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国際法務の部屋

SDGsと企業活動③

去る11月26日に、大阪商工会議所において、我が国のSDGsの第一人者である株式会社日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャーの村上芽氏、当事務所の河野弁護士と私の3名で、「自社の強みを強化するSDGsの上手な活用法セミナー」を行いました。

SDGsの内容については、先日のブログ(SDGsと企業活動①SDGsと企業活動②)で紹介してきました。

今回のセミナーでは、SDGsは、一般的には、企業にとっての新たな負担と捉えられがちですが、上手に取り組むことによって、新たなビジネスチャンスを獲得できる可能性が広がるものであるということをお話しました。また、法務面からはどのようにSDGsに対応すればよいのか、すなわち海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への取り組みについてお話をしました。

当日は、約100名の方にご出席頂き、企業においてSDGsへの関心が高まっているということを実感しました。

さて、今回のブログでは、SDGs実現のために参考となる日本の企業の取り組み事例を紹介します。外務省のHPを見て頂くと、多くの企業が素晴らしい取り組みをされていることが分かります。今回は、不二製油グループ本社株式会社の「グリーバンスメカニズム」の構築・運用についてご紹介します。

不二製油グループにとっては、パーム油が基幹原料の1つとなっています。しかし、パームに関する社会的課題として、農園開発に起因する環境問題、児童労働・強制労働などの人権問題という2つの課題が認められました。

そこで、不二製油グループは、パーム油の持続可能な調達を目指すことは社会的責任であると考え、2016年3月に「責任あるパーム油調達方針」を策定しました。同方針では、人々と地球環境を尊重するサプライヤーから責任ある方法で生産されたパーム油を調達することを約束し、パーム油サプライチェーンにおいて、①No Deforestation(保護価値の高い森林、炭素貯蔵量の多い森林及び泥炭湿地林における森林破壊ゼロ)、②No Peat land development(泥炭地における新規開発ゼロ)、③No Exploitation(先住民、地域住民、労働者の搾取ゼロ)を目指すことを約束しています。

持続可能な調達を実現するためには、自社だけではなく、「サプライチェーン」でとらえる必要があるという点が非常に重要です。

上記約束を実現するために設けられた1つのシステムが、今回紹介する「グリーバンスメカニズム」です。

「グリーバンス(grievance)」とは、「(不当と考えられることに対する正式な)抗議、苦情」を意味します。

それでは、グリーバンスメカニズムとは何かについて説明します。

2011年に国際連合人権理事会にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、「ビジネスに関連した人権侵害から保護する義務として、国家は、その領域及び/または管轄内において侵害が生じた場合に、司法、行政、立法またはその他のしかるべき手段を通じて、影響を受ける人々が実効的な救済にアクセスできるように、適切な措置を取らなければならない。」と定めています。そして、このような救済を利用するための手続が、「グリーバンスメカニズム(Grievance Mechanism)」と呼ばれます。これには国家による手続、国家以外による手続、また司法的な手続、司法的でない手続も含まれるとされています。

不二製油においては、「責任あるパーム油調達方針」を実現する目的で、2018年5月にグリーバンスメカニズムが構築・公表されました。このメカニズムは、ステークホルダーから不二製油グループに提起されたサプライチェーン上の環境・人権問題について、「責任あるパーム油調達方針」に基づいて直接サプライヤーとのエンゲージメントを行い問題の改善を促す仕組みとなっています。

不二製油では、透明性をもってグリーバンスに対応することを目的として、ウェブサイトに「不二製油グループグリーバンスメカニズムウェブページ」を設置し、少なくとも四半期に1回進捗状況を更新し、ステークホルダーに対する情報開示に努めています。

同ページでは、メール、電話、FAX、手紙でのグリーバンスを受け付けており、グリーバンスには、氏名、機関名、住所、コンタクト方法、グリーバンスの詳細、グリーバンスを裏付ける証拠を含むよう記載されています。

また、グリーバンスリスト(進捗状況一覧表)が公開されており、実際に寄せられたグリーバンスの内容、同グリーバンスへの不二製油の対応状況が記載された一覧表が閲覧できるようになっています。

