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国際法務の部屋

繊維産業のサステナビリティに関する検討会報告書

2021年7月12日、経済産業省が繊維産業のサステナビリティに関する検討会報告書(以下「報告書」といいます)を取りまとめました。繊維業界におけるサステナビリティやSDGsの取組を検討するにあたり有用な指針と考えますので、本稿にてご紹介いたします。

まず、報告書の概要版では、報告書が公表された背景として、下記の点が挙げられています。

  • 現在、⽇本の繊維産業は、⼤きな転換期を迎えている。新型コロナウイルスの感染拡⼤に伴い、アパレル等の売上が⼤きく落ち込むとともに、「新たな⽇常」を踏まえた消費者ニーズの変化に⾒舞われている。
  • こうした中、新しい時代に向けて、今後の繊維産業を展望した時に、「サステナビリティ」が重要な視点として浮かび上がってくる。
  • サステナビリティについては、2015年のSDGs(Sustainable Development Goals︓持続可能な開発⽬標)の採択以降、国内外において、官⺠での取組が活発になっている。
  • ⽇本の繊維産業に⽬を向けると、⼀部の企業においてサステナビリティの取組は徐々に始まっているものの、⻑く複雑と⾔われるサプライチェーンの管理等、取組が⼗分になされているとは⾔い難い状況にある。
  • こうした状況を踏まえ、繊維産業におけるサステナビリティへの取組を促進するため、2021年2⽉に「繊維産業のサステナビリティに関する検討会」を設置。「新しい時代への設計図」を⽰すべく、議論・検討を進めてきた。報告書は、検討会の議論・検討をとりまとめるとともに、今後に向けた政策提⾔を⾏うものである。

 

そして、報告書では、サステナビリティに係る現状と今後の取組として、①環境配慮、②責任あるサプライチェーン管理、③ジェンダー平等、④供給構造、⑤デジタル化の促進について分析されているため、それぞれについて主要な点をピックアップしてご紹介します。

①環境配慮について

今後の取組としては、下記が挙げられています。

  • 環境配慮設計ガイドラインの策定(製品企画の段階から少ない資源で製品づくりを進めていくことの意識づけ等)
  • 回収システムの構築(店頭回収などを通じたリユース・リサイクル促進など、使用済み繊維製品の回収システムの構築)
  • 消費者の意識改革(消費者に対する情報発信の重要性等)

 

②責任あるサプライチェーン管理について

背景として、下記の記載があり、サプライチェーンの管理等が日本企業にとっても喫緊の課題となっていることがわかります。

  • ⽇本企業の中には、欧⽶企業と取引をする際にはサプライチェーンが適正に管理されているか等をチェックするデュー・ディリジェンスの実施が求められるケースが増えているとの声が聞かれる。
  • また、欧⽶を中⼼に繊維製品及びその⽣産⼯程における環境安全、労働、企業統治等への配慮に関する様々な認証が策定・運営されており、こうした国際認証(⺠間認証)の取得が求められる⽇本企業も増えている。
  • 国内の繊維産業においても、素材やサプライチェーン上の労働環境等に対して、各企業が責任をもって把握・対応することが期待される

そして、今後の取組としては、下記の点が挙げられております。最近、新聞等でも人権・デュー・ディリジェンスの重要性について報道される機会が増えてきましたが、繊維産業におけるサプライチェーン管理においても、人権デュー・ディリジェンスが重要であることがわかります。

  • デュー・ディリジェンスの実施(㋐政府は関係業界団体等と連携し、デュー・ディリジェンス実施の必要性等や、デュー・ディリジェンスにおいて、どのような事項が企業リスクとなり得るかについて分かりやすく説明するなどさらなる周知を⾏う、㋑企業がデュー・ディリジェンスを実施し、責任あるサプライチェーン管理を進めることにより、労働者の権利が保障され、⼗分な収⼊を⽣み出し、適切な社会的保護が与えられる⽣産的な仕事(ディーセント・ワーク)へとつながり得るため、業界団体において、企業がよりデュー・ディリジェンスに取り組みやすくするためのガイドライン策定する)
  • 国際認証取得に向けた環境整備(㋐サプライヤーである⽣地メーカー等に対して、国際認証取得の必要性を周知していく、㋑⽇本企業が、国内において国際認証に関してより容易に相談が可能となるよう、国内の監査機関等における⼈材育成や機関同⼠の連携の在り⽅などについて検討する)
  • 外国人技能実習生等への対応

