行うことが求められます。

 

弊所では、ビジネスと人権に関する研修(新入社員・管理職研修、全従業員を対象としたEラーニング研修等)、経営層等を対象にしたビジネスと人権に関する講習会、取引基本契約書等における人権条項の整備、人権方針作成のサポート、人権デュー・ディリジェンスのアレンジなどSDGs関連サービスを幅広く提供しております。ぜひ、お気兼ねなくお問い合わせください。

 

(文責 河野雄介)

2021年11月16日 14:51|カテゴリー:

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SDGsSDGs、ESG、弁護士、法律

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企業に求められるSDGs

これまで、当事務所のブログでは多くのSDGs関連の情報を発信してきました。

今回は、「企業に求められるSDGs」として、その内容について整理したいと思います。

 

まず、2020年8月12日のブログでは、「SDGsのチャンスとリスク」として、企業がSDGsに取り組むことのチャンス、取り組まないことのリスクを紹介しました。

すなわち、SDGsが共通言語化してきた現在、企業がSDGsを本業に取り込み、環境・社会的課題の解決に資する製品やサービスを提供できれば、新たなビジネスチャンスに繋げることができる。他方で、SDGsは世界共通の達成目標として企業にとってのコンプライアンスの内容の1つとなっており、企業がSDGsに逆行する行動をとった場合、顧客からの取引停止や投資・融資の引き上げを受けるリスク、企業価値毀損のリスクに繋がる。ということを紹介しました。

このブログから1年以上が経過し、企業経営におけるSDGsのプライオリティはさらに上がっており、全ての企業にとってSDGsは経営課題となり、迅速な対応が求められています。

 

2021年6月に公表された東京証券取引所の改訂コーポレートガバナンスコードでは、サステナビリティに関する取り組みとして「人権の尊重」が盛り込まれました。このように、上場企業にとって、「人権の尊重」が重要な経営指針となっています。

 

そこで、企業が経営を行う上で、「人権の尊重」としてどのように取り組めばよいのか、ということが問題となります。この点について、2020年10月、日本政府は「『ビジネスと人権』に関する行動計画」を策定しました。

 

この中で政府は企業に対し、人権に関する取り組みについて、「政府から企業への期待表明」という形で対応を求めています。

具体的には、「政府は、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国際的に認められた人権及び『ILO宣言』に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し、『指導原則』その他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること、また、サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うことを期待する。さらに、日本企業が効果的な苦情処理の仕組みを通じて、問題解決を図ることを期待する。」と述べています。

 

これをまとめると、企業が政府から求められている対応は、

①人権方針の策定、②人権DDの実施、③苦情処理メカニズムの構築の3つに集約されます。

以下、①②③についてその内容を検討します。

 

①について

政府は企業に期待する「人権方針の策定」について、「人権方針の策定に必要な5つの要件」を明らかにしています。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100165001.pdf

その内容は、次の通りです。

1 企業の経営トップが承認していること

2 社の内外から専門的な助言を得ていること

3 従業員、取引先及び、製品やサービス等に直接関与する関係者に対する人権配慮への期待を明記すること

4 一般公開され、全ての従業員や、取引先、出資者、その他関係者に向けて周知されていること

5 企業全体の事業方針や手続に反映されていること

 

②について

人権デュー・ディリジェンスとは、人権への影響を特定し、予防し、軽減し、そしてどのように対処するかについて説明するために、人権への悪影響の評価、調査結果への対処、対応の追跡調査、対処方法に関する情報発信を実施すること」をいいます。

当事務所では、2020年11月に神戸市、ひょうご・神戸国際ビジネススクエア(神戸市海外ビジネスセンター、ひょうご海外ビジネスセンター、ジェトロ神戸)及び弊所が主催したセミナーにおいてこの人権デュー・ディリジェンスについても取り上げました。

具体的な内容については、2020年11月16日のブログをご参照ください。

 