中には、「A社における森林破壊、人権問題への対応要請」というグリーバンスに対し、間接的なサプライチェーン上のつながりがあることを確認し、同社に改善が見られなかったことから、サプライヤーに対し同社との取引停止を要請し、2018年9月以降の取引停止に至ったという事例もあったとのことです。

「人々と地球環境を尊重するサプライヤーから責任ある方法で生産されたパーム油を調達する」という約束を実現するために、自社だけでチェックを行うのではなく、言わば全世界からの監視を要求し、グリーバンスを受け付け、寄せられたグリーバンスに適切に対応する、さらに寄せられたグリーバンスの内容や対応を全て公開する。自社にとって都合の悪い事実は隠蔽されることが多いというイメージがある中で、このような取り組みは非常に革新的であり、これからの時代の企業経営に求められているものなのではないでしょうか。

 

(文責:三村 雅一)

2019年12月16日 14:47|カテゴリー:

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SDGsと企業活動②

1 前回のブログ(SDGsと企業活動①)で、SDGsとは、持続可能な世界を実現するための17の目標(Goals)であり、2030年に向けて、全世界が持続可能な発展を遂げるために達成すべき共通の国際目標であることを紹介しました。

そして、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる、そういった時代の中で、SDGsは、企業経営にとって指針になりうる国際的な共通言語として重要な意味を持つことを紹介しました。

 

2 既に、現代社会においては、規模の大小を問わず、成長を目指す企業はSDGsを無視した経営を行うことはできなくなっているといっても過言ではありません。現代社会におけるSDGsのプレゼンスについてさらに紹介したいと思います。

 

①ESG投資の加速

企業経営において、ESG=環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への配慮が求められるようになったことは前回のブログでも紹介しましたが、投資の世界においても、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資であるESG投資が加速しています。

この動きは日本でも同様であり、2017年には、日本の国民年金約160兆円を運用する世界最大の機関投資家GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、その運用資金の一部でESG投資を始めました。

世界持続的投資連合(GSIA)によると、世界のESG投資の2018年の投資額は3317兆円(約31兆ドル)に達し、2016年比で34%増加しています。また、日本のESG投資額について見ると、2018年の日本のESG投資額は2兆ドルと、2016年の4.6倍に膨らんでいます。このような動きに照らすと、日本のESG投資は今後さらに加速することが予測されます。

そして、前記GPIFは、投資家によるESG投資と投資先企業のSDGsへの取り組みは表裏の関係にあるという認識を明らかにしており、ESGとSDGsを関連付けて説明しています。

したがって、仮に企業がSDGsへの対応を誤れば、株主・従業員・顧客・地域社会等の各ステークホルダーからの信頼が損なわれ、社会的信頼を失い、企業価値は損なわれ、ESG投資を受ける機会も喪失することにもなり得るという大きなリスクを負うことになります。

②サプライチェーンにおけるSDGs

外務省のHPには、様々な企業のSDGsへの取組事例が紹介されています。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/case/org1.html

各社の取り組みを見る中で、各企業が、SDGsを達成するためには、自社のみならず、上流、下流においても、SDGsを達成するための動きを取る必要があることを認識していることが分かります。

繰り返し述べる通り、SDGsとは、「全世界が持続可能な発展を遂げるため」に達成すべき共通目標である以上、サプライチェーンにおける1社がSDGs達成のための取り組みをしたことによって、下流にしわ寄せがいく、そういったことがあってはならないのです。自社と取引関係にある全ての企業にSDGsを要求する、そういった時代がやってくるでしょう。

 

③政府による「SDGs未来都市」の選定

政府により、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する都市が「SDGs未来都市」として選定されました。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/2019sdgs_pdf/sdgsfuturecitypress0701.pdf

このように、我々市民が生活を送る自治体においても、SDGsの達成に向けた「持続可能なまちづくり」が行われていることが分かります。

 

