国際法務の部屋

中国子会社(現地法人)の不正調査

2018.10.19

先日、クライアントの中国子会社(現地法人)での不正調査案件で、中国に出張してきました。当該中国子会社は、上海からタクシーで2時間程度の某都市にあり、上海浦東空港から、車で向かいました。

 

高速道路で上海市を出て、当該某都市に入ってすぐの地点にある料金所で、警察官が、私達の乗っている車をとめ、タクシーの運転手に対し、「誰をのせているんだ」と聞きました。運転手が「外国人だ」と答えたところ、警察官は私を見て、「韓国人か?」と聞かれたので、説明するのも面倒なので頷いたら、「行ってよい」と言われました。

中国語の分からない同乗者に、やりとりを説明していたら、運転手が、「さっきの話しの内容、分かったのか?え、日本人なん?まったくパスポートも確認しないなら、いちいち聞くなよ」と言っていました。

スーツを着た3人が、車で別の市から入ってきたので確認するという警備の厳しさと、とりあえず声をかけたら確認まではしないという緩やかさを見て、私としては、中国に来たなという実感を持ちました。

 

 

現地調査では、当該現地法人では、ガバナンスの体制に甘い点が多くあったことから、まずは、制度設計を根本から構築しなおすことにしました。また、役員の報告義務、親会社または株主が保有する調査権限の活用についても社内ルール化することになりました。海外子会社の不正調査において、このようなガバナンスの制度面を構築及び活用することは非常に重要です。不正を行っていた者の処分についても、別途、手続を進めています。

 

また、日々の業務において、そのような制度を、どのように運用するかについても、同じように重要です。日本の大企業でも、ガバナンスの制度について最先端と評価されていたにもかかわらず、不祥事を防止できなかった事例がありました。運用面に問題があれば、立派なガバナンスの制度も効果を発揮しないということは、国内でも海外子会社でも同様ですね。

 

ガバナンスの制度の運用面に関連して、海外子会社の場合は、日本人が総経理等の高級管理職を占めるべきか、それとも、現地スタッフに任せるべきか、という議論をよく耳にします。日本人の方が、本社の立場からすれば、安心感があるという面は否定できないでしょう。しかし、現地法人の日本人総経理が不正を行っていたというケースも、何度も経験したことがあります。また、現地スタッフのモチベーションという意味では、総経理等になれるという目標を示した方が、良い点もあるでしょう。

個人的には、どちらが良いという「正解」はなく、会社の規模、ヒューマンリソース、及び、現地法人の成長ステージ等の観点から、状況に応じて判断せざるを得ないと考えています。重要なことは、管理職が日本人であれ外国人であれ、日本本社が、適切な距離感で常に「見ている」という感覚を現地法人に持たせることだと考えています。監督権限を適切に行使し、不正行為をすれば露見しそうだという緊張感を持たせ、同時に、事情も分からずに遠くから指示だけするといった存在ではなく、現地子会社の状況や苦労を正確に理解してくれているという共感を持たせることを実現することにより、海外子会社の不正を未然に防止できる確率は飛躍的に高まるものと信じています。

以上

(文責:藤井宣行)

執筆者
S&W国際法律事務所

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