国際法務の部屋

強制労働・児童就労の禁止について

2020.03.18

SDGsの目標8では、「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する」が目標8として掲げられ、同目標のターゲットの8.7では「強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終わらせるための迅速で効果的措置の実施、最も劣悪な形態の児童就労の禁止・撲滅を保障する。2025年までに少年兵の徴募や利用を含むあらゆる形態の児童就労を撲滅する。」とされています。

 

では、ここでいう、「強制労働」や「児童就労」は具体的にどのように定義されるのでしょうか。

 

まず、「強制労働」とは、処罰や脅威による従業員の意思に反した労働を意味します。そして、「処罰」とは、監禁、暴力による威嚇やその行使、労働者が職場の外に自由に出ることに制限を加えること等を意味します。また、「脅威」の具体例としては、家族に危害を加える旨の脅迫、不法就労を当局に告発する旨の脅迫、労働者を職場に留める目的で行われる賃金不払などがあげられます。

 

次に、「児童就労」は、就業最低年齢を下回る年齢の児童によって行われる労働を意味します。

 

ここで、「就業最低年齢」については、「就業の最低年齢に関する条約第138号」で、最低年齢は原則15歳とされています。ただし、軽労働については、一定の条件の下に13歳以上15歳未満の就労が認められ、危険有害業務については18歳未満の就労が禁止されています。また、開発途上国のための例外として、就業最低年齢は当面14歳、軽労働は12歳以上14歳未満の就労が認められるとされています。

さらに、「最悪の形態の児童労働に関する条約第182号」では、18歳未満の児童による①人身売買、徴兵を含む強制労働、債務労働などの奴隷労働、②売春、ポルノ製造、わいせつな演技に使用、斡旋、提供、③薬物の生産・取引など不正な活動に使用、斡旋、提供、④児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働が「最悪の形態の児童労働」として定められ、これの禁止と撤廃を確保するために、即時の効果的な措置を求めるとされています。

 

近時、SDGsの普及に伴い、取引基本契約等の中で、「乙は、本件契約書に基づく債務の履行に関連する場合であるか否かを問わず、強制労働、児童労働、外国人労働者の不法就労を行わないとともに、賃金・労働時間を含む従業員の雇用条件については、事業活動を行う各国各地域の法令に準拠するものとする。」などの条項が盛り込まれるケースも見られます。

 

さらに、「乙は、自社、関連会社及び乙の事業、製品またはサービスに関連するサプライヤー、請負業者及びコンサルタント(以下「乙取引先」という)というに対して、本契約書別紙に定める各要求事項を履行させるように努めなければならない」という、いわゆるフローダウン(Flow-Down)条項が盛り込まれるケースもあります。

 

上記条項違反が取引基本契約の解除事由に当たりうるような場合は、重大な影響が出てしまいます。

 

そうすると、海外のサプライチェーンから原材料や製品の供給を受けているような場合は、当該サプライヤーの工場等において上記の定義にあてはまるような強制労働や就業最低年齢を下回る年齢の児童による児童就労が行われていないかをモニタリングしておく必要があります。

 

文責 河野雄介

以上

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S&W国際法律事務所

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