④東京五輪・パラリンピック、大阪万博とSDGs

東京オリンピック・パラリンピックの調達・運営のルールでもSDGsが基準として明確に打ち出されており、政府も東京オリンピックのことを、「SDGs五輪」とうたっています。

https://tokyo2020.org/jp/games/sustainability/

また、大阪招致が決まった2025年万博は、ホームページにおいて、「大阪・関西万博は、2015年9月に国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」において、 持続可能な開発目標として17の目標を掲げたSDGsが達成された社会をめざす為に開催いたします。」と明言し、SDGsの実現を開催目的として明言しています。(https://www.expo2025.or.jp/attract/purpose/

 

このように、現代社会におけるSDGsのプレゼンスは非常に高まっており、規模の大小を問わず、成長を目指す企業はSDGsを無視した経営を行うことはできなくなっていることがお分かり頂けたのではないでしょうか。

次回は、企業等におけるSDGs関連リスク、ESG関連リスクへの対応の在り方について説明をしたいと思います。

以上

 

(文責:三村雅一)

 

2019年10月16日 10:54|カテゴリー:

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SDGs、弁護士、法律

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SDGsと企業活動①

1 SDGsとは

皆さんは、SDGsという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

言葉を耳にしたことはなくても、カラフルなロゴやバッジを目にしたことはあるのではないでしょうか。

今回は、SDGsとは何か?を説明すると共に、企業とSDGsの関係についての概要を説明します。

まず、SDGs(エスディージーズ)とは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の頭文字を取った略称です。

SDGsは、持続可能な世界を実現するための17の目標(Goals)です。17個のゴールがあることから、Goals=Gsとされています。この17の目標については、2015年9月25日の第70回国連総会で採択された、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。

すなわち、SDGsとは、2030年に向けて、全世界が持続可能な発展を遂げるために達成すべき共通の国際目標といえます。

(日本語仮訳版:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

また、SDGsには、上記17の目標のもと、169のターゲットを置いています。この169のターゲットは、SDGsの17の目標を達成するために具体的に実現すべき内容を示したものであり、SDGsの具体目標とも呼ばれています。

ここで、「持続可能な開発」とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」のことを言うとされています。経済的に発展すること、物やサービスを中心とした暮らしが豊かになることは必要だけれど、それは「持続可能」なものではなければならないということです。

 

2 SDGsと企業

「持続可能な開発」というテーマについては、SDGsにおいて初めて議論されたわけではなく、以前から繰り返し議論され、目標設定されてきたものでした。

それでは、SDGsとこれまでの目標との大きな違いは何でしょうか。

それは、これまでの目標は、国やNGOが主体になるものが多く、民間の一人ひとりが当事者意識を持ちにくいということがあったところ、SDGsは、民間企業による取り組みを求めた点が大きな違いであると言われています。

このように、SDGsは企業経営においても決して避けて通ることはできない目標となっています。

すなわち、時代の変化に伴い、2000年代初め頃から、企業は、社会に対して責任を負う存在であるとして、ESG=環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への配慮を企業に対し求めるさまざまな関係者の動きが世界的に強まるようになりました。そして、この動きは、投資の判断においても広がり、投資判断にESGの要素を考慮するESG投資は、2006年に国連責任投資原則(PRI)が提唱し、グローバルでは年金基金などの大手機関投資家によって採用されるようになりました。

このように、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる、そういった時代が訪れるようになりました。

SDGsは、こういった時代の中で、企業経営にとって指針になりうる国際的な共通言語として重要な意味を持つと言われています。

これからの企業経営においては、社会・環境への要請の更なる高まり、ICTの進化、企業のグローバル展開に伴って生じる、海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への対応など、内外の激しい変化の中で革新的な対応が求められるようになっていきます。その対応指針として、SDGsは大きな意味を持つことから、企業に携わる方々、そして企業法務に携わる我々弁護士も、SDGsの内容をしっかりと理解しておかなければなりません。

次回は、SDGsが現在の日本でどのように位置づけられているのか、企業がSDGsにどのように取り組んでいるのか、その具体例について紹介します。

 

以上

(文責:三村 雅一)

2019年10月16日 10:53|カテゴリー:

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SDGs、弁護士、法律

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