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国際法務の部屋

マネー・ローンダリング②

マネー・ローンダリングとは、一般的には、違法な起源を偽装する目的で犯罪収益を仮装・隠匿することを言います。

これまで公表され、耳目を集めたマネー・ローンダリング事案としては、①山口組系暴力団五菱会の幹部が「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」に違反して受領した犯罪収益をスイス連邦チューリッヒ州所在の金融機関に送金して隠匿したのに対し、同州が当該資産を没収したことを受け、両政府間で協議した結果、当該没収資産のうち、約50%に当たる2,897万9,738.88スイス・フラン(約29億円)をスイス連邦政府が日本国政府に譲与したいわゆる五菱会事件(平成20年4月22日 外務省報道発表より引用)、②日本の投資会社「ワールドオーシャンファーム」がフィリピンのマニラ近郊で営んでいるブラックタイガー養殖事業(東京ドーム300~450個分の広さ)や不動産事業などを投資対象とする匿名組合に出資して投資すると1年で倍になる(10日毎に5.556%、1年間で36回で合計100%の配当)との宣伝文句で多数の消費者から投資を募り、匿名組合員が他の投資家を紹介すると3~19%の紹介料を得られる仕組み(マルチ商法的要素)であり、口コミで被害が拡大した事案で、マネーローンダリング(米国の金融機関を経るなど)された資金が、米司法省により没収された事案(消費者庁ウェブページより引用)、③米国のトランプ元大統領の2016年の大統領選の際に、選挙対策委員長を務めていたPaul Manafort氏が、ウクライナ政権から受け取った巨額の顧問料をオフショア口座を経由した、不動産等購入の手法により資金洗浄していた事案等があります。

このように、マネー・ローンダリング事犯については、様々な類型がありますが、国家公安委員会がまとめた犯罪収益移転危険度調査書(令和2年)概要版では、我が国におけるマネー・ローンダリング事犯について、主体と前提犯罪に分けた詳細な分析がなされいます。

マネー・ローンダリング事犯の主体については、暴力団、特殊詐欺の犯行グループ、来日外国人犯罪グループが挙げられており、それぞれについて調査・分析が加えられています。

また、前提犯罪としては、窃盗、詐欺、電子計算機使用詐欺、出資法・貸金業法違反、常習とばく・賭博場開帳等図利、風営適正化法・売春防止法違反、薬物事犯が挙げられておりそれぞれについて犯行形態や手口が紹介されています。

我が国における、マネー・ローンダリング対策に関する法制度としては、一定範囲の事業者に顧客管理その他の防止措置の義務付けを課す、犯罪収益移転防止法や外為法、マネー・ローンダリングを犯罪として犯罪収益を収奪するための組織的犯罪処罰法や麻薬特例法等がありますが詳細な内容については、おってブログで取り上げたいと思います。

文責 河野雄介

2021年03月29日 13:17|カテゴリー:

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マネー・ローンダリング①

先日、河野弁護士と共に、『金融商品取引業者が押さえておくべきマネロン対策』と題する企業内セミナーを担当させて頂きました。

今後、河野弁護士と共にマネー・ローンダリングに関する情報をブログで提供していこうと考えています。

まず、今回は、マネー・ローンダリングに関する基礎的な知識について紹介します。

 

1 マネー・ローンダリングとは?

マネー・ローンダリング(money laundering)とは、違法な行為による収益の出所を隠すことであると言われています。具体的には、表に出せないようなお金を偽名で開設した金融機関の口座に隠匿したり、複数の預貯金口座に次々と移動させたり、不動産を購入したり、様々な方法によってその出所を分からなくするための行為を指します。

このマネー・ローンダリング(money laundering)という言葉は、アメリカのギャングであったアル・カポネがコインランドリーをマネー・ローンダリングに利用したことに由来すると言われています。すなわち、犯罪によって稼ぎ出した膨大なお金を合法的な収入に見せかける方法として、アル・カポネは、現金払いで商売をするコインランドリーをいくつも買って、汚れた金をきれいな金に紛れ込ませ、賭博や密売ではなくアメリカ一般市民のシャツや靴下を洗濯することで富を築いたのだと言ってのけたとのことです。

マネー・ローンダリング(money laundering)の「launder(ラウンダー)」とは、日本語で「洗濯する」という意味です。したがって、マネー・ローンダリングは、「資金洗浄」と訳されます。

アル・カポネの時代と比べ、マネロンの規模と複雑さは格段に増していると言われています。2018年の国連の推計によれば、1年間に資金洗浄される犯罪収益は1兆6千億ドルから4兆ドルで、全世界GDPの2~5%にのぼるとのことです。

この度、我々がマネロンセミナーを開催させて頂いた企業は、不動産事業に関連する企業でした。この点、不動産とマネロンの関係について、国際通貨基金(IMF)の法律局長による、「悪弊を一掃する」というタイトルの記事では、次のように紹介されていました

「ある意味では、高級物件は現代のギャングにとってのコインランドリーだ。米国当局が昨年(2017年)発行した公告によれば、ニューヨーク市などいくつかの大都市圏における高額で現金決済の不動産購入の3割以上が、既に疑わしい取引への関与が疑われている人物によるものだった。オーストラリア、オーストリア、カナダをはじめとする各国の政府は、自国の不動産市場が不正資金の投資や洗浄に使われる可能性があると結論づけている。」

このように、不動産とマネロンは非常に密接な関係にあると言えます。

 

2 マネー・ローンダリングはどのように行われるのか?

