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国際法務の部屋

SDGs2022

2022年1月1日のニュースで、経団連の十倉会長が、年頭に合わせて、報道各社のインタビューに応じた内容が報道されました。

NHKの記事によると、「同インタビューに対する回答の中で、十倉会長は、この中で、中国の新疆ウイグル自治区で強制労働が広く行われているなどと指摘される中、人権問題をめぐる企業の対応に厳しい視線が注がれていることについて『国際的に事業活動を行ううえで、人権は欠かせない案件になってきた。企業も社会を構成する一員なので、社会規範はしっかり守らないといけないという厳しい認識を持つべきだと思う』と述べました。そのうえで『各企業は、人権の重要性を自主的に判断して、しっかり取り組むべきだと言っている』として、企業に対し、強制労働によって生産されたものがないかなど、製品の供給網=サプライチェーンの透明化を呼びかけていく考えを示しました。」とのことです。

 

SDGsに関する記事を紹介する中で、全ての企業にとってSDGsは経営課題となり、迅速な対応が求められていることについては既にお伝えしてきた通りです。

また、2021年6月に公表された東京証券取引所の改訂コーポレートガバナンスコードでも、サステナビリティに関する取り組みとして「人権の尊重」が盛り込まれるなど、上場企業にとって、「人権の尊重」が重要な経営指針となることについてもすでにお伝えしてきました。

 

この点、十倉会長からは、「各企業は、人権の重要性を自主的に判断して、しっかり取り組むべきだと言っている」との指摘があったようですが、企業にとって、人権の重要性を自主的に判断し、取り組む、ということは決して容易ではないと感じています。

 

日本政府は、企業が経営を行う上で、「人権の尊重」としてどのように取り組めばよいのか、ということについて、2020年10月、日本政府は「『ビジネスと人権』に関する行動計画」を策定しています。この内容についても、過去のブログで紹介していますので、ご参照ください。

 

これに加え、法務省は、「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応」という資料を公表しています。同資料では、企業が尊重すべき主要な人権と人権に関するリスクの内容や近年の動向、人権に関する取り組みが事業活動に与える影響、企業による人権への取り組みとしてどういった取り組みを行なうべきかといったことについて分かりやすく紹介されています。

 

弊所では、ビジネスと人権に関する研修(新入社員・管理職研修、全従業員を対象としたEラーニング研修等)、経営層等を対象にしたビジネスと人権に関する講習会、取引基本契約書等における人権条項の整備、人権方針作成のサポート、人権デュー・ディリジェンスのアレンジなどSDGs関連サービスを幅広く提供しております。

法務省作成の資料は約80ページという厚い内容となっているため、同資料に関する解説、同資料を踏まえて、企業に求められる人権尊重への取り組みを、例えば社内規程や契約書類にどのように落とし込んでいくのかといった点に関するご相談も含め、ぜひ、お気兼ねなくお問い合わせください。

 

(文責:三村雅一)

国際社会における日本のSDGs達成状況

2020年10月に、日本政府が「ビジネスと人権に関する行動計画」を策定したこと、政府としてはこの行動計画の策定を、SDGsの実現に向けた取り組みの一つとして位置付けている旨、明言していることについては、先日の「企業に求められるSDGs」のブログにおいて紹介しました。

このように、政府が率先してSDGsを推進している日本のSDGsの達成度は、国際的にどのレベルにあるのか、また17のゴールの中で、どのゴールが特に課題とされているのか、という点について紹介します。

ドイツのBertelsmann StiftungとSustainable Development Solutions Networkは、毎年6月に「Sustainable Development Report(持続可能な開発報告書)」を公表し、その中で、国連に加盟する193カ国のSDGs進捗状況を評価し、採点し、ランク付けしています。

2021年6月14日に発表された持続可能な開発報告書によると、2020年の日本のランクは18位でした。これは、過去最低だった2016年に並ぶランクとなっています。
ちなみに、日本より上位の17か国は、上から順に、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギー、オーストリア、ノルウェー、フランス、スロベニア、エストニア、オランダ、チェコ、アイルランド、クロアチア、ポーランド、スイス、イギリスとなっています。
アメリカは32位、中国は57位でした。