③について

苦情処理メカニズムの構築の具体例については、2019年12月16日のブログで、不二製油グループのグリーバンスメカニズムを紹介しました。

グリーバンスメカニズムとは、ビジネスに関連した人権侵害が生じた場合に、影響を受ける人々が実効的な救済にアクセスできるための手続をいいます。

 

当事務所では、企業に求められるSDGsに関し、様々なサービスを提供しています。

一体何から取り組めばよいのかというスタートラインに立ったばかりの企業様も、既に自社での取り組みを進めているけれどもさらに専門家としてのアドバイスを求めたいという企業様も、いつでも気軽にお問い合わせを頂ければと存じます。

(文責:三村雅一)

繊維産業のサステナビリティに関する検討会報告書

2021年7月12日、経済産業省が繊維産業のサステナビリティに関する検討会報告書(以下「報告書」といいます)を取りまとめました。繊維業界におけるサステナビリティやSDGsの取組を検討するにあたり有用な指針と考えますので、本稿にてご紹介いたします。

まず、報告書の概要版では、報告書が公表された背景として、下記の点が挙げられています。

  • 現在、⽇本の繊維産業は、⼤きな転換期を迎えている。新型コロナウイルスの感染拡⼤に伴い、アパレル等の売上が⼤きく落ち込むとともに、「新たな⽇常」を踏まえた消費者ニーズの変化に⾒舞われている。
  • こうした中、新しい時代に向けて、今後の繊維産業を展望した時に、「サステナビリティ」が重要な視点として浮かび上がってくる。
  • サステナビリティについては、2015年のSDGs(Sustainable Development Goals︓持続可能な開発⽬標)の採択以降、国内外において、官⺠での取組が活発になっている。
  • ⽇本の繊維産業に⽬を向けると、⼀部の企業においてサステナビリティの取組は徐々に始まっているものの、⻑く複雑と⾔われるサプライチェーンの管理等、取組が⼗分になされているとは⾔い難い状況にある。
  • こうした状況を踏まえ、繊維産業におけるサステナビリティへの取組を促進するため、2021年2⽉に「繊維産業のサステナビリティに関する検討会」を設置。「新しい時代への設計図」を⽰すべく、議論・検討を進めてきた。報告書は、検討会の議論・検討をとりまとめるとともに、今後に向けた政策提⾔を⾏うものである。

 

そして、報告書では、サステナビリティに係る現状と今後の取組として、①環境配慮、②責任あるサプライチェーン管理、③ジェンダー平等、④供給構造、⑤デジタル化の促進について分析されているため、それぞれについて主要な点をピックアップしてご紹介します。

①環境配慮について

今後の取組としては、下記が挙げられています。

  • 環境配慮設計ガイドラインの策定(製品企画の段階から少ない資源で製品づくりを進めていくことの意識づけ等)
  • 回収システムの構築(店頭回収などを通じたリユース・リサイクル促進など、使用済み繊維製品の回収システムの構築)
  • 消費者の意識改革(消費者に対する情報発信の重要性等)

 

②責任あるサプライチェーン管理について

背景として、下記の記載があり、サプライチェーンの管理等が日本企業にとっても喫緊の課題となっていることがわかります。

  • ⽇本企業の中には、欧⽶企業と取引をする際にはサプライチェーンが適正に管理されているか等をチェックするデュー・ディリジェンスの実施が求められるケースが増えているとの声が聞かれる。
  • また、欧⽶を中⼼に繊維製品及びその⽣産⼯程における環境安全、労働、企業統治等への配慮に関する様々な認証が策定・運営されており、こうした国際認証(⺠間認証)の取得が求められる⽇本企業も増えている。
  • 国内の繊維産業においても、素材やサプライチェーン上の労働環境等に対して、各企業が責任をもって把握・対応することが期待される

そして、今後の取組としては、下記の点が挙げられております。最近、新聞等でも人権・デュー・ディリジェンスの重要性について報道される機会が増えてきましたが、繊維産業におけるサプライチェーン管理においても、人権デュー・ディリジェンスが重要であることがわかります。