 

③ジェンダー平等について

今後の取組としては、下記が挙げられています。

  • 官民ラウンドテーブル(政府や産業界の代表が⼀堂に会し、ジェンダー平等の重要性を共有・理解するとともに、先進的な取組事例(⼥性幹部候補の育成プログラム等)や企業が構築すべき⼈材育成の仕組み等について議論・共有する場)の設置
  • 繊維産業の将来を担うであろう若い世代に対するロールモデルの提示(ジェンダー教育の実施、ロールモデルの提示、既に活躍している⼥性リーダーが経験談やキャリア形成に係る取組等の事例を紹介する講座の開設等)

 

④供給構造について

今後の取組としては、下記が挙げられています。

  • デジタル技術の活用(購買データの標準化を進める、共有を促進する等の⽅策により、顧客管理や消費動向の把握を進める)
  • 顧客を中心に置いた事業展開の推進(消費者との持続的な関係が築き上げられれば、サイズの把握によりオンライン販売が容易となるほか、正価販売での購⼊率の向上、リペアサービスを含めた購⼊後の関係維持が可能)
  • 生産工程の改革(⽣産期間を短くするという取組、個々の好みや体型等に応じた個別の受注と従来の⽣産システムを IoT 等で連携し、オーダーメイドの⼀点物を⽣産・販売するマスカスタマイゼーションの取組)

 

⑤デジタル化の促進について

背景として、下記の点が挙げられており、サプライチェーンの管理のためにはデジタル化の促進が重要・有効であることがわかります。

  • サステナビリティの取組は、環境への配慮や労働環境整備など多岐にわたるものであり、取組を進めていくためには、多くの情報を集約・管理・分析することが必要となってくる。
  • また、これまで検討してきたサステナビリティの取組は、「サプライチェーンを管理する」という点において共通している。労働環境、使⽤している素材などを含めて、サプライチェーン上のどこでどういったことが起きているかを把握する必要性がある。
  • さらに、オンライン販売の増加や、顧客とのより⻑い関係性を重視する LTV を推進していくためには、消費者との接点の在り⽅を変えていくことが求められている。こうした取組を進めていく上で、デジタル技術による情報管理等は極めて有効である。

そして、今後の取組としては、下記が挙げられています。

  • 経営層への理解促進(デジタル技術の導⼊に当たっては、事業の⼀部に導⼊するよりも、企業全体としての導⼊を求められることが多々ある。そうした判断は、経営層が⾏うきものであり、担当者のみならず経営層にもデジタル技術への理解が必要)
  • 優良事例の横展開(サステナビリティに資するデジタル技術の活⽤優良事例も周知することで、繊維産業内における取組の活発化)
  • 支援施策の周知

まとめ

報告書の「おわりに」の部分には、

  • これまで、繊維産業において⻑く複雑なサプライチェーンを管理することへの取組は、進んでこなかった。しかし、今後、最終製品等に責任を持つことは所与のものとして⾒られるようになり、特にアパレル企業は素材や労働環境、⽣産量など、確実に把握していく必要がある。
  • さらに、そうした取組を進めていくためには、サプライチェーン上における企業の協⼒が必要であり、川上から川下まで、そして⼤企業から中⼩企業まで、取り組んでいくものである

との記載があります。

繊維産業におけるサプライチェーン管理の取組の重要性は高まる一方であり、大企業から中小企業まで企業の規模には関係なく、上記の指針を参考としながらサプライチェーン管理の具体的取り組みが必要と考えます。

