ベンチャー法務の部屋

古物営業の許可について(2)

2018.06.15

前回のブログでは、古物営業法が、盗品売買の防止等を図ることを目的とした法律であり、古物営業法はこの目的を達成するために、古物営業を許可制として、種々の規制を加えていることについてお伝えしました。さらに、古物営業法に定められた「古物」とは?「古物営業」とは?ということについても紹介しました。

 

今回は、リサイクルショップ、フリーマーケット、バザー、メルカリ等のフリマアプリと古物営業法の関係について紹介します。

 

第1 リサイクルショップと古物営業法

まず、一般的なリサイクルショップは、買い取った古物を販売するという形態をとるため、「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業」(古物営業法第2条第2項第1号)の「古物営業」に該当することになり、古物営業法の適用を受けることになります。

 

もっとも、無償、または引取り料を徴収して引き取った古物を修理、再生等して販売する形態のリサイクルショップの場合には、(古物の買取りを行わず)「古物を売却することのみを行うもの」(古物営業法第2条第2項第1号)に該当することから、古物営業には当たらず、古物営業法の適用を受けません。

 

第2 フリーマーケット・バザーと古物営業法

バザーやフリーマーケットについては、前回の記事でも解説したとおり、その取引されている古物の価額や、開催の頻度、古物の買受の代価の多寡やその収益の使用目的等を総合的に判断し、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる場合には、古物営業に該当するとされています。(平成7年9月11日警察庁丁生企発104号「古物営業関係法令の解釈基準等について」4頁参照。)

 

もっとも、一体どの程度の取引を行えば、「営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる」のかが問題となります。

 

この点については、平成18年1月31日付経済産業省「特定商取引法の通達の改正について」で、インターネットオークションにおいて、特定商取引法の「販売業者」に該当すると考えられる場合として紹介されている内容が参考になると考えられます。

 

対象となるカテゴリー、商品によって基準は異なりますが、「全てのカテゴリー・商品」について、例えば、以下の場合には特別の事情がある場合を除き、営利の意思を持って反復継続して取引を行う者として販売業者に該当すると考えられるとされています。

①過去1ヶ月に200点以上又は一時点において100点以上の商品を新規出品している場合、②落札額の合計が過去1ヶ月に100万円以上である場合、③落札額の合計が過去1年間に1,000万円以上である場合。

 

なお、平成28年9月14日付のニュースで、「嵐」のコンサートチケットを転売したとして、25歳の女性が古物営業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕されるという事件が起こりました。チケット転売がなぜ古物営業法違反になるのか、この疑問は、正に上で述べてきた内容が回答となります。すなわち、この女性は、2015年11月から12月の間に、3名に対しコンサートチケット5枚を計4回、インターネットの転売サイトで売っていました。それだけではなく、女性はチケット交換サイトでコンサートチケットを入手した後、転売サイトに出品して高値で販売するという手口で、2014年10月から2018年4月までの間に168名に対してチケット299枚を販売し、約1000万円の売り上げを得た疑いがあり、これが、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められたものと考えられます。

 

このように、チケットの転売であっても、その具体的態様に照らし、「古物営業」として、古物営業法の規制の対象となることがあります。

 

 

第3 フリマアプリ、フリマサイトと古物営業法

インターネット上のフリーマーケットアプリやフリーマーケットサイトは、インターネット上において、個人間で直接に物を売買する場を提供するものであり、また、その方法が競りによるものではないため、インターネット上のフリーマーケットアプリやフリーマーケットサイトの運営業者は古物営業法に規定された古物競りあっせん業者には該当せず、法規制の対象外となっています。

 

もっとも、フリマアプリ等で出品をする場合には、第2で紹介した「インターネットオークションにおいて、特定商取引法の「販売業者」に該当すると考えられる場合」を参考にする必要があり、「営利目的で反復継続して古物の取引を行っている」と認められた場合には、古物営業法の許可が必要となることにご注意ください。

 

この点、古物営業法規制の対象外となっているとはいえ、現在のメルカリ等のフリマアプリにおいては、「盗品売買の防止」等の観点から、利用者には厳格な本人確認を要求するなど、古物営業法の趣旨を踏まえた自主ルールを作成し取り組みを強化しています。

 

なお、個人間の売買を目的としたメルカリではなく、中古品の買取と再販売を想定している「メルカリNOW」については、「古物営業」(古物営業法第2条第2項第1号)に該当することから、古物営業の許可が取得されています。

 

このように、その取引が「古物営業」(古物営業法第2条第2項)に該当するか否かの判断は容易でないため、弁護士等の専門家への相談をおすすめします。

 

次回が古物営業法に関する最終回となります。次回は、「古物営業の在り方に関する有識者会議」ではどのようなことが議論され、古物営業法がどのような方向に向かおうとしているのかについても紹介する予定です。

 

(文責:三村雅一)

執筆者
S&W国際法律事務所

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