マネロンに用いられる手法は様々であり、時代によって変化しますが、そのプロセスについては3つの段階に分解できると考えられています。

①プレイスメント(預入)

第1段階は、犯罪によって得られたお金を金融システムに取り込む、あるいは合法的な商取引の流れに取り込む段階への資金の取り込む段階です。

例えば、犯罪収益(現金)を銀行口座に預け入れる方法、現金を多く取り扱う業種(カジノ、小売業者等)において、合法的な事業による売上金の中に犯罪収益を混入させる方法などが考えられます。

②レイヤリング(分別)

第2段階は、金融システムに取り込まれた犯罪資金の出所を分からなくするための処理です。例えば、複雑な送金取引を繰り返して資金の追跡を困難にする方法や、国際的な送金取引(マネロン規制の緩い国等)を利用したり、実体のない法人名義の口座を経由させる方法などによって資金の流れを不透明なものにします。

③インテグレーション(統合)

第3段階は、出所を隠ぺいした犯罪資金を、合法的なビジネスによる収益等であるように偽装するなどして、表の経済に統合させる処理です。

このフェーズは、「正当化」と「投資」の2つのフェーズから構成されると言われています。「正当化」とは、正当な事業資金への組み入れ(例:金融機関からのローンを不必要に借り入れて、資金の原資は金融機関からの借入金であるように偽装する方法)のことを言います。「投資」とは、手元に残った洗浄済み犯罪収益を大手を振って利用する段階のことを言います。

先ほどの不動産取引が出てくるのは、この第3段階となります。不動産取引がマネロンの手法として利用されるのは、不動産は一般的に価格が安定し、将来の値上がりが期待できる点、1回の取引で大量の資金を移動できる点が主な理由となっているようです。このような理由から、不動産取引はマネロンの方法として用いられるリスクが高い取引であると言われています。

 

次回以降、マネロンに対する規制の内容について説明します。

 

当事務所では、AML/CFT(Anti-Money Laundering/Counter Financing of Terrorism)(マネー・ローンダリング防止/テロ資金供与防止)のための規程整備、態勢整備に関するアドバイス、セミナーも行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

 

(文責:三村雅一)

2021年03月12日 13:23|カテゴリー:

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マネロン

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シンガポール調停条約と日本での仲裁法等改正(調停合意への執行力付与)

2020年9月12日「国際的な調停による和解合意に関する国際連合条約」(シンガポール調停条約)が発効しました。日本は、まだ批准していません。

この条約は、調停の結果として当事者が締結した和解合意に対して、判決や仲裁判断と同様に執行力を与えるものです。当事者が調停による和解合意で定めた義務を任意に履行しない場合に、強制執行を求めるためには、従来であれば改めて訴訟等を提起する必要がありましたが、今後、同条約の締結国においては、訴訟等を提起することなく、当該和解合意に基づき強制執行を行うことができるようになりました。

これに関連して、日本でも調停合意への執行力付与へ向けて、法務省の法制審議会仲裁法部会で、議論がなされています。

法制審議会仲裁法制部会第5回会議(令和3年2月12日開催)では、
仲裁法等の改正に関する中間試案のたたき台(1) 暫定保全措置関連【PDF】、及び
仲裁法等の改正に関する中間試案のたたき台(2) 調停による和解合意関連【PDF】
が提示されました。(1)は仲裁に関連するものであり、(2)は調停に関するものです。シンガポール調停条約と関連するものは(2)になります。

この中間試案のたたき台(2)では、日本で調停による和解合意に対する執行力の付与の範囲として、主として以下の3つの案が提示されています。
甲案 国際事案に限定
乙1案 国際・国内問わず適用
乙2案 国際事案+ADR認証機関によるなど一定の限定された国内事案

また、以下のような一定の紛争類型については、適用除外とする旨の規定も提案されています。
(1)消費者と事業者の契約に関する民事紛争
(2)個別労働関係紛争
(3)人事に関する紛争その他家庭に関する紛争

日本には、京都に「京都国際調停センター」があり、大阪と東京に「日本国際紛争解決センター」があります。

費用等の観点から 国際仲裁の利用を逡巡する場面であっても、国際調停であれば、活用できることもあるため、今後の国際紛争の選択肢として、「調停」が脚光を浴びる土壌が整いつつあります。

もし、国際紛争に巻き込まれそうになっている方は、是非、国際調停の活用を検討いただければと思います。また、活用に際して、相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。

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