ベンチャー法務の部屋

スタートアップとの事業連携に関する指針

スタートアップ・ベンチャー企業と大企業が、ファイナンスではなく共同開発等の契約形態で関係性を有する事象が徐々に増加しています。このことは、イノベーションの促進等の観点から、非常に望ましく、歓迎されるべきことです。
他方において、企業文化の違いや、事実上の力関係の影響等により、公平性の観点から問題があると評価せざるを得ない契約が締結されるケースが存在することも否定できません。この点に関する実態調査の結果として、公正取引委員会は、2020年11月27日、「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」を公表しました。

この報告書に関しては、当事務所の森理俊弁護士が、投資契約書における株式買取請求権の定め方にクローズアップして記事を書いていますので、是非とも、ご一読ください。

上記の報告書では、秘密保持契約(NDA)、技術検証(PoC)契約、共同研究契約、及び、ライセンス契約に関して、問題となる事例が紹介されていました。
これを受けて、公正取引委員会は、これらの問題を改善し、ひいては、「企業連携によるイノベーションを成功」させるため、2021年3月29日、「スタートアップとの事業連携に関する指針」(以下「本指針」といいます。)を公表しました。

本指針では、主に、秘密保持契約(NDA)、技術検証(PoC)契約、共同研究契約、及び、ライセンス契約について、類型ごとに、具体的な問題事例を紹介し、問題の背景及び解決の方向性について記載されています。
例えば、NDAに関しては、「NDAを締結しないままにスタートアップが営業秘密の開示を要請される」といった問題事例を紹介し、同事例が独占禁止法で禁止する優越的地位の濫用に該当し得ることを指摘したうえで、解決の方向性として、スタートアップ内部における重要情報の整理、及び、秘密保持リテラシー向上のための施策紹介等が示されています(ここでは、一部のみを、ごく簡単に紹介するにとどめますが、できれば、本ブログで、それぞれの類型について紹介したいと思っています。)。

本指針は、秘密保持契約(NDA)、技術検証(PoC)契約、共同研究契約、及び、ライセンス契約の各類型について紹介した後に、「その他(契約全体等)に係る問題について」として、スタートアップが顧客情報の提供を要請されてしまう場合や、支払いを遅延されてしまう場合等についても言及されており、大変、充実した内容となっていますので、ご興味のある方は、是非とも、ご一読ください。

執筆者
藤井 宣行
マネージング・パートナー/弁護士

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