個人事業主と株式会社の違いとは?~初心者向けにわかりやすく解説~

1 はじめに

起業の際に、「個人事業主」として起業するのか、または、「株式会社」を設立するかで悩むことがあると思います。また、個人事業主として起業したものの、そろそろ株式会社化した方が良いのか悩むこともあると思います。個人事業と株式会社では、法律上の扱い、税金、社会保険、および、資金調達など様々な点で違いがあります。本ブログでは、この両者の主な違いを、メリット・デメリットを紹介しながら、わかりやすく解説します。

なお、会社法上は株式会社以外にも合同会社、合資会社、合名会社があり、実務上も、ニーズに応じて株式会社ではなく合同会社等を設立することもありますが、本ブログでは、株式会社のみを対象とします。

2 設立に関する違い

個人事業主は、法人を設立せずに個人として事業を営む人のことです。したがって、設立手続きというものはなく、開業届を税務署に提出するだけで始められます。

他方、株式会社とは会社法に基づいて設立された法人格を持つ組織で、代表者個人とは別の法人格・法主体として扱われます。契約を締結する場合にも、起業をした個人ではなく、会社名で契約を締結することになりますし、財産も区別して管理することになります。
株式会社を設立するためには、法務局で定款の認証や法人登記を行う必要があり、その費用や登録免許税等で20万円以上は必要となります。これらの手続きを司法書士に依頼することも多いですが、その場合は、司法書士報酬も必要です。
また、設立手続きの完了までには、通常、1~2週間程度を要することが多いようです。

なお、株式会社の場合、代表者の氏名および住所も登記事項とされており(会社法第911条第3項第14号)、登記は誰でも閲覧等することができることから、特に有名人の起業家や女性経営者の方が代表者となる場合のプライバシーを心配する声もありました。しかしながら、2024年10月の商業登記規則の改正により、「代表取締役等住所非表示措置」という制度が導入され、登記上の住所表示を市区町村までにすることが可能になりました。

3 法的責任の違い

個人事業主は、上記のとおり、会社を設立する場合と異なり、個人と別の法主体(人格)を設立しませんので、法的責任主体として、事業とプライベートが一体化しています。すなわち、事業上で発生した債務について、無限に、事業主が個人の財産によって負担しなければなりません。

他方、株式会社では、株式会社が業務上負担した債務は、株式会社の財産によって負担すれば足り、個人の財産によって負担する必要性はありません。ただ、以前よりは少なくなっているものの、株式会社の債務を代表者個人が連帯保証することを求められるケースがあり、この場合は、個人の財産によって株式会社の債務を負担することになります。

4 資金調達における違い

個人事業主は、銀行からの融資、補助金・助成金、または、クラウドファンディング等の方法による資金調達が可能です。もっとも、銀行から融資を受ける際の審査ハードルが高かったり、借入れできる金額が想定的に低額になるケースが多く、大規模な資金調達は困難です。

株式会社では、上記の各方法に加えて、株式の発行による資金調達(エクイティファイナンス)が可能です。エクイティファイナンスでは、会社に関する支配権の一部を提供することになるものの、返済義務のない資金を得ることが可能です。また、社債発行による資金調達も可能であり、個人事業主と比較して選択肢が多く、かつ、相対的に大規模な資金調達が可能であるといえます。
将来のIPOやバイアウトを視野に入れる場合や、大規模な資金調達によって急速な成長を目指すスタートアップにおいては、株式会社を選択することになるでしょう。

5 その他の事業運営における違い

上述した内容以外に、個人事業主と株式会社の事業運営面における違いの代表的な点を以下にまとめましたので、ご参考いただけますと幸いです。

 個人事業主株式会社
会計年度暦年(1月1日〜12月31日)自由に決定できる
税務所得税(個人事業以外にも給与等の収入があれば、基本的に合算して確定申告)法人税

社会保険
(厚生年金保険・健康保険)

常時使用する従業員が5人未満であれば、厚生年金・健康保険(いわゆる会社員の社会保険)への加入義務なし原則として全法人が社会保険加入義務あり
廃業税務署等へ廃業届を提出解散・清算の登記申請や各種届出(税務署、年金事務所、労働基準監督署など)を行う必要がある
執筆者
マネージング・パートナー/弁護士
藤井 宣行

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