弊所では、サプライチェーン管理に関する取り組みを支援させていただくために、取引基本契約書等でサプライチェーンに関する条項の整備、サプライチェーンの人権デュー・ディリジェンスなどSDGs関連サービスを幅広く提供しております。ぜひ、お気兼ねなくお問い合わせください。

文責 河野雄介

 

2021年08月18日 12:41|カテゴリー:

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不動産投資とESG投資、SDGs

先日、不動産関係のある企業様において、弊所の河野弁護士とともに、「不動産投資とESG、SDGs」について講演しました。

 

先日の河野弁護士のブログでも紹介したとおり、令和2年10月16日、関係府省庁連絡会議において、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画が発表されました。日本政府は、この計画の策定を、SDGsの実現に向けた取り組みの一つとして位置づけた上で、同計画の第3章「政府から企業への期待表明」において、

 

政府からは企業に対し、その規模、業種等にかかわらず、

 

①「人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること」

②「サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うこと」

③「日本企業が効果的な苦情処理の仕組みを通じて、問題解決を図ること」

 

を期待する、と表明しています。

 

この①の内容については、先日の河野弁護士のブログで紹介したところであり、②③の参考になる取り組みについては、私の過去のブログにおいて紹介させて頂きました。

 

なお、③の苦情処理・問題解決制度については、これを強化することによって、

・企業不祥事及びレピュテーション上の損害と経済的不利益の発生・拡大の防止

・責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンス、CSR調達、指導原則で言及されている人権デュー・ディリジェンスの効果的な実施

・取引先・投資家を含むステークホルダーからの信頼の確保と経済的利益(ESG投資を含む)の獲得

といったメリットが認められる他方で、企業がステークホルダーからの苦情申立てや問題提起に対し十分に対応できず、その結果、企業価値が毀損する不祥事が生じた場合、取締役が善管注意義務違反を問われることにもなりかねないというリスクがあると言われています。

 

不動産投資とESG投資、SDGsについて、令和元年7月3日に、国土交通省「ESG不動産投資のあり方検討会」が中間とりまとめを発表しました。

同とりまとめにおいては、【ESG投資、SDGsにおける不動産の重要性】について、「我が国において、2600兆円を超えるとされる不動産は、国民生活や経済成長を支える不可欠かつ重要な基盤であり、環境や社会に関する問題解決に貢献できるポテンシャルも大きい。そのため、不動産の開発・運用・投資において、ESG投資やSDGsの考え方を踏まえることは重要である。」と述べられています。

その上で、【不動産へのESG投資の基本的な考え方】として、我が国の不動産市場・不動産投資市場が、世界的に拡がるESG投資に対応するためには、リスク・リターンの二軸のみを踏まえた投資ではなく、社会的なインパクトという第三軸目も意識した投資が実践される必要がある。そして、それにより、不動産投資が不動産取引の短期的な価値上昇期待のみに基づくものではなく、ESGの組み込みにより、資産が中長期的に生み出す価値を踏まえて行われるようになることが望ましい、との内容が記されています。

 

今回のセミナーでは同とりまとめの内容を紹介した上で、同業他社の具体的取り組みを参考にしながら、SDGsの17のゴールについて自社で取り組むことのできる内容についてグループに分かれでディスカッションをして頂きました。

皆様に基本的な知識を知って頂くにとどまらず、自社で具体的にどのような取り組みができるのかについて考えて頂くことで、より自分の問題として考えて頂く機会を持って頂けたと考えております。

 

当S&W国際法律事務所では、SDGsの基本的な知識から、それぞれの業種に合わせた具体的な取り組み、自社における取組の検討などについて社内セミナーも担当させて頂いておりますので、気軽にお問い合わせ下さい。

 

(文責:三村雅一)

2020年11月16日 15:14|カテゴリー:

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SDGsと企業活動③

去る11月26日に、大阪商工会議所において、我が国のSDGsの第一人者である株式会社日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャーの村上芽氏、当事務所の河野弁護士と私の3名で、「自社の強みを強化するSDGsの上手な活用法セミナー」を行いました。

