ベンチャー法務の部屋

会社法改正の動向と株価算定事件についてのメモ

2010.11.19

昨日の会社法実務研究会に出席させていただき、最近の会社法改正の動向について大変有意義な議論を聞かせていただきました。議論の多くは、社外取締役導入義務化論でした。私は、その背景をよく理解しておりませんでしたが、取締役会も監査役・監査役会も、代表取締役としての監査機能が不十分であると(特に外国人投資家に)認識されているらしく、特に代表取締役解任権のない監査役・監査役会に監査機能を期待するのは無理なので、会社法の機関設計のあり方を検討しようという動機(監査役に代表取締役解任権を与えるのは余りにも制度趣旨に反するので、社外取締役にそれを担わせようという発想)があるように思われました。

私には、なぜソフトローでは難しいのか(上場企業を念頭においた制度変更であれば会社法をいじらなくてもよいのではないか)、これまでの監査役会設置会社の体制では(社外取締役がいないというだけで)それほどコーポレートガバナンスが不十分なのか、なぜ「社外取締役1名又は数名」導入の議論なのか(なぜ過半数でなくてもよいのか、オブザーバーの出席ではだめなのか)、委員会設置会社との距離感、社外取締役が果たすべき善管注意義務の内容等、まだまだよく理解できていないことが沢山あります。私の中では、意見の集約ができておらず、結論が出せていない論点であり、これからも勉強させていただきたいところです。

ところで、昨日の会社法実務研究会では、「吸収合併,吸収分割における株主の株式買取請求権と「公正な価格」について」という題で、裁判例の報告もございました。個人的には、会社法の株式買取請求権と裁判所における株価算定事件については、議論したいことが山のようにあり、それはいつかまとめてみたいと思っていますが、今回は、その一部をメモ書きにするのにとどめたいと思います。

・公正な価格の基準とする日は、本当に常に効力発生日でよいのか。上場と非上場で区別しなくてよいのか、株主総会があるケースとないケースは同じでよいのか。(a)公正な価格の基準とすべき日の議論と、(b)公正な価格を算定する際に、シナジー・毀損考慮価格を算出することになるが、上場企業のシナジー・毀損考慮価格の算出方法として効力発生日時点の株価を利用するのが適切であるという議論とを混在させていないか。

・公正な価格は、基本的にはなかりせば価格とシナジー・毀損考慮価格の高い方でよいと思われるものの(そもそも買取請求者自身も、その動機(合併自体に反対なのかor対価に反対なのか)に区別を付けられないことが多いはずなので、合併反対→なかりせば価格、対価に反対→シナジー・毀損考慮価格という動機による区別は難しい)、シナジー・毀損考慮価格は、裁判所が決定に至る過程で、会社の合併等についてシナジーが生じるのか、毀損が生じるのかを判断しなければならず、取引市場がある場合は市場の判断にゆだねるとしても、取引市場がない場合は、どうするのか(実務的には第三者の公認会計士の判断に依拠することになることが多いであろうが、その公認会計士も何を根拠にシナジー等を判断するのかという問題を抱える(経営者は間違いなくシナジーがあると述べる)のは同じであろう)。

・非上場会社の株価算定方法で、取引事例価格方式が軽視されすぎではないか。裁判所は、“直近の取引はたまたま1回の取引でその価格がついただけ”という価値判断があるように思われるが、プロ投資家同士の株式譲渡や、プロ投資家と経営陣の間に十分な交渉があった後の新株発行がある場合は、取引事例価格方式が合理的ケースもあるといえるのではないか。

・非上場会社の株価算定で純資産法を重視する傾向が未だに強いように思われるが、清算が想定し得ないケースでは純資産法に合理性はないのではないか。

他にも、株式交換完全子会社の反対株主による株式買取請求権とその親会社の登記実務等も検討対象として興味のあるところですが、また時間のあるときに検討したいと思います。今回は、かなり法律実務家的なマニアックな話でした。お付き合いいただき、ありがとうございます。

執筆者
S&W国際法律事務所

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