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国際法務の部屋

新型コロナウイルスと不可抗力について(2)

私の前回のブログで、2月17日のジェトロ大阪でのセミナーについてご案内していましたが、私と共同のスピーカーが中国から来日する中国人弁護士であったこともあり、残念ながら、開催が延期となりました。延期後の日時が決まりましたら、改めて、ご案内させていただきます。

 

 

さて、先日、当事務所のマネージングパートナーである河野弁護士が、ブログ「新型コロナウイルスと不可抗力について」において、新型コロナウイルスの流行に起因して、契約上の債務を履行できないケースについて、日本法の観点から説明をしてくれています。

 

 

今回のブログでは、中国法の観点から、若干の説明をしたいと思います。

 

 

1.契約書に、不可抗力免責に関する条項がある場合

この場合は、日本法を準拠法とする場合と同様、契約文言の規定に、「疫病」等の文言が明記されているか、明記されていないとしても「その他の不可抗力」といった文言の有無を確認することになります。

 

そのうえで、今回の状況が、規定されている文言に該当するか、あてはめの作業をすることになります。その内容については、下記2を参考にしてください。

 

 

2.契約書が存在しない、または、契約書に不可抗力免責に関する条項がない場合

準拠法が中国法であれば、契約による修正がないことから、中国法の一般原則が適用されることになります。

中国法では、「不可抗力」について、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性が客観的に存在することを要求しています(通則153条、民法総則180条2項、契約法117条等)。

 

新型コロナウイルスの発生や流行自体については、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性が客観的に存在すると考えられます。

 

しかしながら、各企業が直面している契約上の債務の履行に関する障害については、その具体的な状況(ビジネスモデル、実際に利用する運送の状況等)は様々であると考えられますので、ケースバイケースで、個別の検討を要するでしょう。

 

2002年にSARSが流行した際、最高人民法院は、SARS の流行について不可抗力に該当するとの判断をしたものの、不可抗力に該当する事由について、災害拡大防止のための行政措置を直接の原因とする場合等、一定の場合に限定しましたので、当該事由該当性を、個別に判断する必要がありました。

 

なお、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)が、新型コロナウイルスについて、不可抗力にあたる事実が発生したとする証明書を発行しています。CCPITは、あくまで1つの機関であり、不可抗力該当性を判断するのは、最終的には裁判所(人民法院)ですから、当該証明書は、不可抗力該当性を肯定する方向の重要な証明手段の1つであるという位置付けになると考えます。

 

また、そもそも、不可抗力免責は契約の拘束力から例外的に解放する制度ですから、その適用は、本来的に謙抑的になる性質を有するものです。

 

したがって、新型コロナウイルスに起因して、契約上の債務の履行に障害が生じている場合、まずは、協議により解決を図ることが最優先でしょう。そのうえで、自社の状況が、不可抗力に該当するかについて、契約書等の存在を確認しつつ、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性の観点から、冷静に、自社に関する状況を分析することが肝要であると考えます。

 

(文責:藤井宣行)

2020年02月26日 09:23|カテゴリー:

中国法務

|タグ:

コロナ,不可抗力,免責

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インドネシア法務②

先日のブログ(https://www.swlaw.jp/cross_border_blog/%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%8d%e3%82%b7%e3%82%a2%e6%b3%95%e5%8b%99/)でも紹介したとおり、私は昨年10月に、インドネシアのジャカルタにあるMartia & Anggraini Partnershipにおいて研修をさせて頂きました。

今回は、インドネシアに関する情報を紹介します。

現在2期目を務めるジョコウィ大統領は、建国100周年にあたる2045年には、GDPが7兆ドルに達し、経済で世界5位に入る、貧困率も0%とする、という目標を掲げています。目標達成に向けたジョコウィ大統領の動きはニュースでも紹介されています。

1 ジャカルタからカリマンタン島東カリマンタン州への首都移転計画

昨年8月には、インドネシアの首都を現在のジャカルタからカリマンタン島(ボルネオ島)の東カリマンタン州に移転させることが決定されました。

首都移転の理由は、現在の首都ジャカルタに経済機能やインフラ上の負担が増加しており、ジャワ島に全人口の54%、GDPの58%が集中していることなどから、政府としてジャワ島とジャワ島外の格差是正を図る必要があることなどが説明されています。

また、カリマンタン島を選定した理由としては、自然災害のリスクが少ないこと、全国土の中央に位置すること、インフラが比較的整っていること、18万ヘクタールの利用可能な用地があること等が挙げられています。