SDGsの内容については、先日のブログ(SDGsと企業活動①SDGsと企業活動②)で紹介してきました。

今回のセミナーでは、SDGsは、一般的には、企業にとっての新たな負担と捉えられがちですが、上手に取り組むことによって、新たなビジネスチャンスを獲得できる可能性が広がるものであるということをお話しました。また、法務面からはどのようにSDGsに対応すればよいのか、すなわち海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への取り組みについてお話をしました。

当日は、約100名の方にご出席頂き、企業においてSDGsへの関心が高まっているということを実感しました。

さて、今回のブログでは、SDGs実現のために参考となる日本の企業の取り組み事例を紹介します。外務省のHPを見て頂くと、多くの企業が素晴らしい取り組みをされていることが分かります。今回は、不二製油グループ本社株式会社の「グリーバンスメカニズム」の構築・運用についてご紹介します。

不二製油グループにとっては、パーム油が基幹原料の1つとなっています。しかし、パームに関する社会的課題として、農園開発に起因する環境問題、児童労働・強制労働などの人権問題という2つの課題が認められました。

そこで、不二製油グループは、パーム油の持続可能な調達を目指すことは社会的責任であると考え、2016年3月に「責任あるパーム油調達方針」を策定しました。同方針では、人々と地球環境を尊重するサプライヤーから責任ある方法で生産されたパーム油を調達することを約束し、パーム油サプライチェーンにおいて、①No Deforestation(保護価値の高い森林、炭素貯蔵量の多い森林及び泥炭湿地林における森林破壊ゼロ)、②No Peat land development(泥炭地における新規開発ゼロ)、③No Exploitation(先住民、地域住民、労働者の搾取ゼロ)を目指すことを約束しています。

持続可能な調達を実現するためには、自社だけではなく、「サプライチェーン」でとらえる必要があるという点が非常に重要です。

上記約束を実現するために設けられた1つのシステムが、今回紹介する「グリーバンスメカニズム」です。

「グリーバンス(grievance)」とは、「(不当と考えられることに対する正式な)抗議、苦情」を意味します。

それでは、グリーバンスメカニズムとは何かについて説明します。

2011年に国際連合人権理事会にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、「ビジネスに関連した人権侵害から保護する義務として、国家は、その領域及び/または管轄内において侵害が生じた場合に、司法、行政、立法またはその他のしかるべき手段を通じて、影響を受ける人々が実効的な救済にアクセスできるように、適切な措置を取らなければならない。」と定めています。そして、このような救済を利用するための手続が、「グリーバンスメカニズム(Grievance Mechanism)」と呼ばれます。これには国家による手続、国家以外による手続、また司法的な手続、司法的でない手続も含まれるとされています。

不二製油においては、「責任あるパーム油調達方針」を実現する目的で、2018年5月にグリーバンスメカニズムが構築・公表されました。このメカニズムは、ステークホルダーから不二製油グループに提起されたサプライチェーン上の環境・人権問題について、「責任あるパーム油調達方針」に基づいて直接サプライヤーとのエンゲージメントを行い問題の改善を促す仕組みとなっています。

不二製油では、透明性をもってグリーバンスに対応することを目的として、ウェブサイトに「不二製油グループグリーバンスメカニズムウェブページ」を設置し、少なくとも四半期に1回進捗状況を更新し、ステークホルダーに対する情報開示に努めています。

同ページでは、メール、電話、FAX、手紙でのグリーバンスを受け付けており、グリーバンスには、氏名、機関名、住所、コンタクト方法、グリーバンスの詳細、グリーバンスを裏付ける証拠を含むよう記載されています。

また、グリーバンスリスト(進捗状況一覧表)が公開されており、実際に寄せられたグリーバンスの内容、同グリーバンスへの不二製油の対応状況が記載された一覧表が閲覧できるようになっています。