同報告書によると、日本では、「4:質の高い教育をみんなに」、「9:産業と技術革新の基盤を作ろう」、「16:平和と公正をすべての人に」といったゴールについては、「SDG achieved」として高い評価を受けている一方で、「5:ジェンダー平等を実現しよう」、「13:気候変動に具体的な対策を」、「14:海の豊かさを守ろう」、「15:陸の豊かさも守ろう」、「17:パートナーシップで目標を達成しよう」については、「Major challenges」として深刻な課題がある旨指摘されています。

課題とされているゴールの中でも特に法律と関わりが深いと考えられる「5:ジェンダー平等を実現しよう」についてより詳しく見ていきます。同報告書においては、それぞれのゴールに対する達成度の評価に際し、「Performance by Indicator」として指標が示されています。そして、「5:ジェンダー平等を実現しよう」のゴールについては、6つの指標が示されています。その指標の中で、深刻な課題を抱えていると評価されているのが、
・Seats held by women in national parliament (国会における女性議員の割合)
・Gender wage gap (賃金のジェンダー格差)
・Gender gap in time spent doing unpaid work(無償労働時間(家事等)のジェンダー格差)
の3つの指標です。

また、「13:気候変動に具体的な対策を」においては、
・CO2 emissions from fossil fuel combustion and cement production(化石燃料の燃焼とセメント製造によるCO2排出量)
・CO2 emissions embodied in imports(輸入品に含まれるCO2排出量)
の指標について深刻な課題を抱えていると評価されています。

さらに、「14:海の豊かさを守ろう」、「15:陸の豊かさも守ろう」においては、生物多様性にとって重要な保護区域が侵されている点など、設けられた指標の大部分において深刻な課題を抱えていると評価されています。

2030年までのSDGsの実現を強く進めようとしている世界の方針、日本の方針に照らせば、深刻な課題と評価されているこれらの点については、今後整備が進められなければなりません。

また、同指標においては、「Trend」として傾向を示す欄も設けられているものの、日本においては、過去のデータが存在しない、または更新されていないために「Information unavailable」とされ、傾向を示すことができない指標が散見されます。

持続可能な開発報告書は、各国政府が公表しているデータや統計に基づき、進捗状況を評価しているところ、日本国内のデータ整備が不十分であることが、達成度ランクが上がらない一つの要因であるという指摘もあります。
単にSDGsを謳うだけではなく、達成度の検証を可能とする前提となるデータの整備は必須です。

持続可能な開発報告書は毎年6月に公表されます。
次回は半年後になりますが、また紹介させて頂きたいと思います。

(文責:三村雅一)

企業に求められるSDGs

これまで、当事務所のブログでは多くのSDGs関連の情報を発信してきました。

今回は、「企業に求められるSDGs」として、その内容について整理したいと思います。

 

まず、2020年8月12日のブログでは、「SDGsのチャンスとリスク」として、企業がSDGsに取り組むことのチャンス、取り組まないことのリスクを紹介しました。

すなわち、SDGsが共通言語化してきた現在、企業がSDGsを本業に取り込み、環境・社会的課題の解決に資する製品やサービスを提供できれば、新たなビジネスチャンスに繋げることができる。他方で、SDGsは世界共通の達成目標として企業にとってのコンプライアンスの内容の1つとなっており、企業がSDGsに逆行する行動をとった場合、顧客からの取引停止や投資・融資の引き上げを受けるリスク、企業価値毀損のリスクに繋がる。ということを紹介しました。

このブログから1年以上が経過し、企業経営におけるSDGsのプライオリティはさらに上がっており、全ての企業にとってSDGsは経営課題となり、迅速な対応が求められています。

 

2021年6月に公表された東京証券取引所の改訂コーポレートガバナンスコードでは、サステナビリティに関する取り組みとして「人権の尊重」が盛り込まれました。このように、上場企業にとって、「人権の尊重」が重要な経営指針となっています。

 

そこで、企業が経営を行う上で、「人権の尊重」としてどのように取り組めばよいのか、ということが問題となります。この点について、2020年10月、日本政府は「『ビジネスと人権』に関する行動計画」を策定しました。

 

この中で政府は企業に対し、人権に関する取り組みについて、「政府から企業への期待表明」という形で対応を求めています。

具体的には、「政府は、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国際的に認められた人権及び『ILO宣言』に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し、『指導原則』その他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること、また、サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うことを期待する。さらに、日本企業が効果的な苦情処理の仕組みを通じて、問題解決を図ることを期待する。」と述べています。

 

