国際法務の部屋

新型コロナウイルスと不可抗力について(2)

2020.02.26

私の前回のブログで、2月17日のジェトロ大阪でのセミナーについてご案内していましたが、私と共同のスピーカーが中国から来日する中国人弁護士であったこともあり、残念ながら、開催が延期となりました。延期後の日時が決まりましたら、改めて、ご案内させていただきます。

さて、先日、当事務所のマネージングパートナーである河野弁護士が、ブログ「新型コロナウイルスと不可抗力について」において、新型コロナウイルスの流行に起因して、契約上の債務を履行できないケースについて、日本法の観点から説明をしてくれています。

今回のブログでは、中国法の観点から、若干の説明をしたいと思います。

1.契約書に、不可抗力免責に関する条項がある場合

この場合は、日本法を準拠法とする場合と同様、契約文言の規定に、「疫病」等の文言が明記されているか、明記されていないとしても「その他の不可抗力」といった文言の有無を確認することになります。

そのうえで、今回の状況が、規定されている文言に該当するか、あてはめの作業をすることになります。その内容については、下記2を参考にしてください。

2.契約書が存在しない、または、契約書に不可抗力免責に関する条項がない場合

準拠法が中国法であれば、契約による修正がないことから、中国法の一般原則が適用されることになります。

中国法では、「不可抗力」について、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性が客観的に存在することを要求しています(通則153条、民法総則180条2項、契約法117条等)。

新型コロナウイルスの発生や流行自体については、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性が客観的に存在すると考えられます。

しかしながら、各企業が直面している契約上の債務の履行に関する障害については、その具体的な状況(ビジネスモデル、実際に利用する運送の状況等)は様々であると考えられますので、ケースバイケースで、個別の検討を要するでしょう。

2002年にSARSが流行した際、最高人民法院は、SARS の流行について不可抗力に該当するとの判断をしたものの、不可抗力に該当する事由について、災害拡大防止のための行政措置を直接の原因とする場合等、一定の場合に限定しましたので、当該事由該当性を、個別に判断する必要がありました。

なお、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)が、新型コロナウイルスについて、不可抗力にあたる事実が発生したとする証明書を発行しています。CCPITは、あくまで1つの機関であり、不可抗力該当性を判断するのは、最終的には裁判所(人民法院)ですから、当該証明書は、不可抗力該当性を肯定する方向の重要な証明手段の1つであるという位置付けになると考えます。

また、そもそも、不可抗力免責は契約の拘束力から例外的に解放する制度ですから、その適用は、本来的に謙抑的になる性質を有するものです。

したがって、新型コロナウイルスに起因して、契約上の債務の履行に障害が生じている場合、まずは、協議により解決を図ることが最優先でしょう。

そのうえで、自社の状況が、不可抗力に該当するかについて、契約書等の存在を確認しつつ、予見不能性、回避不能性、及び、克服不能性の観点から、冷静に、自社に関する状況を分析することが肝要であると考えます。

執筆者
藤井 宣行
マネージング・パートナー/弁護士

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