国際法務の部屋

書類の公証・認証

2019.11.25

今回は、中国国内で訴訟当事者となった場合における裁判所への書類提出に関し、公証・認証手続について、紹介します。

外国企業が中国の裁判所(人民法院)において訴訟提起、または、応訴する場合は、中国の弁護士に委任しなければなりません(中国民事訴訟法263条)。

中国人弁護士に委任するには、外国企業から中国人弁護士への委任状が必要となりますが、原則として(例外については、ここでは割愛します。)、当該委任状について、当該外国企業の所在国の公証機関の証明を得て、かつ、当該国に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る必要があります(同法264条)。

日本企業は、上記の外国企業に該当しますので、中国人弁護士に対する委任状について、公証機関の証明を得て、かつ、当該国に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る必要があります。

「公証機関の証明」については、委任状は私文書(公的機関との対比の意味での私人である企業の意思を表現した文書)ですから、日本国においては、公証役場での認証を行うことになります。

なお、日本の公証人法1条において、公証人の権限として、公正証書の作成、私文書の認証、及び、定款の認証等が規定されています。一般に、「文書の公証・認証」といった表現が用いられることがありますが、厳密には、公証人が行う行為(≒公証)の中に、認証という行為が含まれていると整理することができます。

この手続により、公証人に、私人が作成した文書(ここでは委任状)の署名押印等が、本人のものに間違いないことを証明してもらいます。
法的な表現では、文書の真正の証明といい、文書の記載内容ではなく、「本人が作成した(=偽造ではない)」ことを証明してもらうわけです。

英語でも、一般に、公証人による認証については、Notarizationという表現を用いることになりますが、Legalizationという表現を用いられていることもあり、このあたりは、厳密に表現が使い分けられているわけではないようですので、実際に必要とされている行為の内容を確認する必要があるでしょう。

次に、公証人は、(地方)法務局に所属していますので(公証人法10条1項)、公証役場で認証を受けた書類(私署証書)に対し、公証人の所属する(地方)法務局長が、認証の付与が在職中の公証人によりその権限に基づいてされたものであり、かつ、その押印が真実のものである旨の証明を付与します。これを公証人押印証明といいます。

これにより、日本の公的機関が、文書(ここでは委任状)の成立の真正を証明したことになります。

その後、日本に駐在する中国大使館または領事館の認証を得る前提として、外務省による公印確認を行います。これは、外務省が、文書(ここでは委任状)に押印されている公印について証明を行うものです。

委任状の例でいえば、日本の外務省が、中国に対し、委任状に押印されている法務局(長)の印影が真正であることを証明してくれるものです。

なお、ここまでの手続については、要請をすることにより、東京や大阪等の公証役場では、公証役場のみで完結することができます(ワンストップサービス)。

これを受けて、中国大使館または領事館において認証を行います。

これにより、当該文書が日本国内において正式な手続を経て真正が証明されたものであることを、中国大使館または領事館が証明してくれるので、中国において、当該文書について、真正なものであるとして扱ってもらえることになります。

なお、文書の提出先の国が、「外国公文書の認証を不要とする条約(1961年10月5日のハーグ条約)」に加盟している場合には、日本が同条約に加盟していることから、この手続を省略できる場合があります(アポスティーユ)。

執筆者
藤井 宣行
マネージング・パートナー/弁護士

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