国際法務の部屋

マネー・ローンダリング②

2021.03.29

マネー・ローンダリングとは、一般的には、違法な起源を偽装する目的で犯罪収益を仮装・隠匿することを言います。

これまで公表され、耳目を集めたマネー・ローンダリング事案としては、①山口組系暴力団五菱会の幹部が「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」に違反して受領した犯罪収益をスイス連邦チューリッヒ州所在の金融機関に送金して隠匿したのに対し、同州が当該資産を没収したことを受け、両政府間で協議した結果、当該没収資産のうち、約50%に当たる2,897万9,738.88スイス・フラン(約29億円)をスイス連邦政府が日本国政府に譲与したいわゆる五菱会事件(平成20年4月22日 外務省報道発表より引用)、②日本の投資会社「ワールドオーシャンファーム」がフィリピンのマニラ近郊で営んでいるブラックタイガー養殖事業(東京ドーム300~450個分の広さ)や不動産事業などを投資対象とする匿名組合に出資して投資すると1年で倍になる(10日毎に5.556%、1年間で36回で合計100%の配当)との宣伝文句で多数の消費者から投資を募り、匿名組合員が他の投資家を紹介すると3~19%の紹介料を得られる仕組み(マルチ商法的要素)であり、口コミで被害が拡大した事案で、マネーローンダリング(米国の金融機関を経るなど)された資金が、米司法省により没収された事案(消費者庁ウェブページより引用)、③米国のトランプ元大統領の2016年の大統領選の際に、選挙対策委員長を務めていたPaul Manafort氏が、ウクライナ政権から受け取った巨額の顧問料をオフショア口座を経由した、不動産等購入の手法により資金洗浄していた事案等があります。

このように、マネー・ローンダリング事犯については、様々な類型がありますが、国家公安委員会がまとめた犯罪収益移転危険度調査書(令和2年)概要版では、我が国におけるマネー・ローンダリング事犯について、主体と前提犯罪に分けた詳細な分析がなされいます。

マネー・ローンダリング事犯の主体については、暴力団、特殊詐欺の犯行グループ、来日外国人犯罪グループが挙げられており、それぞれについて調査・分析が加えられています。

また、前提犯罪としては、窃盗、詐欺、電子計算機使用詐欺、出資法・貸金業法違反、常習とばく・賭博場開帳等図利、風営適正化法・売春防止法違反、薬物事犯が挙げられておりそれぞれについて犯行形態や手口が紹介されています。

我が国における、マネー・ローンダリング対策に関する法制度としては、一定範囲の事業者に顧客管理その他の防止措置の義務付けを課す、犯罪収益移転防止法や外為法、マネー・ローンダリングを犯罪として犯罪収益を収奪するための組織的犯罪処罰法や麻薬特例法等がありますが詳細な内容については、おってブログで取り上げたいと思います。

執筆者
河野 雄介
マネージングパートナー/ニューヨーク州弁護士/弁護士

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