中には、「A社における森林破壊、人権問題への対応要請」というグリーバンスに対し、間接的なサプライチェーン上のつながりがあることを確認し、同社に改善が見られなかったことから、サプライヤーに対し同社との取引停止を要請し、2018年9月以降の取引停止に至ったという事例もあったとのことです。

「人々と地球環境を尊重するサプライヤーから責任ある方法で生産されたパーム油を調達する」という約束を実現するために、自社だけでチェックを行うのではなく、言わば全世界からの監視を要求し、グリーバンスを受け付け、寄せられたグリーバンスに適切に対応する、さらに寄せられたグリーバンスの内容や対応を全て公開する。自社にとって都合の悪い事実は隠蔽されることが多いというイメージがある中で、このような取り組みは非常に革新的であり、これからの時代の企業経営に求められているものなのではないでしょうか。

 

(文責:三村 雅一)

2019年12月16日 14:47|カテゴリー:

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SDGsと企業活動②

1 前回のブログ(SDGsと企業活動①)で、SDGsとは、持続可能な世界を実現するための17の目標(Goals)であり、2030年に向けて、全世界が持続可能な発展を遂げるために達成すべき共通の国際目標であることを紹介しました。

そして、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる、そういった時代の中で、SDGsは、企業経営にとって指針になりうる国際的な共通言語として重要な意味を持つことを紹介しました。

 

2 既に、現代社会においては、規模の大小を問わず、成長を目指す企業はSDGsを無視した経営を行うことはできなくなっているといっても過言ではありません。現代社会におけるSDGsのプレゼンスについてさらに紹介したいと思います。

 

①ESG投資の加速

企業経営において、ESG=環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への配慮が求められるようになったことは前回のブログでも紹介しましたが、投資の世界においても、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資であるESG投資が加速しています。

この動きは日本でも同様であり、2017年には、日本の国民年金約160兆円を運用する世界最大の機関投資家GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、その運用資金の一部でESG投資を始めました。

世界持続的投資連合(GSIA)によると、世界のESG投資の2018年の投資額は3317兆円(約31兆ドル)に達し、2016年比で34%増加しています。また、日本のESG投資額について見ると、2018年の日本のESG投資額は2兆ドルと、2016年の4.6倍に膨らんでいます。このような動きに照らすと、日本のESG投資は今後さらに加速することが予測されます。

そして、前記GPIFは、投資家によるESG投資と投資先企業のSDGsへの取り組みは表裏の関係にあるという認識を明らかにしており、ESGとSDGsを関連付けて説明しています。

したがって、仮に企業がSDGsへの対応を誤れば、株主・従業員・顧客・地域社会等の各ステークホルダーからの信頼が損なわれ、社会的信頼を失い、企業価値は損なわれ、ESG投資を受ける機会も喪失することにもなり得るという大きなリスクを負うことになります。

②サプライチェーンにおけるSDGs

外務省のHPには、様々な企業のSDGsへの取組事例が紹介されています。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/case/org1.html

各社の取り組みを見る中で、各企業が、SDGsを達成するためには、自社のみならず、上流、下流においても、SDGsを達成するための動きを取る必要があることを認識していることが分かります。

繰り返し述べる通り、SDGsとは、「全世界が持続可能な発展を遂げるため」に達成すべき共通目標である以上、サプライチェーンにおける1社がSDGs達成のための取り組みをしたことによって、下流にしわ寄せがいく、そういったことがあってはならないのです。自社と取引関係にある全ての企業にSDGsを要求する、そういった時代がやってくるでしょう。

 

③政府による「SDGs未来都市」の選定

政府により、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する都市が「SDGs未来都市」として選定されました。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/2019sdgs_pdf/sdgsfuturecitypress0701.pdf

このように、我々市民が生活を送る自治体においても、SDGsの達成に向けた「持続可能なまちづくり」が行われていることが分かります。

 

