国際法務の部屋

企業に求められるSDGs

2021.10.19

これまで、当事務所のブログでは多くのSDGs関連の情報を発信してきました。

今回は、「企業に求められるSDGs」として、その内容について整理したいと思います。

まず、2020年8月12日のブログでは、「SDGsのチャンスとリスク」として、企業がSDGsに取り組むことのチャンス、取り組まないことのリスクを紹介しました。

すなわち、SDGsが共通言語化してきた現在、企業がSDGsを本業に取り込み、環境・社会的課題の解決に資する製品やサービスを提供できれば、新たなビジネスチャンスに繋げることができる。他方で、SDGsは世界共通の達成目標として企業にとってのコンプライアンスの内容の1つとなっており、企業がSDGsに逆行する行動をとった場合、顧客からの取引停止や投資・融資の引き上げを受けるリスク、企業価値毀損のリスクに繋がる。ということを紹介しました。

このブログから1年以上が経過し、企業経営におけるSDGsのプライオリティはさらに上がっており、全ての企業にとってSDGsは経営課題となり、迅速な対応が求められています。

2021年6月に公表された東京証券取引所の改訂コーポレートガバナンスコードでは、サステナビリティに関する取り組みとして「人権の尊重」が盛り込まれました。このように、上場企業にとって、「人権の尊重」が重要な経営指針となっています。

そこで、企業が経営を行う上で、「人権の尊重」としてどのように取り組めばよいのか、ということが問題となります。この点について、2020年10月、日本政府は「『ビジネスと人権』に関する行動計画」を策定しました。

この中で政府は企業に対し、人権に関する取り組みについて、「政府から企業への期待表明」という形で対応を求めています。

具体的には、「政府は、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国際的に認められた人権及び『ILO宣言』に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し、『指導原則』その他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること、また、サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うことを期待する。さらに、日本企業が効果的な苦情処理の仕組みを通じて、問題解決を図ることを期待する。」と述べています。

これをまとめると、企業が政府から求められている対応は、

①人権方針の策定、②人権DDの実施、③苦情処理メカニズムの構築の3つに集約されます。

以下、①②③についてその内容を検討します。

①について

政府は企業に期待する「人権方針の策定」について、「人権方針の策定に必要な5つの要件」を明らかにしています。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100165001.pdf

その内容は、次の通りです。

1 企業の経営トップが承認していること

2 社の内外から専門的な助言を得ていること

3 従業員、取引先及び、製品やサービス等に直接関与する関係者に対する人権配慮への期待を明記すること

4 一般公開され、全ての従業員や、取引先、出資者、その他関係者に向けて周知されていること

5 企業全体の事業方針や手続に反映されていること

②について

人権デュー・ディリジェンスとは、人権への影響を特定し、予防し、軽減し、そしてどのように対処するかについて説明するために、人権への悪影響の評価、調査結果への対処、対応の追跡調査、対処方法に関する情報発信を実施すること」をいいます。

当事務所では、2020年11月に神戸市、ひょうご・神戸国際ビジネススクエア(神戸市海外ビジネスセンター、ひょうご海外ビジネスセンター、ジェトロ神戸)及び弊所が主催したセミナーにおいてこの人権デュー・ディリジェンスについても取り上げました。

具体的な内容については、2020年11月16日のブログをご参照ください。

③について

苦情処理メカニズムの構築の具体例については、2019年12月16日のブログで、不二製油グループのグリーバンスメカニズムを紹介しました。

グリーバンスメカニズムとは、ビジネスに関連した人権侵害が生じた場合に、影響を受ける人々が実効的な救済にアクセスできるための手続をいいます。

当事務所では、企業に求められるSDGsに関し、様々なサービスを提供しています。

一体何から取り組めばよいのかというスタートラインに立ったばかりの企業様も、既に自社での取り組みを進めているけれどもさらに専門家としてのアドバイスを求めたいという企業様も、いつでも気軽にお問い合わせを頂ければと存じます。

執筆者
三村 雅一
マネージング・パートナー/弁護士

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