国際法務の部屋

白眼視事件と民主主義

2018.03.27

中国の北京で全国人民代表大会が開催され、3月11日、2期10年までと定められている国家主席の任期上限を撤廃する憲法改正案が賛成多数で可決されました。このことは、日本でも報道されているところです。

 

このことに関し、白眼視事件と呼ばれている事件が起こりました。簡単に内容を説明すると、全人代の記者会見で、中国政府の意向を汲んだと思われる記者が、政府の決定に賛同するような内容の質問(というより意見の表明?)を、冗長に行ったところ、その隣に座っていた記者が、睨んでいるとも見られる表情をしたり、天を仰ぐようなリアクションをとった、というものです(詳しくは、古畑康雄氏による3/19(月)7:00配信の現代ビジネス「習近平の晴れ舞台に冷や水をかけた全人代「白眼視」事件をご存じか」(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180319-00054907-gendaibiz-int)をご覧ください。)。

 

私が所属している中国の友人たちとのグループチャットでも、その場面の写真や動画がアップされたり、中国では話題になっているようです。

では、なぜ、この事件が、それほど話題になるのでしょうか。国民性等も理由になるかもしれませんし、当事者の2名の記者が美人(と一般に言われる風貌)の女性であるということも理由になるかもしれません。

しかし、上記の記事でも指摘されていますが、本質は、実質的には民主主義ではない中国において、共産党や政府に対し、異論や反論があったとしても、公にそれを明らかにできない(またはしにくい)ことや、自らの意見を国政に反映させる実効的な手段がないことが、この事件で真相であるとも考えられます。

 

その意味では、日本では、ある記者が、別の記者の発言に対して、あからさまに不満を表現するリアクションをしても、それほど話題にはならないと思われますし、そのことは、民主主義が実現されていることの裏返しだと言えるようにも思います。

 

森友学園に端を発する問題について、連日、報道がなされていますが、上記の事件と併せて考えてみると、民主主義を享受しているということが、感謝すべき有難いことであり、大切にしなければいけないと、改めて感じました。

執筆者
S&W国際法律事務所

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