国際法務の部屋

シンガポール調停条約と日本での仲裁法等改正(調停合意への執行力付与)

2021.03.05

2020年9月12日「国際的な調停による和解合意に関する国際連合条約」(シンガポール調停条約)が発効しました。日本は、まだ批准していません。

この条約は、調停の結果として当事者が締結した和解合意に対して、判決や仲裁判断と同様に執行力を与えるものです。当事者が調停による和解合意で定めた義務を任意に履行しない場合に、強制執行を求めるためには、従来であれば改めて訴訟等を提起する必要がありましたが、今後、同条約の締結国においては、訴訟等を提起することなく、当該和解合意に基づき強制執行を行うことができるようになりました。

これに関連して、日本でも調停合意への執行力付与へ向けて、法務省の法制審議会仲裁法部会で、議論がなされています。

法制審議会仲裁法制部会第5回会議(令和3年2月12日開催)では、
仲裁法等の改正に関する中間試案のたたき台(1) 暫定保全措置関連【PDF】、及び
仲裁法等の改正に関する中間試案のたたき台(2) 調停による和解合意関連【PDF】
が提示されました。(1)は仲裁に関連するものであり、(2)は調停に関するものです。シンガポール調停条約と関連するものは(2)になります。

この中間試案のたたき台(2)では、日本で調停による和解合意に対する執行力の付与の範囲として、主として以下の3つの案が提示されています。
甲案 国際事案に限定
乙1案 国際・国内問わず適用
乙2案 国際事案+ADR認証機関によるなど一定の限定された国内事案

また、以下のような一定の紛争類型については、適用除外とする旨の規定も提案されています。
(1)消費者と事業者の契約に関する民事紛争
(2)個別労働関係紛争
(3)人事に関する紛争その他家庭に関する紛争

日本には、京都に「京都国際調停センター」があり、大阪と東京に「日本国際紛争解決センター」があります。

費用等の観点から 国際仲裁の利用を逡巡する場面であっても、国際調停であれば、活用できることもあるため、今後の国際紛争の選択肢として、「調停」が脚光を浴びる土壌が整いつつあります。

もし、国際紛争に巻き込まれそうになっている方は、是非、国際調停の活用を検討いただければと思います。また、活用に際して、相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。

執筆者
森 理俊
マネージング・パートナー/弁護士

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