  • デュー・ディリジェンスの実施(㋐政府は関係業界団体等と連携し、デュー・ディリジェンス実施の必要性等や、デュー・ディリジェンスにおいて、どのような事項が企業リスクとなり得るかについて分かりやすく説明するなどさらなる周知を⾏う、㋑企業がデュー・ディリジェンスを実施し、責任あるサプライチェーン管理を進めることにより、労働者の権利が保障され、⼗分な収⼊を⽣み出し、適切な社会的保護が与えられる⽣産的な仕事(ディーセント・ワーク)へとつながり得るため、業界団体において、企業がよりデュー・ディリジェンスに取り組みやすくするためのガイドライン策定する)
  • 国際認証取得に向けた環境整備(㋐サプライヤーである⽣地メーカー等に対して、国際認証取得の必要性を周知していく、㋑⽇本企業が、国内において国際認証に関してより容易に相談が可能となるよう、国内の監査機関等における⼈材育成や機関同⼠の連携の在り⽅などについて検討する)
  • 外国人技能実習生等への対応

 

③ジェンダー平等について

今後の取組としては、下記が挙げられています。

  • 官民ラウンドテーブル(政府や産業界の代表が⼀堂に会し、ジェンダー平等の重要性を共有・理解するとともに、先進的な取組事例(⼥性幹部候補の育成プログラム等)や企業が構築すべき⼈材育成の仕組み等について議論・共有する場)の設置
  • 繊維産業の将来を担うであろう若い世代に対するロールモデルの提示(ジェンダー教育の実施、ロールモデルの提示、既に活躍している⼥性リーダーが経験談やキャリア形成に係る取組等の事例を紹介する講座の開設等)

 

④供給構造について

今後の取組としては、下記が挙げられています。

  • デジタル技術の活用(購買データの標準化を進める、共有を促進する等の⽅策により、顧客管理や消費動向の把握を進める)
  • 顧客を中心に置いた事業展開の推進(消費者との持続的な関係が築き上げられれば、サイズの把握によりオンライン販売が容易となるほか、正価販売での購⼊率の向上、リペアサービスを含めた購⼊後の関係維持が可能)
  • 生産工程の改革(⽣産期間を短くするという取組、個々の好みや体型等に応じた個別の受注と従来の⽣産システムを IoT 等で連携し、オーダーメイドの⼀点物を⽣産・販売するマスカスタマイゼーションの取組)

 

⑤デジタル化の促進について

背景として、下記の点が挙げられており、サプライチェーンの管理のためにはデジタル化の促進が重要・有効であることがわかります。

  • サステナビリティの取組は、環境への配慮や労働環境整備など多岐にわたるものであり、取組を進めていくためには、多くの情報を集約・管理・分析することが必要となってくる。
  • また、これまで検討してきたサステナビリティの取組は、「サプライチェーンを管理する」という点において共通している。労働環境、使⽤している素材などを含めて、サプライチェーン上のどこでどういったことが起きているかを把握する必要性がある。
  • さらに、オンライン販売の増加や、顧客とのより⻑い関係性を重視する LTV を推進していくためには、消費者との接点の在り⽅を変えていくことが求められている。こうした取組を進めていく上で、デジタル技術による情報管理等は極めて有効である。

そして、今後の取組としては、下記が挙げられています。

  • 経営層への理解促進(デジタル技術の導⼊に当たっては、事業の⼀部に導⼊するよりも、企業全体としての導⼊を求められることが多々ある。そうした判断は、経営層が⾏うきものであり、担当者のみならず経営層にもデジタル技術への理解が必要)
  • 優良事例の横展開(サステナビリティに資するデジタル技術の活⽤優良事例も周知することで、繊維産業内における取組の活発化)
  • 支援施策の周知

