国際法務の部屋

コーポレートガバナンス・コード及び投資家と企業の対話ガイドラインの改訂とSDGsに関連する記載について

2021.06.22
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金融庁及び東京証券取引所が事務局をつとめる「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」からの提言を踏まえ、東京証券取引所は、2021年6月11日に、改訂版のコーポレートガバナンス・コードを公表しました。

コーポレートガバナンス・コードの中で、【基本原則2】として

上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。

取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。

との原則が定められていたのですが、この基本原則2の【考え方】の中で、SDGsに関する記載として下線部分が修正・追加されています。

 上場会社には、株主以外にも重要なステークホルダーが数多く存在する。これらのステークホルダーには、従業員をはじめとする社内の関係者や、顧客・取引先・債権者等の社外の関係者、更には、地域社会のように会社の存続・活動の基盤をなす主体が含まれる。上場会社は、自らの持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を達成するためには、これらのステークホルダーとの適切な協働が不可欠であることを十分に認識すべきである。

また、「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関数が増加するなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であるとの意識が高まっている。こうした中、我が国企業においては、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくことが重要である。

上場会社が、こうした認識を踏まえて適切な対応を行うことは、社会・経済全体に利益を及ぼすとともに、その結果として、会社自身にも更に利益がもたらされる、という好循環の実現に資するものである。

また、金融庁は、「投資家と企業の対話ガイドライン」を2021年6月11日付で改訂しています。

この、「投資家と企業の対話ガイドライン」は、「コーポレートガバナンスを巡る現在の課題を踏まえ、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードが求める持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた機関投資家と企業の対話において、重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたものである。機関投資家と企業との間で、これらの事項について建設的な対話が行われることを通じ、企業が、自社の経営理念に基づき、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現し、ひいては経済全体の成長と国民の安定的な資産形成に寄与することが期待される。本ガイドラインは、両コードの附属文書として位置付けられるもの」とされています。

そして、改訂版の投資家と企業の対話ガイドラインの中で、「経営環境の変化に対応した経営判断」の1-3として、SDGsに関連する下記のような記載が修正・追加されています。

ESGやSDGsに対する社会的要請・関心の高まりやデジタルトランスフォーメーションの進展、サイバーセキュリティ対応の必要性、サプライチェーン全体での公正・適正な取引や国際的な経済安全保障を巡る環境変化への対応の必要性等の事業を取り巻く環境の変化が、経営戦略・経営計画等において適切に反映されているか。また、例えば、取締役会の下または経営陣の側に、サステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているか。

この中でも、「サプライチェーン全体での公正・適正な取引」については、このような観点からのサプライチェーンとの間の取引に用いている契約書(英語・中国語も対応可能)の条項のレビューや、弊所のグローバルネットワークを生かした人権デュー・ディリジェンス(人権方針やCSR 調達基準等の策定、人権リスクの特定・調査、人権研修、報告書作成)などの支援をさせていただくことが可能です。

上記のように、コーポレートガバナンス・コードや投資家と企業の対話ガイドラインの改訂にあたってSDGsに関する記載がなされるなど、SDGsがビジネスにおいて共通言語化している現在、企業がSDGsを本業に取り込み、環境・社会的課題の解決に資する製品やサービスを提供できれば、新たなビジネスチャンスにつながる一方、企業がSDGsの達成に反する行動をとった場合のリスクは、顧客からの取引停止や投資・融資の引き上げ、ブランドの毀損、不買運動など広範囲におよび、企業・ブランドの存在意義に直結するといっても過言ではありません。現代社会において、SDGsは企業のコンプライアンスに密接に関連するため、SDGsと法務は切り離せない関係にあります。

弊所では、これまでSDGsの専門家とともに、商工会議所、地方自治体、国内外の金融機関、企業等において、対象となる企業の規模を問わず、SDGsに関するセミナーを数多く行なってきました。この活動を通じて得た知見を基に、SDGsに関連した幅広いサービスを提供していますので、お気軽にお問い合わせください。

執筆者
河野 雄介
マネージングパートナー/ニューヨーク州弁護士/弁護士

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