ベンチャー法務の部屋

法制審議会「会社法制部会」への企業側からの意見

昨年(平成22年)の会社法制部会の審議事項について、先月(2月)28日に、経済同友会から意見が出されていますので、紹介します。

法制審議会「会社法制部会」への意見

会社法制部会の内容については、こちらをご覧下さい。第4回から第6回あたりまでが、今回の経済同友会の意見の対象となっているトピックが議題となっています。

過去の関連記事は、「会社法改正の動向と株価算定事件についてのメモ」「昨今の会社法制に関する話題」等ですので、こちらも参考にしてください。

 企業経営者の立場で望むのは、経済関連の法制が結果として個々の企業が活性化、国際競争力を向上させ、ひいては日本経済全体の成長に貢献することである。過度な規制で、結果的に企業活動が萎縮するようなことがあってはならない。

 こうした観点からすると、現在、法制審議会「会社法制部会」(以下「部会」)で検討されている項目は、本当に今現在、法改正まですべき切迫した事情(いわゆる立法事実)があるのか、疑問に感じるものが多い。もし今回の会社法見直しの発端に、「会社法で規制緩和が行き過ぎ、企業の規律が失われ、不祥事や違法・脱法行為が増えた」といった認識があるのであれば、それは企業実務の実感とは明らかに異なるものである。金融商品取引法(以下「金商法」)や証券取引所規則はじめ、会社法以外で新たなルールが次々と設けられ、全体としては、企業に対する規律はむしろ増えているように感じる。ごく一部の違法・脱法行為者の事例を一般化して規制を強化しても、確信犯的に法の間隙を縫ってくる者を完全に防 ぐことは不可能であるし、また規制強化の結果、非常に煩雑な手続きを企業全体に課すことになれば、適正なガバナンスを構築し、法令を遵守している大多数の企業の負担増となり、むしろ、日本経済が全体として国際競争力を失う可能性が大である。

 また、部会では、諸外国にある制度を導入しようという志向も強いように見受けられる。しかしながら、一方で各国の会社法制は、その他の経済関連法制や税制、司法制度、更には雇用慣行、会社帰属意識その他の社会・文化的背景の下で設計され、機能しているものでもある。もちろん、経済のグローバル化が進む中、国際的ルールとの不整合により、日本企業が国際競争上不利となる事態は避けなければならないが、法律の一部分だけを単独で日本に移入しても、必ずしも意図通りに機能する保証はなく、それどころか弊害さえ招きかねない点もまた認識すべきである。

(公益社団法人経済同友会 平成22年2月28日「法制審議会「会社法制部会」への意見」1頁より)

経済同友会は、規制の対象となる会社の集団ですので、規制強化に反対という立場を採ることは容易に想像できますが、それを差し引いたとしても、真剣に耳を傾けるべき意見が少なくないように思います。特に、「特に株式市場で広く投資家から資金を集める上場企業では、社外取締役を少なくとも1名導入すべきであるし、さらには複数名導入することが望ましい。但し、社外取締役を、上場大企業から中小企業・個人企業までカバーする「会社法」で強制すべきかどうかは別次元の問題である。」(2頁)といった意見や、「何より、日本の産業構造転換と国際競争力強化、資本市場のダイナミズム向上の為には、特に大企業はスピンオフ(企業発ベンチャー)を推進し、国もこうした流れを支援すべきものである。だが、 日本では、従業員の会社への帰属意識の強さもあり、一挙に 100%全て外に出す訳にいかないことも多く、 まず 51%とか60%保有で上場し、投資家の信頼を得つつ、徐々に独立色を高めて、やがて完全分離することが現実的である。こうした流れのステップとして、親子上場は不可欠な選択肢である。」(6頁)といった意見は、現場の声として有用と考えます。

このような現場の意見を踏まえつつ、より議論が充実したものとなることを願っております。

執筆者
S&W国際法律事務所

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