まとめ

報告書の「おわりに」の部分には、

  • これまで、繊維産業において⻑く複雑なサプライチェーンを管理することへの取組は、進んでこなかった。しかし、今後、最終製品等に責任を持つことは所与のものとして⾒られるようになり、特にアパレル企業は素材や労働環境、⽣産量など、確実に把握していく必要がある。
  • さらに、そうした取組を進めていくためには、サプライチェーン上における企業の協⼒が必要であり、川上から川下まで、そして⼤企業から中⼩企業まで、取り組んでいくものである

との記載があります。

繊維産業におけるサプライチェーン管理の取組の重要性は高まる一方であり、大企業から中小企業まで企業の規模には関係なく、上記の指針を参考としながらサプライチェーン管理の具体的取り組みが必要と考えます。

弊所では、サプライチェーン管理に関する取り組みを支援させていただくために、取引基本契約書等でサプライチェーンに関する条項の整備、サプライチェーンの人権デュー・ディリジェンスなどSDGs関連サービスを幅広く提供しております。ぜひ、お気兼ねなくお問い合わせください。

文責 河野雄介

 

2021年08月18日 12:41|カテゴリー:

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SDGsSDGs、ESG、弁護士、法律SDGs、弁護士、法律

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東京オリンピックとSDGs①

東京オリンピックが閉会しました。

賛否両論ある中で開かれた大会でしたが、私は、アスリートの姿にパワーをもらいました。結果は様々ですが、出場した全てのアスリートが、後悔することなくこのオリンピックを終えたことを願わずにはいられません。8月24日から開幕する東京パラリンピックにおいても、全てのアスリートが力を発揮し、活躍されることを願っています。

 

さて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、その準備段階から、SDGsを指針に掲げていました。同委員会は、社会におけるスポーツの役割を改めて認識し、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京オリンピック」といいます。)を契機に、スポーツを通じて持続可能な社会に向けた課題解決への責務を果たす意思を明確にしてきました。このように、準備段階からSDGsを指針に掲げた夏季大会は、この東京オリンピックが初めてでした。

 

その一環として、東京オリンピックにおいては、大会の調達に関わるサプライチェーンへの取り組みとして、「持続可能性に配慮した調達コード」を設け、その不遵守に関する通報受付窓口を設置し、運用を継続してきました。

前者の、「持続可能性に配慮した調達コード」については、以前のブログで紹介をしました。

また、後者の「その不遵守に関する通報受付窓口」についても、「グリーバンスメカニズム」として、以前のブログで紹介しました。

 

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、「持続可能性報告書」として、各フェーズにおける報告書を公表しています。最新の報告書は、大会が始まる直前の2021年7月8日に出された「持続可能性大会前報告書追補版」になり、ここに「持続可能性に配慮した運営計画」で定めた取り組みの進捗や実績についての最新の報告が記載されています。

 

同報告書においては、前述の、「持続可能性に配慮した調達コード」の不遵守に関する通報受付窓口の実施状況についても報告がされています。

同窓口は、2021年4月末時点で計13件の通報を受け付けており、その内容について、個別の対応状況に至るまで報告書が公表されています。このうち、東京2020組織委員会が発注する建設現場の労働環境に関する通報で、通報受付窓口の対象案件に該当すると判断して処理手続きを行った案件があり、対応状況について個別の報告書が公表されています。

 

この点、環境保全団体であるWWFジャパンは、東京オリンピック開幕直前に、「未曾有のコロナ禍の中、開催にこぎつけた東京オリンピック・パラリンピック競技大会はSDGs時代の国際スポーツ大会に欠かせない『持続可能性』の取り組みが不十分だ」などとして、同大会組織委員会に対し、組織委自体が作成した、大会で使用する木材や紙、水産物、パーム油の個別の調達基準について、その調達結果を具体的な数値で開示するよう求める声明を発表しているとのことです。

また、大会期間中にも、大会スタッフらの弁当合計13万食の廃棄が行われていたことが判明しました。

 

