上場までのスケジュール~上場準備にはおよそ何期が必要か~

本コラムでは、IPOに向けたスケジュール、具体的には、どの程度の期間が必要で、どのようなことを行う必要があるのかについて説明します。

1 どの程度の期間が必要か

上場に必要な期間としては、一般に、2年程度が必要と言われることが多いようです。
これは、東証の上場審査基準において、「最近2年間の財務諸表等について、登録上場会社等監査人(日本公認会計士協会の品質管理レビューを受けた者に限る。)の監査等を受けていること」が要件とされていることに由来しているようです[1]

しかし、このことから、「準備開始から2年で上場できる」と理解すべきではなく、正確には、「少なくとも2年は必要であり、準備開始時点の会社の状況によっては3年や5年かかっても上場できるとは限らない」と理解すべきです。
上場準備を開始してから、多くの規程の作成や体制の構築・運用等をしていくことになりますので、上場準備の開始時点における社内体制の整備状況によって、必要期間が異なることになります。準備開始時点で社内体制が相当程度、整備されており、その後もスムーズに進めば2年での上場が可能ですが、実情としては、ケースバイケースと言わざるをえません。

なお、上場申請する日が属する決算期をN期(申請期)、その前年度をN-1期(直前期)、さらに前年度をN-2期(直前々期)といいます。

[1] グロース市場の場合は、「新規上場申請のための有価証券報告書」に記載及び添付される財務諸表等について、登録上場会社等監査人(日本公認会計士協会の品質管理レビューを受けた者に限る。)の監査等を受けていること」。

2 上場準備のスタート

「当社では、上場に向けた準備をスタートする!」と意思決定した場合、通常は、まずは監査法人等によるショートレビュー(短期調査)を受けます。

ショートレビューは、レビュー対象を一定範囲に限定すること等もありますが、基本的には、上場審査に向けた課題の抽出を目的としたものです。ショートレビューによって抽出された課題について、アドバイスを受けながら管理体制を構築していきます。
具体的には、①関係会社の組織再編・整理内部管理体制整備、②管理会計制度整備、③開示体制整備、及び、④資本政策立案・実施等を行っていきます。
なお、日本公認会計士協会による株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブックによれば、ショートレビューは、会計監査を依頼する予定の監査法人に限らず、アドバイザーが実施することもあり、会社のステージに合った選択が考えられます。

ここでのポイントは、上場審査において求められる水準と、自社の現状とのギャップを認識することですので、法務面や労務面での課題を抽出するために、ショートレビューと並行して、または、時期を前後して、法務DDや労務DDを行うことも検討すべきですし、実際にこれらのDDを実施している会社も多くあります。

ショートレビューの次は、主幹事証券会社を選択することになります。
IPOに向けて、主幹事証券会社は、①上場に向けたスケジュールに関するアドバイス、②資本政策・成長戦略に関するアドバイス、③内部管理体制の構築・運用等に関する課題の指摘及びアドバイス、④主幹事証券会社による上場審査の実施、⑤上場申請書類の作成支援等のサポート等を担うことになります。

ショートレビューが終わり、主幹事証券会社が決まれば、キックオフミーティングを開催し、スケジュールの策定、対応が必要な課題の優先順序の決定等を行い、いよいよ、具体的な準備が開始していくことになります。

執筆者
マネージング・パートナー/弁護士
藤井 宣行

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