なお、首都移転後も引き続きジャカルタが経済活動の中心と位置付けられ、首都は政治機能の中心として位置づけられるとされています。

今後、2024年中には政府機関の移転を開始する予定であるとのことです。

この首都移転には、466兆ルピア(約3兆4,484億円、1ルピア=約0.0074円)の費用がかかると見込まれているところ、ジョコウィ政権は、特に海外からの投資を呼び込むために国際的な著名人を首都移転を促進する運営委員会のメンバーに任命して、首都移転の「顔」として投資誘致に結び付けようとしていると言われています。同委員会のメンバーにはソフトバンクの孫会長、英国のトニー・ブレア元首相、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・アブダビ皇太子等が任命されたことが明らかにされています。そして、今年の1月には、ソフトバンクグループが、インドネシアの首都移転計画に最大400億ドルを投資することを提言したとの報道がありました。額については明らかになっていないものの、ソフトバンクグループが、インドネシアの首都移転計画に際し、ソフトバンクグループや投資先の持つ人工知能(AI)などを活用し、最先端のスマートシティー作りに協力する予定であると言われています。

2 オムニバス法案

経済成長を進めるため、ジョコウィは海外からの投資促進のため、その妨げとなってきた法律を改正すると発言してきました。そして今年の1月22日には、政府は、投資の支障となっているとされる、内容が重複する法律を置き換え、複数の法令の内容を一本化することを目指すオムニバス法案(一括法案)として国会に提出し、今国会審議の最優先法案にすると発表しました。この法改正は、投資促進を目的として行われる改正であるところ、オムニバス法として整理統合される法案は多岐にわたり、従業員の採用、解雇手続きの簡素化、法人税引き下げを含む税制改革、土地に関する権利の簡素化などの関連1244条項、79法案が対象となっているといわれています。インドネシアの規制や手続は非常に煩雑であると言われているため、日本を含む海外の企業には歓迎される改正であると言われています。この点、マイクロソフトが「オムニバス法」の成立を待って、インドネシアにローカルデータセンターを設立予定と発表するなど、今後インドネシアにおける法整備が進むことで、さらに海外直接投資が増加することが期待されています。今後、上記オムニバス法案の概要についても研究し、ご紹介できればと思います。

(文責:三村雅一)

以上

新型コロナウィルスと不可抗力について

中華人民共和国湖北省武漢市において、昨年12月以降、新型コロナウイルス感染症の発生が複数報告されて以来、日本を含めた世界各地でも患者発生報告が続いています。

このような状況は、中国に関連する取引に少なからず影響を与えるものと考えられます。

たとえば、製品を購入するためにすでに売買契約が締結されているものの、今回の新型コロナウィルス感染症影響により、売主側の中国企業(日本企業の中国子会社を含みます)が輸送業者を手配することができない又は通関を受けることができない等の理由で、当該売買契約で定められた納品期限に買主側である日本企業に納品することができなかったというケースが考えられます。このような場合に、目的物を引き渡す債務を履行できなかった売主は、債務不履行責任を負うのでしょうか。

 

この点については、売買契約書に下記のような不可抗力条項が定められていることがよくあります。

 

「いずれの当事者も、自らの合理的な支配の及ばない状況(火事、停電、ハッキング、コンピューターウィルスの侵入、地震、洪水、戦争、疫病、通商停止、ストライキ、暴動、物資及び輸送施設の確保不能、又は政府当局による介入を含むがこれらに限定されない。)により本契約上の義務の履行が遅延した場合、その状態が継続する期間中相手方に対し債務不履行責任を負わないものとする。」

 

仮にこのような不可抗力条項が、売買契約書に盛り込まれていた場合は、新型コロナウイルス感染症が、自らの合理的な支配の及ばない状況として例示列挙されている「疫病」に該当するかの解釈が問題となると思われます。

 

また、このような不可抗力条項が定められていない場合、日本の民法では、不可抗力は債務不履行(金銭債務の不履行を除く。)に基づく損害賠償義務の抗弁となると解されます(民法419条3項)

 

以上のとおり、契約書に記載がある場合はその文言や解釈にもよりますが、今回のケースで、納品が遅滞したとしても、疫病を不可抗力として納品できないことの遅行遅滞責任は、負わないと解される可能性は十分にあると考えます。

 

なお、この点に関して、中国国際貿易促進委員会は2020年1月30日に、新型コロナウィルスに関する不可抗力事実証明書を発行することとし、申請のための必要書類の情報などを公布しました。

http://www.ccpit.org/Contents/Channel_4131/2020/0130/1238886/content_1238886.htm

 

新型コロナウィルスに関連して、自己の債務について履行遅滞を起こしているような場合は、この不可抗力事実証明書を入手しておくことで、当該履行遅滞が不可抗力によるものであることを証明するのに役立つものと思われます。

文責 河野雄介

2020年02月10日 13:17|カテゴリー:

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