この度、企業活動だけでなく、オリンピックというスポーツイベントを行うにあたっても、SDGsが重要な指針とされることが明らかとなりました。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、大会終了後にも、最終の持続可能性報告書を提出することになっています。

SDGsオリンピックを掲げて行われた東京オリンピックにおいて、どこまで「持続可能性に配慮した運営計画」で定めた取り組みが実現できたのか、引き続き見守りたいと考えています。

 

(文責:三村雅一)

2021年08月11日 10:47|カテゴリー:

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ウイグル族の強制労働問題とSDGs②

先日のブログで、「ユニクロ」を展開する株式会社ファーストリテイリング、「無印良品」を展開する株式会社良品計画の決算発表会見において、新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡り「新疆綿」に対する考えを問う質問が相次いだというニュースを紹介しました。

 

先日、このニュースに関連し、フランスの検察が、株式会社ファーストリテイリングのフランス法人などフランスで衣料品や靴を販売する4社に対して、人道に対する罪に加担した疑いで捜査を始めた旨の報道がありました。

 

この報道に対し、日本の加藤官房長官は、「近年、欧米諸国を中心に企業に対して人権デューデリジェンスの導入、関連する取り組みの開示などを義務付ける法整備が広がっている」と説明し、日本政府も昨年10月に企業活動における人権尊重の活動を図ることを目的とした「ビジネスと人権に関する行動計画」を策定したことを挙げ、「この行動計画の周知などを通じて、ビジネスと人権に関する一層の理解の促進と意識の向上による責任ある企業行動の促進を図っていきたい」と述べました。

 

今回のようなサプライチェーン上の人権侵害がもたらすリスクは、その対応によっては、投資の引き揚げや取引停止、ブランドの毀損、不買運動など広範囲におよび、企業・ブランドの存在意義に直結する問題といっても過言ではない旨指摘しましたが、フランスの検察が動いたという事実に照らすと、サプライチェーン上の人権侵害がもたらすリスクはそれにとどまるものではなくなってくるのかもしれません。

 

今回のウイグル族の強制労働問題でも明らかになったように、近年、アパレル業界では、環境負荷、労働環境に対して非常に厳しい目が向けられるようになっています。

 

このような流れの中で、環境負荷や労働環境などのパフォーマンスを数値化する「Higg Index(ヒグ・インデックス)」という指標を活用するアパレル業者が増えています。

 

これは、米サステナブル・アパレル連合(SAC)が提供する評価ツールであり、製品、工場、あるいはブランドによる環境・社会面への影響を、同一の方法で測り。業界全体において環境・社会への影響を比較可能にすることを目的としたものです。

 

具体的な運用について、実際に同指標を採用しているH&Mからは、「対象となる各製品には、その製品を作るために使用された素材の環境への影響に基づいてそれぞれスコアが付けられています。スコアは「標準値」から「レベル3」まであり、「標準値」は従来の素材や、環境への負荷がそれらと同等の素材を使用した製品に付けられる値です。「レベル1」、「レベル2」、「レベル3」は、より環境負荷の低い素材を使用した製品に用られ、従来の素材に比べて最も環境負荷が少ない素材を用いて作られた製品には「レベル3」が付けられます。また、各製品には、水の使用、地球温暖化、化石燃料の使用、水質汚染などへの影響に関する詳細なデータも表示されます。」という説明がされています。

 

また、H&Mからは、同指標の導入について、「より広範な透明性を提供することで、お客様はより多くの情報を得た上で購入判断をしていただくことが可能となります。」と説明されています。

 

こういった指標により、顧客がより簡単に商品の環境負荷に関する情報にアクセスすることでき、透明性を推進するという流れが生まれています。

 

このように、価格やデザインといった従来の価値観とは全く異なる価値観が商品を選ぶ際の基準となることで、サプライチェーン全体を見直す必要が生じる、これも、SDGsやESGに対する社会全体の意識の変化によってもたらされたものであるといえます。

