法定労働時間と所定労働時間の違い~残業代の計算方法も解説~

本稿では、「法定労働時間」と「所定労働時間」という、混同されがちな用語の違いについて解説するとともに、残業代の計算方法についても解説します。

1 法定労働時間とは?

「法定労働時間」とは、「1日8時間・週40時間」を原則とする(※1)、労働基準法で定められた労働時間の上限をいいます(労働基準法第32条第1項、第2項)。この上限を超えて労働者を働かせた場合は、「時間外労働」にあたり、労働者に「時間外労働」をさせるには、会社は、労使間で「36協定」を締結して、労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第36条第1項)。

たとえば、9時に始業し、12時から13時までが休憩時間の会社では、午後6時までが「法定労働時間」で、午後6時を超えた労働は「時間外労働」にあたります。

(※1)「1日8時間・週40時間」は原則であり、特定の業種と規模の事業場に対する例外や、フレックスタイム制、変形労働時間制等、労働基準法上様々な例外が定められています。

2 所定労働時間とは?

「所定労働時間」とは、会社が、独自に定めた就業時間をいいます。たとえば、9時に始業し、12時から13時までが休憩時間で、17時45分に終業する会社の場合、この会社(仮にA社と呼びます。)の所定労働時間は、7時間45分です。

なお、法定労働時間を超える所定労働時間を設定することは違法なので、会社は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)の範囲内で所定労働時間を定める必要があります。

3 法定内残業と法定外残業

所定労働時間を超えるものの、法定労働時間を超えない残業は「法定内残業」と呼ばれます。これに対して、法定労働時間を超える残業(=時間外労働)は「法定外残業」と呼ばれます。

先ほどのA社で9時から19時までの(休憩時間を除く)9時間働いた場合、トータルでは1時間15分の残業(17時45分以降19時までの残業)をしていますが、その内訳は、「法定内残業」が15分(17時45分以降18時までの残業)、「法定外残業」が1時間(18時以降19時までの残業)となります。

4 残業代はどうやって計算する?

残業代の計算方法は、対象となる残業が、「法定内残業」なのか「法定外残業」なのかによって異なります。

(1)法定外残業の残業代

法定外残業については、労働基準法で、以下のとおりの割増率で割増した賃金を支払うように定められています(労働基準法第37条第1項)。

割増率
60時間以内の残業25%以上
60時間を超える残業50%以上

1時間あたりの基礎賃金が3,000円の労働者が30時間の法定外残業を行った場合、支給される残業代は112,500円(3,000円/時間×1.25×30時間)となります。

(2)法定内残業の残業代

これに対して、法定内残業については、上記のような定めがないので、会社が独自のルールを定めていない限り、残業1時間ごとに、1時間あたりの基礎賃金がそのまま支払われます。

1時間あたりの基礎賃金が3,000円の労働者が3時間の法定内残業を行った場合、支給される残業代は9,000円(3,000円/時間×1×3時間)となります。

(3)1時間あたりの基礎賃金

なお、残業1時間あたりの基礎賃金は、以下の計算式により計算します。

1時間あたりの基礎賃金=月給÷月所定労働時間

※ この「月給」には、基本給のほかに、以下の①~⑦を除くすべての賃金等が含まれます(労働基準法第37条第5項、同法規則第21条)。
①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

※ 月所定労働時間は、年間の所定労働時間(1日あたりの所定労働時間×1年あたりの所定労働日数)を12で除することにより算出します。

5 まとめ

法定労働時間は、労働基準法が定める労働時間の上限であり、所定労働時間は、会社が独自に定める就業時間です。

両者は必ずしも一致せず、一口に「残業」といっても「法定労働時間」を超える残業かどうかによって残業代の計算ルールも異なります。

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S&W国際法律事務所

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