ベンチャー法務の部屋

民事訴訟法上の真実擬制が認められた事例

2011年3月1日号の金融・商事判例No.1360の17頁には、貸金業者から取引履歴が破棄されているため開示されない場合において債務者の主張する当該期間の取引について民事訴訟法第224条第2項及び第3項に定める真実擬制が認められるか否かが争われた裁判例が掲載されています。


貸金業者からお金を借りた個人が、取引履歴により立証しようとした主張について、真実と認めることができるかを検討するに、「民事訴訟法224条3項は、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができると規定しているのであって、相当の合理性があると認めることのできる主張であればともかく、いかなる主張であっても真実と認めなければならないものではない。」とした上で、当該案件については、原告の主張する推計値をもって一つのあり得る合理的な推測といえるのであって、相応の合理性を認めることができる・・・当裁判所は、原判決別紙1記載のとおりの取引が存在したものと真実擬制を認めるものである。
(平成22年12月15日東京高等裁判所第11民事部判決)


この真実擬制が適用されたケースがどの程度あるのか、調査できていませんが、応用範囲は広いものと考えます。

もちろん、この規定に頼って、訴訟を進めるのはリスクがあると考えますが、証拠収集上の困難がある事件については、頭の片隅においておくべき規定ではないでしょうか。

参考
民事訴訟法
(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
第224条
第1項  当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
第2項  当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
第3項  前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

執筆者
S&W国際法律事務所

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