国際法務の部屋

中国語で売買取引基本契約を締結する際の留意点

2020.06.15

これまで、当事務所では、中国企業と締結する売買取引基本契約書を中国語で作成してほしい、取引の相手方から中国語で提案された売買取引基本契約書をレビューしてほしいというご相談を数多くいただいてきました。

まず、中国語での契約に限らず、売買取引基本契約を締結するにあたっては、当方が売主であるか、買主であるかにより、重点的に確認すべきポイントが大きく異なります。

一例を挙げると、当方が売主である場合は、瑕疵担保責任(契約不適合責任)や品質保証責任について、可能な限り責任を負う期間を短くできないか、損害賠償の範囲をできるだけ限定(例えば損害賠償の範囲を契約に基づく売買代金の合計額に限定するなど)できないかという観点からレビューやドラフトを行います。他方で、当方が買主である場合は、契約不適合責任や品質保証責任について、可能な限り責任を負う期間を長くできないか、損害賠償額に不当に限定されている条項がないかという観点からレビューやドラフトを行います。

また、当方が買主である場合は、売主である中国企業に法令順守義務(環境法制、商業賄賂、労働関係法令)や買主として独自に定めている基準(化学物質使用基準など)を遵守させる義務を負わせる規定を設ける必要がないか、必要がある場合はどのような規定が適切か、義務違反があった場合にどのような効果を定めるかという観点で検討を行います。

さらに、今回の新型コロナウイルスの世界的な蔓延によってクローズアップされた不可抗力条項についても要注意です。当方が売主である場合は、不可抗力事由をできるだけ多く列挙し、不可抗力事由が生じた場合には、売主としての債務不履行責任が免除される旨を明確に記載するべきです。他方で、当方が買主である場合は、不可抗力事由をできるだけ限定的に規定し、不可抗力事由が生じた場合の効果についても限定的な内容にとどめた方がよいケースもあります。なお、この論点については、新型コロナウィルスと不可抗力について新型コロナウイルスと不可抗力について(2)もご参照ください。

これ以外にも、売買代金の支払条件、商品の引渡条件、商品の危険負担や所有権移転時期、保険の負担、商品の検査・受入に関する条項、第三者の権利侵害(特に知的財産権侵害)があった場合を規律する条項、納期遅延があった場合を規律する条項、個別契約についての定め(個別契約と売買取引基本契約の優劣関係、個別契約の成立条件)、輸出入規制などについて、売主の立場、買主の立場から検討を行い、最終的な契約書を完成させます。

なお、中国企業との契約締結にあたっての、準拠法、言語条項、紛争解決方法等の一般的な留意事項については、中文契約書作成の際の留意点を参考にしてください。

また、売買取引基本契約書が完成した後、中国企業の担当者に契約締結権限があるかの確認も重要となります。この点については、中国企業と契約を締結する際の契約締結権限の確認方法をご参照ください。

当事務所では、「中国語(中文)契約書サービス」として、売買取引基本契約書を含め、各種の契約書について、日本語・中国語間の翻訳、中国語で作成された契約書のリーガルチェック、中国語での契約書の作成等のサービスを提供していますので、是非とも、ご利用ください。

執筆者
河野 雄介
マネージングパートナー/ニューヨーク州弁護士/弁護士

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