これをまとめると、企業が政府から求められている対応は、

①人権方針の策定、②人権DDの実施、③苦情処理メカニズムの構築の3つに集約されます。

以下、①②③についてその内容を検討します。

 

①について

政府は企業に期待する「人権方針の策定」について、「人権方針の策定に必要な5つの要件」を明らかにしています。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100165001.pdf

その内容は、次の通りです。

1 企業の経営トップが承認していること

2 社の内外から専門的な助言を得ていること

3 従業員、取引先及び、製品やサービス等に直接関与する関係者に対する人権配慮への期待を明記すること

4 一般公開され、全ての従業員や、取引先、出資者、その他関係者に向けて周知されていること

5 企業全体の事業方針や手続に反映されていること

 

②について

人権デュー・ディリジェンスとは、人権への影響を特定し、予防し、軽減し、そしてどのように対処するかについて説明するために、人権への悪影響の評価、調査結果への対処、対応の追跡調査、対処方法に関する情報発信を実施すること」をいいます。

当事務所では、2020年11月に神戸市、ひょうご・神戸国際ビジネススクエア(神戸市海外ビジネスセンター、ひょうご海外ビジネスセンター、ジェトロ神戸)及び弊所が主催したセミナーにおいてこの人権デュー・ディリジェンスについても取り上げました。

具体的な内容については、2020年11月16日のブログをご参照ください。

 

③について

苦情処理メカニズムの構築の具体例については、2019年12月16日のブログで、不二製油グループのグリーバンスメカニズムを紹介しました。

グリーバンスメカニズムとは、ビジネスに関連した人権侵害が生じた場合に、影響を受ける人々が実効的な救済にアクセスできるための手続をいいます。

 

当事務所では、企業に求められるSDGsに関し、様々なサービスを提供しています。

一体何から取り組めばよいのかというスタートラインに立ったばかりの企業様も、既に自社での取り組みを進めているけれどもさらに専門家としてのアドバイスを求めたいという企業様も、いつでも気軽にお問い合わせを頂ければと存じます。

(文責:三村雅一)

サプライチェーンにおける強制労働防止のベンチマークについて

SDGsのターゲット8.7では、「強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。」が掲げられています。

ここでいう、強制労働とは、従業員に、処罰(監禁、暴力による威嚇やその行使、労働者が職場の外に自由に出ることの制限を含む)や脅威(家族に危害を加える旨の脅迫、不法就労を当局に告発する旨の脅迫、労働者を職場に留める目的で行われる賃金不払など)による従業員の意思に反した労働をさせてはならないことを意味します。

では、具体的に、どのようなベンチマークにより、企業のサプライチェーン上の強制労働防止への対応を判断すればよいのでしょうか。

この点について参考になるウェブサイトは、企業や投資家が、グローバルなサプライチェーンにおける強制労働のリスクを理解し、対処するためのリソースとして公表されているKnowTheChainです。

KnowTheChainは強制労働が特に深刻となりうる3つのセクター(情報通信技術(ICT)、食品・飲料、アパレル・履物)におけるグローバル企業をピックアップして、①Commitment and Governance(コミットメントとガバナンス)、②Traceability and Risk Assessment(トレーサビリティとリスクアセスメント)、③Purchasing Practices(調達行動)、④Recruitment(採用活動)、⑤Worker Voice(労働者の声)、⑥Monitoring(モニタリング)、⑦Remedy(救済措置)の各要素から採点を行い、ランキングを公表しています。

2020/2021 Benchmarkとしてランキングが公表されている中の企業全体の平均スコアは33/100ですが、日本企業全体の平均スコアは22/100と相対的に低いスコアとなっており、日本企業としてサプライチェーンにおける強制労働問題へのさらなる取り組みが求められます。

KnowTheChainのウェブページでは、上記①~⑦の各要素について、セクター別での詳細な判断基準(ベンチマーク手法)も公表されていますので、今後、サプライチェーンにおける強制労働問題への取り組みを検討する際に、企業の規模を問わず非常に参考になりそうです。

弊所では、サプライチェーン管理に関する取り組みを支援させていただくために、取引基本契約書等でサプライチェーンに関する条項の整備、サプライチェーンの人権デュー・ディリジェンスなどSDGs関連サービスを幅広く提供しております。ぜひ、お気兼ねなくお問い合わせください。

(文責 河野雄介)

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