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ベンチャー法務の部屋

譲渡制限株式の株式譲渡の手順(買取請求がある場合を中心に)

今回は、譲渡制限株式の株式譲渡の手順のうち、買取請求がある場合を中心に解説します。

なお、これまでも、以下のブログで、譲渡制限株式の株式譲渡に触れていますので、これらもご参考にしてください。

「株式譲渡の手続を確実に進めるために」

「株式譲渡契約に関する注意点(1)」

 

1 譲渡制限株式の株式譲渡
具体的に、以下の段取りで進めます。
(1) 株式譲渡契約の締結(譲渡人・譲受人間)
(2) 譲渡承認の請求(譲渡人(原則)から発行会社に対して。会社法第136条)
(3) 承認決定決議(発行会社にて。定款記載の譲渡承認機関による承認決定決議。会社法第139条第1項)
(4) 承認決定の通知(発行会社→承認請求者。会社法第139条第2項)
(5) 株主名簿の名義書換請求(譲渡人・譲受人→発行会社。会社法第133条)
(6) 株主名簿の名義書換(発行会社にて。会社法第121条)

2 買取請求がある場合の流れ
では、譲渡承認の請求をしているものの、会社が譲渡を認めない見込みの場合には、承認請求者は、買取請求をするか否かを選択することになります。

その場合の流れを整理しましょう。

上記1(3)の承認決定決議ではなく、譲渡否認決議が生じることになります。

買い取り請求がある場合は、
(a) 譲渡否認決議(会社法第139条第1項)
(b) 譲渡否認通知(会社法第139条第2項)(譲渡請求から原則2週間以内。会社法第145条第1号)

【発行会社が買う場合】
(c) 株主総会決議(会社法第140条第1項、第2項)。
(d) 供託(会社法第141条第2項)
(e) 買取通知(発行会社から。会社法第141条第1項)(譲渡否認通知から原則40日以内。会社法第145条第2号)、供託書面交付(会社法第141条第2項)
(f) 売買価格決定協議(会社法第144第1項)
(g) 裁判所への売買価格決定申立期間(20日。会社法第144第2項)

【指定買受人を指定する場合】
(c)’ 取締役会決議(取締役会設置会社ではない場合は株主総会の決議。定款に別段の定めがある場合は、定款の定めによる。会社法第140条第4項、第5項)
(d) ’ 供託(会社法第142条第2項)
(e) ’ 買取通知(指定買受人から。会社法第142条第1項)(譲渡否認通知から原則10日以内。会社法第145条第2号)、供託書面交付(会社法第142条第2項)
(f) ’ 売買価格決定協議(会社法第144条第7項、第1項)
(g) ’ 裁判所への売買価格決定申立期間(20日。会社法第144条第7項、第2項)

買取者の一部を指定買取人、残りを発行会社にて、買うという方法も可能です。ただ、供託も複数必要になります。

売買価格は、申立てがあれば裁判所により決定された金額となり、申立てがなければ1株当たり純資産額が売買価格となります(会社法第144条第4項、第5項、第7項)。

3 買取請求の実際
買取請求は、譲渡承認請求とともにする必要があります。

譲渡承認請求は、口頭でも、書面でも、電子メール等電磁的方法でも、可能です。
ただ、以下のイからハまでの内容が明確にされている必要があります。
イ 譲り渡そうとする譲渡制限株式の種類・数
ロ 譲り受ける者の氏名又は名称
ハ 会社が承認(請求された株式譲渡の承認)をしない旨の決定をする場合において、貴社または指定買取人が譲渡制限株式を買い取ることを請求するときはその旨

譲渡承認請求の受領日は、譲渡否認通知の期間制限(譲渡請求から原則2週間以内)の起算点にもなりますので、上のイからハまでの内容を明確にしつつ、会社法に定められた譲渡承認請求であることを明記した方がよいでしょう。受信の有無について争われないようにするためには、内容証明郵便で送付するのが最も安全と言えます。

会社側は、会社法に定められた譲渡承認請求であるか否かが不明確な請求を受け取った場合は、直ちに、それが、会社法に定められた譲渡承認請求であるか否かを問い返した方がよいでしょう。

(文責:森 理俊)

2019年12月25日 10:59|カテゴリー:企業法務||コメントはまだありません
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