 

当事務所では、これまでSDGsの専門家とともに、商工会議所、地方自治体、国内外の金融機関、企業等において、対象となる企業の規模を問わず、SDGsに関するセミナーを数多く行なってきました。この活動を通じて得た知見を基に、SDGsに関連した幅広いサービスの提供を始めています。(https://www.swlaw.jp/sdgs/

話だけでも聞いてみたい、そう思われた方は、いつでもお気軽にご連絡下さい。

(文責:三村雅一)

2021年07月19日 17:23|カテゴリー:

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ウイグル族の強制労働問題とSDGs

先日、「ユニクロ」を展開する株式会社ファーストリテイリング、「無印良品」を展開する株式会社良品計画の決算発表会見において、新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡り「新疆綿」に対する考えを問う質問が相次ぎました。

 

また、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は昨年、日本企業14社を含む大手グローバル企業83社の中国国内のサプライヤー工場で、ウイグル族が監視下に置かれ、移動や信仰などの自由を奪われた状態で強制労働させられていることを示す調査報告書を発表しました。

 

この14社に含まれるのは、日立製作所、ソニー、TDK、東芝、京セラ、三菱電機、ミツミ電機、シャープ、任天堂、ジャパンディスプレイ、パナソニック、良品計画、ファーストリテイリング、しまむらでした。

 

日本ウイグル協会と国際人権団体ヒューマンライツ・ナウによると、これら14社に対し、質問状を送る形で見解および対応策について調査を行ったとのことです。その結果、日立製作所、ソニー、TDK、東芝、京セラ、良品計画の6社は、サプライヤー工場に対して第三者監査を実施したと回答しており、京セラは「取引停止の可能性も含め検討している」と回答、三菱電機、ミツミ電機、シャープは指摘されたサプライヤーとの取引はないと否定するに留まり、パナソニックについては無回答だったとのことです。

 

以前からSDGsと企業活動というタイトルでブログをお届けしてきましたが、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる。ウイグル族の強制労働問題は、そういった時代が訪れるようになったことを示す一つの事例です。

 

今回のようなサプライチェーン上の人権侵害がもたらすリスクは、その対応によっては、投資の引き揚げや取引停止、ブランドの毀損、不買運動など広範囲におよび、企業・ブランドの存在意義に直結する問題といっても過言ではありません。

 

このSDGsの時代におけるコーポレートガバナンスとして、企業には、「ビジネスと人権に関する指導原則」で求められている、サプライチェーン上で発生する人権に関する負の影響・リスクを特定・評価し、予防や軽減、救済を行うプロセスである「人権デューデリジェンス」の実施が求められています。(ビジネスと人権に関する指導原則、人権デューデリジェンスについて過去記事参照

現在、EUでは、バリューチェーンにおける人権と環境に対するデューデリジェンスの義務化が進んでいます。また、日本でも2020年10月、政府がビジネスと人権に関する国別行動計画を発表し、その中で、人権を尊重する企業の責任を促すための国の取り組みとして、指導原則に基づく人権デューデリジェンスの実施を促しています。

 

さらに、2021年4月6日に公表された「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」においても、重要な経営課題として「サステナビリティをめぐる課題」が挙げられ、その中で、気候変動などの地球環境問題とともに人権の尊重が明記されました。

 

これからの企業経営においては、社会・環境への要請の更なる高まり、企業のグローバル展開に伴って生じる、海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への対応など、内外の激しい変化の中で革新的な対応が求められるようになっていくことは既に述べてきたとおりです。

 

その対応指針として、SDGsは大きな意味を持つことから、企業に携わる方々、そして企業法務に携わる我々弁護士も、SDGsの内容をしっかりと理解しておかなければなりません。当事務所においては、SDGsの側面からのコーポレートガバナンスに関するアドバイスも行わせて頂きます。お気軽にご連絡下さい。

 

(文責:三村雅一)

2021年04月23日 07:00|カテゴリー:

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