国際法務の部屋

ウイグル族の強制労働問題とSDGs②

2021.07.19

先日のブログで、「ユニクロ」を展開する株式会社ファーストリテイリング、「無印良品」を展開する株式会社良品計画の決算発表会見において、新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡り「新疆綿」に対する考えを問う質問が相次いだというニュースを紹介しました。

 

先日、このニュースに関連し、フランスの検察が、株式会社ファーストリテイリングのフランス法人などフランスで衣料品や靴を販売する4社に対して、人道に対する罪に加担した疑いで捜査を始めた旨の報道がありました。

 

この報道に対し、日本の加藤官房長官は、「近年、欧米諸国を中心に企業に対して人権デューデリジェンスの導入、関連する取り組みの開示などを義務付ける法整備が広がっている」と説明し、日本政府も昨年10月に企業活動における人権尊重の活動を図ることを目的とした「ビジネスと人権に関する行動計画」を策定したことを挙げ、「この行動計画の周知などを通じて、ビジネスと人権に関する一層の理解の促進と意識の向上による責任ある企業行動の促進を図っていきたい」と述べました。

 

今回のようなサプライチェーン上の人権侵害がもたらすリスクは、その対応によっては、投資の引き揚げや取引停止、ブランドの毀損、不買運動など広範囲におよび、企業・ブランドの存在意義に直結する問題といっても過言ではない旨指摘しましたが、フランスの検察が動いたという事実に照らすと、サプライチェーン上の人権侵害がもたらすリスクはそれにとどまるものではなくなってくるのかもしれません。

 

今回のウイグル族の強制労働問題でも明らかになったように、近年、アパレル業界では、環境負荷、労働環境に対して非常に厳しい目が向けられるようになっています。

 

このような流れの中で、環境負荷や労働環境などのパフォーマンスを数値化する「Higg Index(ヒグ・インデックス)」という指標を活用するアパレル業者が増えています。

 

これは、米サステナブル・アパレル連合(SAC)が提供する評価ツールであり、製品、工場、あるいはブランドによる環境・社会面への影響を、同一の方法で測り。業界全体において環境・社会への影響を比較可能にすることを目的としたものです。

 

具体的な運用について、実際に同指標を採用しているH&Mからは、「対象となる各製品には、その製品を作るために使用された素材の環境への影響に基づいてそれぞれスコアが付けられています。スコアは「標準値」から「レベル3」まであり、「標準値」は従来の素材や、環境への負荷がそれらと同等の素材を使用した製品に付けられる値です。「レベル1」、「レベル2」、「レベル3」は、より環境負荷の低い素材を使用した製品に用られ、従来の素材に比べて最も環境負荷が少ない素材を用いて作られた製品には「レベル3」が付けられます。また、各製品には、水の使用、地球温暖化、化石燃料の使用、水質汚染などへの影響に関する詳細なデータも表示されます。」という説明がされています。

 

また、H&Mからは、同指標の導入について、「より広範な透明性を提供することで、お客様はより多くの情報を得た上で購入判断をしていただくことが可能となります。」と説明されています。

 

こういった指標により、顧客がより簡単に商品の環境負荷に関する情報にアクセスすることでき、透明性を推進するという流れが生まれています。

 

このように、価格やデザインといった従来の価値観とは全く異なる価値観が商品を選ぶ際の基準となることで、サプライチェーン全体を見直す必要が生じる、これも、SDGsやESGに対する社会全体の意識の変化によってもたらされたものであるといえます。

 

当事務所では、これまでSDGsの専門家とともに、商工会議所、地方自治体、国内外の金融機関、企業等において、対象となる企業の規模を問わず、SDGsに関するセミナーを数多く行なってきました。この活動を通じて得た知見を基に、SDGsに関連した幅広いサービスの提供を始めています。

話だけでも聞いてみたい、そう思われた方は、いつでもお気軽にご連絡下さい。

執筆者
三村 雅一
マネージング・パートナー/弁護士

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