国際法務の部屋

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会における、「持続可能性に配慮した調達コード」について

2018.10.10

1 はじめに

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「大会」といいいます)の運営のための、原材料調達等について、大会の組織委員会は、

(1)どのように供給されているのかを重視する

(2)どこから採り、何を使って作られているのかを重視する

(3)サプライチェーンへの働きかけを重視する

(4)資源の有効活用を重視する

という4つの基本原則(「基本4原則」)を掲げています。

具体的には、(1)については、大会の組織委員会は、人権の尊重(製造過程における差別やハラスメントの排除、不法な強制立ち退き等の権利侵害のない物品・サービスの提供)、適正な労務管理と労働環境への配慮(強制労働や児童労働がなされていないこと、安全衛生が確保されていること、労働者の諸権利が法令に照らして確保されていること)、公正な取引(贈賄等の腐敗行為の禁止、ダンピングや買いたたきなどの不公正取引がないこと)、適正な環境保全への配慮(低炭素エネルギーや、省エネルギーの推進、環境負荷の低減など)を重視するとされています。

(2)については、大会の組織委員会は、①地球環境の保全のために、森林・海洋などの資源の保全や生物多様性に配慮した適切な採取・栽培、低炭素エネルギーの活用、省エネルギーの推進、大気・水質・土壌等の環境に配慮した原材料の使用に努めること、②人権や地域住民の生活、社会の安定に対して悪影響を及ぼす原材料(強制労働により採掘された原材料、紛争鉱物、違法伐採木材等)の使用の回避を求めること、③リユース品及び再生資源を含む原材料の使用並びに容器包装等の最小化に努めることを、サプライヤーやライセンシーに対して求めるとされています。

(3)については、組織委員会は、サプライヤー及びライセンシーに対し、組織委員会が調達する物品・サービス等について、サプライチェーンにおいても本調達コード並びにトレーサビリティー及び透明性の確保に努めるよう求めるとされています。

(4)については、組織委員会は、①調達にあたって調達総量をできるだけ抑制したうえで、新品だけでなく、再使用品やリース・レンタル品の活用も検討すること、②サプライヤー及びライセンシーに対し、日本の「もったいない精神」を活かして、可能な限り再使用・再生利用が容易な資材・物品を提供することや使用時の省エネルギー等に配慮した物品・サービスを提供することを求めること、③調達した物品の再使用及び再生利用を推進することとされています。

 

2 持続可能性に関する確認について

そして、上記の基本4原則を受けて、持続可能性に関する確認について、大会の組織委員会では、2018年3月以降に調達手続きを開始する案件については、事業者の選定にあたり、持続可能性の確保に向けた取組状況に関するチェックリストや誓約書の提出を求めることとなっているようです。

このチェックリストの様式や記載例、誓約書の雛形もウェブページからダウンロードすることができます。

3 まとめ

上記の基本4原則や、持続可能性の確保に向けた取り組み状況のチェックリストは、大会への物品やサービスの納入を考えていない場合であっても、会社における環境問題、人権問題、労働問題(国際的労働基準の遵守・尊重、結社の自由や団体交渉権の尊重、強制労働の禁止、児童労働の禁止、雇用及び職業における差別の禁止、賃金の適正な支払、長時間労働の禁止、労働環境の整備)、公務員に対する贈賄等の腐敗防止、公正な取引慣行の推進(独占禁止法や下請法の遵守)、知的財産権の保護、紛争や犯罪に関与する原材料の使用防止、マーケティングにおける不当表示等の防止、情報の適切な管理(個人情報保護)などの取り組み状況について確認されるうえで、有用な視点、ツールとなります。

また、ご紹介したようなトレンドは、すでに契約実務にも取り込まれており、特に、欧米の規模の大きな企業が提示してくる製造委託契約書や売買契約書には、上記のような取り組み状況について、詳細な規定がCode of Business Conduct and Ethics(業務遂行及び倫理に関するコード)等の表題で別紙として設けられ、契約書本文内で、当該コード記載の内容につき遵守する義務を負い、当該コードの記載内容の違反は契約違反となるとの条項が設けられることが多くなってきました。

このように、普段から基本4原則やチェックリストを確認し、各項目について不十分な部分や遵守できていない部分があれば、随時改善を行っておかれると、大会に物品やサービスを提供することになった場合も含めて、いざというときに有用であると考えます。

参考Webサイト(持続可能性に配慮した調達コード

文責:河野雄介

執筆者
S&W国際法律事務所

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