④東京五輪・パラリンピック、大阪万博とSDGs

東京オリンピック・パラリンピックの調達・運営のルールでもSDGsが基準として明確に打ち出されており、政府も東京オリンピックのことを、「SDGs五輪」とうたっています。

https://tokyo2020.org/jp/games/sustainability/

また、大阪招致が決まった2025年万博は、ホームページにおいて、「大阪・関西万博は、2015年9月に国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」において、 持続可能な開発目標として17の目標を掲げたSDGsが達成された社会をめざす為に開催いたします。」と明言し、SDGsの実現を開催目的として明言しています。(https://www.expo2025.or.jp/attract/purpose/

 

このように、現代社会におけるSDGsのプレゼンスは非常に高まっており、規模の大小を問わず、成長を目指す企業はSDGsを無視した経営を行うことはできなくなっていることがお分かり頂けたのではないでしょうか。

次回は、企業等におけるSDGs関連リスク、ESG関連リスクへの対応の在り方について説明をしたいと思います。

以上

 

(文責:三村雅一)

 

2019年10月16日 10:54|カテゴリー:

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SDGsと企業活動①

1 SDGsとは

皆さんは、SDGsという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

言葉を耳にしたことはなくても、カラフルなロゴやバッジを目にしたことはあるのではないでしょうか。

今回は、SDGsとは何か?を説明すると共に、企業とSDGsの関係についての概要を説明します。

まず、SDGs(エスディージーズ)とは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の頭文字を取った略称です。

SDGsは、持続可能な世界を実現するための17の目標(Goals)です。17個のゴールがあることから、Goals=Gsとされています。この17の目標については、2015年9月25日の第70回国連総会で採択された、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。

すなわち、SDGsとは、2030年に向けて、全世界が持続可能な発展を遂げるために達成すべき共通の国際目標といえます。

(日本語仮訳版:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

また、SDGsには、上記17の目標のもと、169のターゲットを置いています。この169のターゲットは、SDGsの17の目標を達成するために具体的に実現すべき内容を示したものであり、SDGsの具体目標とも呼ばれています。

ここで、「持続可能な開発」とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」のことを言うとされています。経済的に発展すること、物やサービスを中心とした暮らしが豊かになることは必要だけれど、それは「持続可能」なものではなければならないということです。

 

2 SDGsと企業

「持続可能な開発」というテーマについては、SDGsにおいて初めて議論されたわけではなく、以前から繰り返し議論され、目標設定されてきたものでした。

それでは、SDGsとこれまでの目標との大きな違いは何でしょうか。

それは、これまでの目標は、国やNGOが主体になるものが多く、民間の一人ひとりが当事者意識を持ちにくいということがあったところ、SDGsは、民間企業による取り組みを求めた点が大きな違いであると言われています。

このように、SDGsは企業経営においても決して避けて通ることはできない目標となっています。

すなわち、時代の変化に伴い、2000年代初め頃から、企業は、社会に対して責任を負う存在であるとして、ESG=環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への配慮を企業に対し求めるさまざまな関係者の動きが世界的に強まるようになりました。そして、この動きは、投資の判断においても広がり、投資判断にESGの要素を考慮するESG投資は、2006年に国連責任投資原則(PRI)が提唱し、グローバルでは年金基金などの大手機関投資家によって採用されるようになりました。

このように、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる、そういった時代が訪れるようになりました。

SDGsは、こういった時代の中で、企業経営にとって指針になりうる国際的な共通言語として重要な意味を持つと言われています。

これからの企業経営においては、社会・環境への要請の更なる高まり、ICTの進化、企業のグローバル展開に伴って生じる、海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への対応など、内外の激しい変化の中で革新的な対応が求められるようになっていきます。その対応指針として、SDGsは大きな意味を持つことから、企業に携わる方々、そして企業法務に携わる我々弁護士も、SDGsの内容をしっかりと理解しておかなければなりません。

次回は、SDGsが現在の日本でどのように位置づけられているのか、企業がSDGsにどのように取り組んでいるのか、その具体例について紹介します。

 

以上

(文責:三村 雅一)

2019年10月16日 10:53|カテゴリー:

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